条文・判例・学説を体系的に整理
酒類販売業免許制の職業規制の合憲性
最判平成4年12月15日は、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため、その憲法22条1項適合性を一律に論ずることはできず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならないとした。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷民集46巻9号2829頁(酒類販売業免許拒否処分取消)
酒類販売業免許制存置の必要性・合理性
最判平成4年12月15日は、酒類販売業の免許制は、酒税の国税全体に占める割合が高かった時代に酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図る目的で採用されたものであり、その後の社会状況の変化と租税法体系の変遷に伴い、酒税の国税全体に占める割合等が相対的に低下するに至った処分当時においてもなお免許制度を存置しておくことの必要性及び合理性については議論の余地があることは否定できないとしつつ、立法府の判断が著しく不合理であるとまでは断定し難いとした。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷民集46巻9号2829頁(酒類販売業免許拒否処分取消)
酒類販売の財政目的規制と園部補足意見
財政目的による職業の規制は警察的・消極的規制とも社会政策・経済政策的な積極的規制とも異なり、許可制が既存業者の権益保護のために利用されるときは立法目的を逸脱して違憲となるとの見解は、最判平成4年12月15日の園部逸夫裁判官の補足意見に示されたものである。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷民集46巻9号2829頁(酒類販売業免許拒否処分取消)
酒類販売業免許制と坂上反対意見
酒類製造者を免許制の下に置くことは必要かつ合理的な措置といえるが、酒類販売業までを免許制にしなければならない理由は強くないとの見解は、最判平成4年12月15日の坂上壽夫裁判官の反対意見に示されたものである。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷民集46巻9号2829頁(酒類販売業免許拒否処分取消)
職業規制の合憲性判断と立法裁量の尊重
職業の自由に対する規制措置が憲法上是認されるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、制限される職業の自由の性質・内容・制限の程度を検討し比較考量して慎重に決定されなければならず、それは第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所は、規制の目的が公共の福祉に合致すると認められる以上、立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り、その判断を尊重すべきである。
昭和50年4月30日最高裁大法廷民集29巻4号572頁(行政処分取消請求)
職業規制の目的二分論
薬事法距離制限違憲判決は、消極的・警察的目的の許可制につき重要な公共の利益のための必要かつ合理的な措置であること等を要するとし、小売市場距離制限合憲判決は、積極的な社会経済政策の規制につき立法府が裁量権を逸脱し著しく不合理であることが明白な場合に限り違憲とするとしており、規制の目的に応じて審査の厳格さを区別する枠組み(規制目的二分論)が示されたと理解されている。
薬局距離制限と消極目的規制
判例は、職業の許可制は職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定するには原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共にもたらす弊害を防止するための消極的・警察的措置である場合には、より緩やかな職業活動の内容及び態様に対する規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められることも要するとし、この基準により薬局の開設許可の適正配置規制(距離制限)を違憲とした。
昭和50年4月30日最高裁大法廷(薬事法距離制限事件)
積極目的規制と社会権保障
個人の経済活動の自由に対する積極目的の規制については、勤労権等の社会権保障のために適切な保護政策を行うことが憲法上の要請とされることがその根拠の一つに挙げられる。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号586頁(小売市場距離制限事件)
酒類販売免許制と財政目的規制
酒税法の酒類販売業免許制について、判例は租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための規制であり、職業の許可制としての合理性を認めて合憲と判断した。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷(酒類販売業免許制事件)
小売市場距離制限と積極目的規制
小売市場の開設許可に際し距離制限を課す規制について、判例は中小企業保護という積極目的のための規制として、立法府の裁量的判断を尊重し明白性の原則を適用して合憲と判断した。
昭和47年11月22日最高裁大法廷(小売市場事件)
職業選択の自由の保障
憲法22条1項は何人も公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有すると定め、職業選択の自由のみならず職業遂行の自由も保障する。
農業災害補償法の合憲性審査基準
農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みの合憲性は、当該仕組みが著しく不合理であることが明白であるか否かという緩やかな基準によって判断される。
平成17年4月26日最高裁第三小法廷集民216号661頁(農業共済組合当然加入制事件)
職業許可制と積極目的規制の審査基準
職業の許可制は狭義の職業選択の自由に対する強力な制限であるが、社会政策ないし経済政策上の積極的な目的のための措置については、著しく不合理であることが明白でない限り合憲とされる。
昭和50年4月30日最高裁大法廷民集29巻4号572頁(行政処分取消請求)
農業共済組合当然加入制と審査基準
最判平成17年4月26日は、農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然加入させる仕組み(当然加入制)について、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置であり、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難いとして、憲法22条1項に違反しないとした。
平成17年4月26日最高裁第三小法廷集民216号661頁(農業共済組合当然加入制事件)
小売市場距離制限事件と営業の自由の根拠
最大判昭和47年11月22日(小売市場距離制限事件)は、憲法22条1項が保障する職業選択の自由には広く一般にいわゆる営業の自由を保障する趣旨が包含されているとして営業の自由の根拠を同項に求めたものであり、財産権を保障する憲法29条1項を併せて根拠としたものではない。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号586頁(小売市場距離制限事件)
薬事法判決と許可制の合憲性審査
最大判昭和50年4月30日(薬事法距離制限違憲判決)は、職業の許可制について、社会政策ないし経済政策上の積極的な目的のための措置であっても、より緩やかな規制では目的を十分に達成できないことを要するとは述べていない。
昭和50年4月30日最高裁大法廷民集29巻4号572頁(行政処分取消請求)
職業自由規制の目的二分論の審査枠組み
職業の自由に対する規制の合憲性審査については、積極目的規制に妥当する明白性の基準は小売市場距離制限事件判決が、消極目的規制に妥当する厳格な合理性の基準は薬事法距離制限違憲判決が示したものであり、両判決を通じて規制目的二分論と呼ばれる枠組みが説かれている。
昭和50年4月30日最高裁大法廷民集29巻4号572頁(行政処分取消請求)
営業の自由と独占禁止法の関係
営業の自由を市場における私的な独占からの自由と捉える見解によれば、事業者に対し一定の取引分野での競争を不当に制限する行為を禁止する立法は、自由を制限するものではなく自由を促進する立法と位置付けられる。
営業の自由の保障根拠の複数説
営業の自由の保障根拠について、憲法22条1項のみに求める見解と、開業・廃業の自由は22条1項、営業活動の自由は29条に求める見解があるが、後者が前者より広い保障範囲を持つとは限らない。
薬事法距離制限違憲判決と営業の自由
薬事法の薬局開設の距離制限は、職業選択の自由に対する消極目的規制であるが、同目的を達成するためのより緩やかな手段が存在するため、必要かつ合理的な措置と認められず、違憲である。
昭和50年4月30日最高裁大法廷民集29巻4号572頁(行政処分取消請求)