条文・判例・学説を体系的に整理
住居侵入罪の住居の意義
住居侵入罪における住居というには、法律上正当な権限に基づいて居住する必要はなく、日常生活に使用していれば足りる。
建造物侵入罪の看守の意義
人の看守する建造物というには、施錠等の物的設備がなくても、人が事実上管理支配していれば足りる。
建造物侵入罪の建造物の意義
建造物とは、土地に定着し、屋根があって、壁又は柱により支持され、その内部に人の出入りができる構造のものをいう。
大正3年6月20日大審院刑録20巻1300頁(建造物損壊、住居侵入、器物毀棄、暴行)
住居侵入等罪の侵入の意義
侵入とは、管理権者の意思に反して立ち入ることをいい、建造物等の平穏を害することは要件ではない。
昭和58年4月8日最高裁第二小法廷刑集37巻3号215頁(建造物侵入被告事件(大槌郵便局事件))
名誉毀損罪と侮辱罪の保護法益
名誉毀損罪及び侮辱罪の保護法益はいずれも人の外部的名誉であり、法人も侮辱罪の客体になり得る。
昭和58年11月1日最高裁第一小法廷刑集37巻9号1341頁(侮辱、軽犯罪法違反)
名誉毀損の風評内容の真実性証明
風評の形式を用いて人の社会的評価を低下させる事実が摘示された場合、真実性の証明の対象は風評が存在することではなく、風評の内容たる事実が存在することである。
昭和43年1月18日最高裁第一小法廷刑集22巻1号7頁(名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使)
公共の利害に関する事実の判断
刑法230条の2第1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断され、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、その判断を左右しない。
昭和56年4月16日最高裁第一小法廷刑集35巻3号84頁(名誉毀損)
占有離脱物と不法領得の意思
置き忘れられた物を警察に届け出る目的で持ち出した場合、不法領得の意思がないため窃盗罪も占有離脱物横領罪も成立しない。
恐喝と預金の占有
恐喝により暗証番号を聞き出してキャッシュカードで現金を引き出した場合、暗証番号を聞き出しただけでは預金の占有を取得したことにならず、ATMからの引出しについて銀行に対する窃盗罪が成立する。
暴行と財物取得の因果関係
正当防衛による暴行で相手が失神した後にその機会を利用して財物を取得しても、暴行と財物取得の間に強盗罪としての因果関係がなく強盗罪は成立しない。
一時流用と横領
預かった買付資金を確実に補填するあてがないまま自己の用途に費消した場合、後日たまたま補填できたとしても横領罪が成立する。
昭和26年5月25日最高裁第二小法廷刑集5巻6号1186頁(横領)
盗品等の意義と賄賂
賄賂として収受された現金は、財産に対する罪に当たる行為によって領得された物に当たらない。
即時取得と盗品性
窃取された物品を買い受けた者が即時取得の要件を充たす場合でも、当該物品は盗品等に当たる余地がある。
窃取物のコピーと盗品性
窃取した秘密資料のコピーは、盗品等に当たらない。
親族相盗例と盗品性
親族間の犯罪に関する特例により刑が免除される犯人が窃取した物品も、盗品等に当たる。
単純遺棄の作為限定と保護責任者の遺棄
刑法217条の遺棄は作為に限られるが、同法218条の遺棄は作為と不作為を含むと解する見解に対しては、「遺棄」という同一の文言の解釈が隣接する条文で異なることになるとの批判がある。
遺棄の不作為包含説と作為義務の区別
刑法217条と218条の遺棄がいずれも作為・不作為による場合を意味すると解する見解に対しては、不作為による遺棄の処罰に必要となる作為義務と同法218条の保護責任の区別が困難になるとの批判がある。
遺棄の作為限定説と不保護罪の問題点
刑法217条と218条の遺棄はいずれも作為による場合に限られ、不作為による場合は不保護罪になると解する見解は、「遺棄」という同一の文言を同義に解する点では批判を免れるが、不保護で処罰される範囲が広がり、従来の不保護の概念とかけ離れすぎるという問題がある。
泥酔者と保護責任者遺棄罪の病者
高度の酩酊により身体の自由を失い他人の扶助を要する状態にあったと認められる泥酔者は、保護責任者遺棄等罪(刑法218条)にいう「病者」に当たる。
昭和43年11月7日最高裁第一小法廷集刑169号355頁(保護者遺棄致死)
保護責任者遺棄罪の生存に必要な保護
保護責任者遺棄等罪(刑法218条)が刑法上の義務として求める「その生存に必要な保護」は、要扶助者の生存に必要な保護であり、幼年者の親ならば当然に行っているような監護、育児、介護行為等の保護行為一般を行うことまでを義務として求めるものではない。
平成30年3月19日最高裁第二小法廷刑集72巻1号1頁(保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件)