条文・判例・学説を体系的に整理
時効完成猶予の再訴の訴えの利益
確定判決で認められた権利について、時効の完成猶予(中断)のために、再度同一の給付の訴えを提起することは、時効の完成が迫り裁判上の請求以外に完成猶予の方法がないときは、訴えの利益が認められる。
給付訴訟の可能性と所有権確認の利益
建物収去土地明渡請求の訴えを提起することができる場合であっても、その請求の前提となる土地の所有権について争いがあるときは、所有権の確認を求める訴えにも、紛争の抜本的な解決に有効適切である限り、確認の利益が認められる。
将来給付の訴えの請求権の適格
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り提起することができる(135条)が、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない請求権に基づく将来給付の訴えは、あらかじめその請求をする必要があるときであっても、不適法である。
平成28年12月8日最高裁第一小法廷集民254号35頁(損害賠償等請求事件)
継続的不法行為の将来賠償の訴え
継続的不法行為に基づく将来発生すべき損害賠償を請求する将来給付の訴えが、常に不適法となるわけではなく、将来の損害賠償請求権としての適格の有無は個別に判断される。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
共有物の超過収益の将来不当利得請求
共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき、その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち、事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない。
平成24年12月21日最高裁第二小法廷集民242号117頁(所有権移転登記手続,持分移転登記抹消登記手続等,持分権確認等請求事件)
本来給付の執行不能可能性と代償請求
本来の給付請求に併せて、その執行不能の場合における履行に代わる損害賠償を請求する将来給付の訴えは、本来の給付請求の強制執行が不能となることがあり得ない場合には、あらかじめその請求をする必要がなく、不適法である。
昭和63年10月21日最高裁第二小法廷集民155号55頁(株券引渡等請求事件)
証書真否確認の対象不適法と請求の認諾
原告が被告に対し証書真否確認の訴えを提起した場合において、確認の対象となる文書が法律関係を証する書面に該当しないときは、被告が口頭弁論の期日において原告の請求を認諾する旨の陳述をし、それが調書に記載されたとしても、当該認諾は無効であり、これにより当該訴訟は終了しない。
遺産確認の訴えの確認の利益
共同相続人間における遺産確認の訴えは、特定の財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求めるものと解される場合には、確認の利益が認められる。
昭和61年3月13日最高裁第一小法廷民集40巻2号389頁(遺産確認)
遺言者生存中の遺言無効確認の訴え
遺言者生存中に遺言の無効確認を求める訴えは、たとえ遺言者が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、当該遺言の撤回又は変更の可能性が事実上ない状態であっても、確認の利益を欠く。
平成11年6月11日最高裁第二小法廷集民193号369頁(遺言無効確認請求事件)
相続人の地位不存在確認の訴え
共同相続人間において、共同相続人の一人についての相続欠格事由の存否を争う場合に、その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、確認の利益を有する。
平成16年7月6日最高裁第三小法廷民集58巻5号1319頁(相続権不存在確認請求事件)
証書真否確認の訴えの利益
法律関係を証する書面の記載内容の真実性に争いがある場合には、その記載内容が真実であることの確認を求める訴えについては、訴えの利益が認められない。
昭和27年11月20日最高裁第一小法廷民集6巻10号1004頁(書面の真否確認請求)
仮差押え後の給付訴訟と訴えの利益
債権的請求権に基づく給付の訴えについては、その債権に対して仮差押えの執行がされた場合であっても、訴えの利益が認められる。
昭和48年3月13日最高裁第三小法廷民集27巻2号344頁
強制執行しない旨の合意と訴えの利益
給付の訴えについては、その給付に係る請求権について強制執行をしない旨の合意がある場合であっても、訴えの利益が認められる。
平成5年11月11日最高裁第一小法廷民集47巻9号5255頁(貸金等)
重複訴訟の禁止
重複する訴えが提起された場合、被告が異議を述べないで本案について弁論をしたときであっても、当該訴えは適法とはならない。
確認の利益と給付訴訟
所有権に基づき返還を請求することができるときでも、所有権を確認する訴えの利益が認められる場合がある。
昭和30年12月26日最高裁第三小法廷民集9巻14号2082頁(売買無効確認並びに所有権取得登記抹消手続請求)
具体的相続分の確認の利益
共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益が欠ける。
平成12年2月24日最高裁第一小法廷民集54巻2号523頁(具体的相続分確認請求事件)
将来給付の訴えの利益
自らの所有する土地を継続的に不法に占有されている者が将来の賃料に相当する額の損害の賠償を求める訴えには、訴えの利益が認められる。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
反訴としての確認請求の利益
原告の所有権の確認を求める本訴に対し、反訴として提起された被告の所有権の確認を求める訴えには、訴えの利益が認められる。
債務不存在確認と給付反訴
債務不存在の確認を求める本訴に対し、当該債務の履行を求める給付の反訴が提起されたときは、本訴の訴えの利益は失われる。
平成16年3月25日最高裁第一小法廷民集58巻3号753頁(保険金請求,債務不存在確認請求本訴,同反訴事件)
不起訴合意の効力
紛争を特定しないで一切起訴しない旨の合意は、無効である。