条文・判例・学説を体系的に整理
人権の直接適用説と私的自治尊重の批判
基本的人権に関する憲法の規定が私人間の関係にも直接適用されると解する見解(直接適用説)に対しては、市民社会の原則である私的自治が最大限に尊重されなければならないとの批判が当てはまる。
人権の国家同視説と国家・社会二分論
私人の行為が高度に公的な機能を有している場合に、当該行為を国家の行為と同視して憲法の人権規定を直接適用する見解(国家同視説)に対し、国家と社会を分離する自由主義的国家論を採ることは当然視されるべきではないとの指摘は、その見解への批判とはならない。
人権の無適用説と近代憲法観
基本的人権に関する憲法の規定は私人間の関係には適用されず国家と国民との関係にのみ適用されるとする見解(無適用説)に対し、近代憲法が前提としてきた憲法観や人権観は修正されるべきではないとの指摘は、その見解への批判とはならず、その根拠にあたる。
直接適用説と私的自治の調整
憲法の人権規定が私人間にも直接適用されるとする説のうち、私的自治の原則により人権の効力が本質的な核心を侵されない限度で相対化されることを認める見解は、間接適用説に類似した帰結をもたらす。
間接適用説と私法の解釈
私人間の関係に憲法の基本権保障規定をそのまま適用ないし類推適用することはできず、私的支配関係において個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害の態様、程度が社会的に許容し得る限度を超えるときは、民法1条、90条等の私法の一般条項の適切な運用によって調整が図られる。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
三菱樹脂事件と間接適用説
最高裁は三菱樹脂事件において、憲法14条・19条の規定は、同法第3章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないとして、私人間への直接適用を否定した。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
事実上の支配関係論への批判
判例は社会的力関係の相違から一方が他方に優越し事実上後者が前者の意思に服従せざるを得ない場合にも、その支配力の態様・程度・規模等において様々であり、国又は公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であるとしている。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
憲法28条の私人間効力
憲法28条の労働基本権の保障は、国の立法・行政に対する効果にとどまらず、使用者と労働者という私人間の法律関係にも一定の効果を及ぼすと解されている。
直接効力説の問題点
直接効力説は、私人間に憲法規範を直接適用するものであるが、国家が私人の自由な活動領域に過度に介入する糸口を与えかねない。