条文・判例・学説を体系的に整理
地方公共団体の課税権と法律の準則
普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており、法律で準則が定められた場合には、普通地方公共団体の課税権は、これに従ってその範囲内で行使されなければならない。
平成25年3月21日最高裁第一小法廷民集67巻3号438頁(神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件)
地方自治の本旨と制度的保障
地方自治の本質について、地方公共団体固有の前国家的な基本権を保障したものではなく、地方自治という歴史的・伝統的な制度を保障したものと解する立場に立っても、憲法92条の「地方自治の本旨」には法的意味がある。
地方自治の二層構造と三層構造
憲法は都道府県と市町村という二層構造の地方公共団体を憲法上保障しておらず、地方公共団体の在り方は立法政策に委ねられるとする立場に立つと、現行の都道府県より更に大きな単位の地方公共団体を設け三層構造とすることも許容されることとなる。
地方公共団体の課税権と条例による賦課
判例によれば、普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているが、課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義(84条)の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており、法律で準則が定められた場合には、課税権はその範囲内で行使されなければならない。
平成25年3月21日最高裁第一小法廷民集67巻3号438頁(神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件)
条例による規制と法律の趣旨
判例は、ある事項について国の法令中に明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、規定の欠如が当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、当該事項について条例で規制することが法令違反になり得るとしている。
昭和50年9月10日最高裁大法廷刑集29巻8号489頁(集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反)
条例制定権の範囲と法律との関係
地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定する権能を有するが(憲法94条)、条例と法律の抵触の有無は、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較して判断される。
昭和50年9月10日最高裁大法廷刑集29巻8号489頁(集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反)
地方公共団体の沿革実態基準への批判
最高裁昭和38年判決のように沿革上及び行政上の実態を基準に憲法上の地方公共団体に当たるか否かを判断する手法に対しては、憲法の下位規範である地方自治法の定める制度内容によって憲法の解釈を行うことになるとの批判がある。
地方自治の制度的保障
地方自治の制度的保障論は、地方自治が憲法によって制度として保障されており、法律をもってしてもその核心的内容を侵害することはできないとする。
憲法の地方自治保障の趣旨と固有権説
最高裁昭和38年3月27日大法廷判決は、憲法が地方自治を保障する趣旨を、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務をその地方の住民の手でその住民の団体が主体となって処理する政治形態の保障に求めており、地方公共団体が国家に先立つ固有の前国家的な基本権を有するという立場(固有権説)を示してはいない。
昭和38年3月27日最高裁大法廷刑集17巻2号121頁(収賄)
憲法上の地方公共団体の要件
最高裁昭和38年判決は、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み共同体意識をもっているという社会的基盤の存在を憲法上の地方公共団体の要件として挙げたが、この「共同体意識」という基準に対しては漠然として不明確であるとの批判がある。
昭和38年3月27日最高裁大法廷刑集17巻2号121頁(収賄)
条例制定権
地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができ、住民に義務を課し又はその権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
条例による罰則制定の許容性
判例は、条例が公選の議員で組織される地方議会の議決を経て制定される自治立法であって法律に類するものであることから、条例で罰則を定めるには法律の授権が相当な程度に具体的であり限定されていれば足りるとしており、一般的・包括的な委任で足りるとはしていない。
昭和37年5月30日最高裁大法廷刑集16巻5号577頁(大阪市条例第六八号違反)
地方公共団体の課税権の憲法上の根拠
判例は、地方公共団体が地方自治の不可欠の要素として課税権の主体となることが憲法上予定されており、その財源を自ら調達する権能を有するとしている。
平成25年3月21日最高裁第一小法廷民集67巻3号438頁(神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件)
地方自治の本旨
憲法92条は地方公共団体の組織及び運営に関する事項が地方自治の本旨に基づいて法律で定められるべきことを規定し、地方自治の本旨は団体自治と住民自治の二つの要素からなる。
憲法上の地方公共団体の要件
ある地域団体が憲法93条2項の「地方公共団体」に該当するには、法律で地方公共団体として取り扱われているだけでは足りず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にも現実の行政の上でも、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とする。
昭和38年3月27日最高裁大法廷刑集17巻2号121頁(収賄)
地方公共団体の条例制定権
憲法94条は地方公共団体に法律の範囲内で条例を制定する権能を認めており、条例制定権は憲法上の権能として地方自治の本旨に基づき保障されている。
条例による財産権規制
憲法29条2項が財産権の内容を法律で定めるとしていることから個別的委任のない条例による規制はできないとする見解と、地方的な特殊事情があれば法律の委任がなくても条例によって財産権を規制できるとする見解は、条例による規制に法律の個別的委任を要するか否かで結論を異にするから、両立しない。
昭和38年6月26日最高裁大法廷刑集17巻5号521頁(ため池の保全に関する条例違反)
地方公共団体の課税権
憲法94条の「行政の執行」に租税の賦課・徴収が含まれ憲法は抽象的には地方公共団体の課税権を承認しているとする見解と、地方自治法223条が地方公共団体は「法律の定めるところ」により地方税を賦課徴収できると定めているのは地方公共団体独自の課税権を承認する趣旨であるとする見解は、両立する。
平成25年3月21日最高裁第一小法廷民集67巻3号438頁(神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件)
地方自治の本旨と自治体の統廃合
「地方自治の本旨」が、国の全域が法律で定める地方公共団体の区域に区分されその公共事務が住民の参与によって処理される体制を意味するとすれば、市町村だけを地方公共団体としたり都道府県を統廃合したりすることは「地方自治の本旨」に反しない。
制度的保障と都道府県制度
地方自治の制度的保障は、地方自治制度の核心的部分を国の法律をもってしても侵すことができないことを意味するが、制度の現状がそのまま保障されるわけではなく、都道府県を廃止して道州を導入することが直ちに憲法92条に反するものではない。