条文・判例・学説を体系的に整理
任意の協力による自動車検問の適法性
警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることなどに照らし、警察官が、交通取締りの一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無に関わりなく短時間の停止を求め、運転者などに必要な事項について質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。
昭和55年9月22日最高裁第三小法廷刑集34巻5号272頁(道路交通法違反)
行政調査の立入検査と犯罪捜査目的
公衆浴場法に「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」旨の規定がなくても、同法6条1項の立入検査の権限は行政目的のためのものであり、犯罪捜査のために用いることは許されない。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
課税上の不利益と報告拒否の可否
憲法38条1項の保障は、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する行政手続には及び得るが、売上げの報告により課税面で不利益を受ける可能性があるにとどまる場合は、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項の供述強要に当たらず、同項に基づいて報告を拒否することはできない(最大判昭47.11.22)。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
犯則調査資料の課税処分への利用
国税犯則取締法に基づく犯則調査によって収集された資料を、課税庁がその犯則嫌疑者に対する課税処分及び青色申告承認の取消処分のために利用することは許され、違法ではない(最判昭63.3.31)。
昭和63年3月31日最高裁第一小法廷集民153号643頁(法人税更正処分取消等請求事件)
間接国税犯則事件の無令状調査
国税通則法135条1項は、間接国税に関する犯則事件について、現に犯則を行い又は現に犯則を行い終わった者がある場合に、証拠の集取のため必要かつ急速を要し許可状の交付を受けることができないときは、犯則の現場において許可状なしに臨検・捜索・差押えをすることを認めているが、これは憲法35条に違反しない。
昭和30年4月27日最高裁大法廷刑集9巻5号924頁(酒税法違反幇助)
職務質問に附随する所持品検査の限界
職務質問に附随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得てその限度で行うのが原則であるが、承諾がない限り一切許容されないのではなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り許容される場合がある。
昭和53年6月20日最高裁第三小法廷刑集32巻4号670頁(爆発物取締罰則違反、殺人未遂、強盗)
所得税の質問検査権と黙秘権
国税通則法74条の2第1項による所得税に関する調査のための質問・検査は、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料の収集を目的とする手続であって刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、過少申告や逋脱の発覚につながる可能性があっても、憲法38条1項に反しない。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
即時強制の意義と具体例
即時強制とは、行政上の目的を達成するために国民の身体又は財産に対して加えられる行政主体による実力行使であり、消火活動のための土地の使用、感染症の病原体に汚染された場所の交通制限・遮断、警察官が現行犯逮捕をする際の武器の使用等がその例として挙げられる。
即時強制と直接強制の区別
直接強制は相手方への義務の賦課が先行しその不履行を前提として実力行使されるのに対し、即時強制は相手方への義務の賦課を前置することなく直接に身体又は財産に実力を加えて行政目的を達成する手段であり、義務の賦課が先行することのない点に特徴がある。
鉄道施設からの退去強制と即時強制
公務員である鉄道公安職員が鉄道施設に立ち入り座り込むなどした労働組合員を実力で退去させた事案において、最高裁大法廷判決の多数意見は、鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客等を退去させるに当たっては、自発的な退去に応じない場合又は危険が切迫する等やむを得ない事情が認められる場合には、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとして、退去強制行為の適法性を肯定した。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻3号418頁(住居侵入、公務執行妨害)
条例による即時強制
行政代執行法は、地方公共団体が条例に基づき即時強制を行うことを禁止する明文の規定を置いていない。
即時強制と法律の根拠
行政庁が行政処分により私人に義務を課すことができる旨が法律に定められていても、即時強制を行うことができる旨が法律に定められていなければ、行政庁が行政処分を経ずに当該義務の内容を実現する即時強制を行うことは認められない。
即時強制と比例原則
行政上の即時強制は、義務を命ずる暇のない緊急事態において行われるものであっても、いわゆる警察比例の原則(比例原則)の適用を受ける。
行政代執行法と即時強制
行政代執行法は行政上の義務の履行確保に関する規定であり別に法律で定めるものを除いては同法の定めるところによるとしているが条例に即時強制の手法を定めることは許される。
代執行における抵抗排除規定
代執行に現場で抵抗する場合に行政庁が抵抗を排除するために執り得る措置を定める規定は行政代執行法に置かれていない。
直接強制の法律の根拠
行政上の直接強制は、義務者の身体又は財産に直接実力を加えるものであるから、個別の法律の根拠を必要とする。
継続的性質を有する即時強制と審査請求
即時強制として行われた継続的性質を有する公権力の行使に当たる事実行為は、行政不服審査法上の「処分」に含まれ、その違法を争うために、行政不服審査法による救済手続によることができる。
即時強制の定義
行政上の即時強制は、義務の不履行を前提とせず、目前急迫の障害を除く必要上、直接、国民の身体又は財産に実力を加える作用である。
公衆浴場の立入検査と令状の要否
公衆浴場法6条1項の立入検査は、裁判官の発する令状なしに行うことができ、営業者は令状の提示がないことを理由に立入りを拒否することはできない。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
公衆浴場の立入検査と実力行使の限界
公衆浴場法6条1項の立入検査は、9条の罰則により間接的に受忍が強制されるにとどまり、相手方が立入りを拒否した場合に、職員が実力を行使して排除し立入りを実現することはできない(実力行使を認める規定がない)。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)