条文・判例・学説を体系的に整理
憲法20条2項と3項の関係
憲法20条2項は何人も宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されないことを定め、同条3項は国及びその機関が宗教的活動をすることを禁止しており、両者はその目的、趣旨、対象、範囲を異にし、2項の宗教上の行為等は必ずしも全てが3項の宗教的活動に含まれるという関係にはなく、3項の宗教的活動に含まれないとされる宗教上の祝典、儀式、行事等であっても、国家がこれに参加を強制すれば2項に違反する。
精神的自由の制約に対する審査基準
精神的自由の制約については、経済的自由の制約と比較して厳格な審査基準が適用され、立法者に広い裁量が認められるわけではない。
公立図書館と著作者の権利
公立図書館は住民に対して思想、意見その他の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場であるが、図書の著作者が公立図書館に対して表現の自由に基づき自らの著作物を購入し閲覧に供するよう求める権利までは認められない。
平成17年7月14日最高裁第一小法廷民集59巻6号1569頁(損害賠償請求事件)
ビラ配布のための住居侵入と表現の自由
ビラの配布のために集合住宅の共用部分及び敷地内に管理権者の承諾なく立ち入る行為について、たとえビラの内容が政治的意見を記載したものであっても、当該立入り行為を刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反しない。
平成20年4月11日最高裁第二小法廷刑集62巻5号1217頁(住居侵入被告事件)
反論権と訂正放送・名誉回復処分
放送法の訂正放送の制度や民法723条の名誉回復処分の規定は、反論権について直接規定したものではなく、裁判において反論権を認める実定法上の根拠とすることはできない。
昭和62年4月24日最高裁第二小法廷民集41巻3号490頁(反論文掲載)
剣道実技拒否の代替措置不検討と退学処分
信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対し、履修拒否の理由が信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであり、代替措置が不可能というわけでもないのに代替措置について何ら検討することもなく、学校長が原級留置処分及び退学処分をしたことは、社会観念上著しく妥当を欠く処分であって、裁量権の範囲を超える違法なものである。
平成8年3月8日最高裁第二小法廷民集50巻3号469頁(進級拒否処分取消、退学命令処分等取消)
空知太神社事件と総合判断
最大判平成22年1月20日(空知太神社事件)は、国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては、当該宗教的施設の性格、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきとした。
平成22年1月20日最高裁大法廷民集64巻1号1頁(財産管理を怠る事実の違法確認請求事件)
富平神社事件と違憲状態の是正
最大判平成22年1月20日(富平神社事件)は、市が神社施設の敷地となっていた市有地を町内会に無償で譲与した行為について、憲法89条及び20条1項後段の趣旨に適合しないおそれのある状態を是正し、解消するために行ったものであり、神社施設を撤去させることを図るとすれば地域住民の信教の自由に重大な不利益を及ぼすことなども踏まえ、是正・解消の手段として相当性を欠くということもできないとして、憲法20条3項、89条に違反しないとした。
平成22年1月20日最高裁大法廷民集64巻1号128頁(富平神社事件)
憲法20条3項の宗教的活動の禁止
憲法20条3項は国及びその機関が宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないと定め、政教分離原則の具体的規定の一つである。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
憲法89条の公金支出の禁止
憲法89条は公金その他の公の財産を宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のために支出しまたはその利用に供してはならないと定める。
平成22年1月20日最高裁大法廷民集64巻1号1頁(財産管理を怠る事実の違法確認請求事件)
自衛官合祀拒否事件と宗教的人格権
神社において死者の合祀を行うことが遺族である配偶者の心の静謐を害する場合であっても、宗教的人格権は法的利益として直ちに保護されるものではなく、損害賠償を請求することはできない。
昭和63年6月1日最高裁大法廷民集42巻5号277頁(自衛隊らによる合祀手続の取消等請求事件)
加持祈祷事件と信教の自由の限界
僧侶が病者の平癒を祈願して加持祈祷を行うに当たり病者の手足を縛って線香の火に当てるなどして同人を死亡させることは、医療上一般に承認された治療行為とは到底認められず、信教の自由の保障の限界を逸脱したものであって許されない。
昭和38年5月15日最高裁大法廷刑集17巻4号302頁(傷害致死)
宗教法人解散命令の合憲性
宗教法人への解散命令は信者の宗教活動自体を法的に禁止するものではないが、その継続に事実上の支障を生じさせ得るため、信教の自由への間接的制約として必要性・合理性が審査される。
平成8年1月30日最高裁第一小法廷民集50巻1号199頁(宗教法人解散命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告)
憲法20条と信教の自由の保障
憲法20条1項は信教の自由を何人に対しても保障し、同条2項は何人も宗教上の行為等への参加を強制されない旨を定める。
居住・移転の自由と精神的自由
居住・移転の自由の保障は、広く知的な接触の機会を得るためにも不可欠であり、精神的自由の要素も併せ持っている。
宴のあと事件判決の判断基準
宴のあと事件判決は、プライバシー権は私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利であるとし、公開を欲するか否かについては一般人の感受性を基準にして判断するとした。
昭和39年9月28日東京地裁下民集15巻9号2317頁(損害賠償等請求)
講演会参加者名簿のプライバシー保護
大学が講演会を主催する際に集めた参加学生の学籍番号・氏名・住所及び電話番号は、個人識別のための単純な情報であって秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではないが、自己が欲しない他者にみだりに開示されたくないという本人の期待は保護されるべきであるから、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。
平成15年9月12日最高裁第二小法廷民集57巻8号973頁(損害賠償等請求事件)
京都府学連事件判決と肖像権
何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が正当な理由なく個人の容ぼう等を撮影することは憲法13条の趣旨に反し許されないが、かかる自由も無制限に保護されるわけではなく、犯罪捜査に必要な撮影をすることは許容される場合がある。
昭和44年12月24日最高裁大法廷刑集23巻12号1625頁(公務執行妨害、傷害)
大嘗祭参列と政教分離
天皇の即位に伴う皇室の儀式である大嘗祭に県知事が参列し拝礼した行為は、宗教とかかわり合いを持つものであるが、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する社会的儀礼を尽くすことを目的とするものであり、その効果も特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等にはならないから、そのかかわり合いの程度が相当とされる限度を超えるものとは認められず、政教分離規定(憲法20条1項・3項)に違反しない。
平成14年7月11日最高裁第一小法廷民集56巻6号1204頁(住民訴訟請求事件)
地蔵像と政教分離
町会は宗教的活動を目的とする団体ではなく、町会が地蔵像の維持管理を行う行為も宗教的色彩の希薄な伝統的習俗行事にとどまるから、市が地蔵像建立のために市有地を町会に無償で使用させた行為は、その目的及び効果にかんがみ、政教分離規定に違反しない。
平成4年11月16日最高裁第一小法廷集民166号625頁(大阪地蔵像違憲)