条文・判例・学説を体系的に整理
相当因果関係説と結果的加重犯
結果的加重犯について判例が求める基本犯と加重結果との間の因果関係を単なる条件関係と解すると、加重結果の予見可能性がなくても重い刑を科すことになり責任主義の点から問題となるが、因果関係の有無を相当因果関係が認められるか否かを基準に判断する見解によれば、相当性の判断の段階で加重結果の予見可能性が考慮されるので、加重結果について過失を別途要求しなくても責任主義に反しないとされる。
結果的加重犯の予見可能性の判断基準
加重結果の予見可能性は注意義務の前提要件であることから客観的に判断すべきであり、一般人を基準に考えるべきである。
結果的加重犯と因果関係
結果的加重犯について、判例は基本犯と加重結果との間に因果関係があれば足りるとしている。
昭和32年2月26日最高裁第三小法廷刑集11巻2号906頁(傷害致死)
不作為犯の作為義務の根拠の範囲
不作為犯における結果発生を防止しなければならない義務(作為義務)は、法律上の規定に基づくものに限られず、契約・事務管理・慣習・条理や先行行為などにも基づき得る。
不作為放火罪の既発火力の利用意思
不作為による放火罪が成立するためには、行為者が消火義務を負い、必要かつ容易な消火措置をとらないことが必要であり、判例は、既発の火力により建物が焼損されるべきことを認容する意思で足りるとしている。
昭和33年9月9日最高裁第三小法廷刑集12巻13号2882頁(放火)
間接正犯の着手時期の利用者基準説
間接正犯の実行の着手時期について、実行行為者は利用者であり被利用者の行為は因果経過にすぎないとする利用者基準説によれば、利用者が被利用者に働き掛けた時点で実行の着手が認められるが、結果発生の危険性が切迫していない時点で実行の着手を認めることになるとの批判がある。
間接正犯の着手時期の被利用者基準説
間接正犯の実行の着手時期について、被利用者の行為時に結果発生の切迫した危険が認められるとする被利用者基準説によれば、被利用者が法益侵害行為を開始した時点で実行の着手が認められ、離隔犯において到達時に実行の着手を認める考え方と親和的であるが、利用者にとって偶然の事情で着手時期を決することになるとの批判がある。
間接正犯の着手時期の個別的判断説
間接正犯の実行の着手を、実質的見地から個別的にみて結果発生の現実的危険性が発生した時点で認める見解(個別的判断説)によれば、殺人未遂罪が成立するか否かは、結果発生の現実的危険性が発生したといえるかどうかの判断による。
胎児侵害と実行行為時の人の存在不要説
胎児に侵害作用を及ぼして病変を生じさせ、出生後に致死の結果が生じた場合には、実行行為の時点で「人」が存在している必要はなく、致死の結果が生じた時点で「人」(生まれてきた人)が存在していれば足りるとする見解がある。
胎児を母体の一部とする過失致死の判例
現行刑法上、胎児は堕胎の罪において独立の行為客体として特別に規定されている場合を除き母体の一部を構成するものと取り扱われているから、胎児に病変を発生させることは人である母体の一部に対するものとして人に病変を発生させることにほかならず、出生後に病変に起因して死亡した場合には人に死の結果をもたらしたことに帰する。
昭和63年2月29日最高裁第三小法廷刑集42巻2号314頁(業務上過失致死、同傷害)
胎児母体一部説と自己堕胎処罰の不整合
胎児に病変を生じさせることを「人」である母体の一部に傷害を負わせたものと捉え、少なくとも侵害作用が及んだ時点で「人」が存在している必要があるとした上で、錯誤論における抽象的法定符合説類似の論理により、母体に傷害を負わせ生まれてきた人に致死の結果をもたらしたとして過失致死罪の成立を認める立場に対しては、自己堕胎が自傷行為として不可罰となるはずなのに現行法が自己堕胎を処罰していることと体系的に矛盾するとの批判や、母体傷害の時点では加害対象である「人」が存在しないとの批判がある。
不作為による幇助犯と確実な阻止可能性
不作為による幇助犯が成立するためには、作為に出ることで確実に正犯の実行を阻止できたという関係までは必要でない。
不真正不作為犯と作為可能性
不真正不作為犯の成立には、作為の可能性(及び容易性)が必要である。
昭和33年9月9日最高裁第三小法廷刑集12巻13号2882頁(放火)
不真正不作為犯の故意と積極的意欲
結果犯における不真正不作為犯の故意については、結果の発生を積極的に意欲することは不要であり、結果発生を認容する(未必の故意)で足りる。
昭和33年9月9日最高裁第三小法廷刑集12巻13号2882頁(放火)
不作為による殺人の作為義務の根拠
不作為による殺人罪の作為義務は、親族関係や契約関係に限られず、患者の生命に危険が生じている状況で、親族から治療を全面的に委ねられ、患者を病院から運び出させて自己の影響下に置いた者についても認められる。
平成17年7月4日最高裁第二小法廷刑集59巻6号403頁(殺人被告事件)
不作為による詐欺罪(告知義務)
詐欺罪は、積極的な欺罔行為だけでなく、信義則上の告知義務に違反して重要な事実を告げない不作為によっても成立し得る。
平成15年3月12日最高裁第二小法廷刑集57巻3号322頁(詐欺被告事件)
状態犯の意義
状態犯とは法益侵害の発生と同時に犯罪が終了するがその後も法益侵害状態が残存する犯罪であり、傷害罪がその典型例である。
継続犯の意義
継続犯とは法益侵害が継続している間は犯罪の継続が認められる犯罪であり、監禁罪や保護責任者不保護罪がその例である。
住居侵入罪の犯罪類型
住居侵入罪を状態犯と解する立場は、継続犯と解する反対説によると侵入後の現場滞留についても住居侵入罪が成立し、不退去罪が規定されている意味が失われてしまうと批判する。
継続犯の認定基準
継続犯における犯罪の継続を構成要件該当行為の継続と解する見解があり、この見解からは、監禁中に監禁罪の法定刑を引き上げる新法が施行された場合、施行後も監禁行為が継続している以上、施行後の監禁には新法が適用される。