条文・判例・学説を体系的に整理
相続財産の保存行為と法定単純承認
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされるが、保存行為及び602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
限定承認と混同
相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなされるから、被相続人が相続人に対して有した債権は、混同によって消滅しない。
限定承認者の相続財産管理の注意義務
限定承認をした相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない(民法926条1項)。
相続財産清算人の財産売却と家裁の許可
相続財産の清算人は、民法28条(不在者の財産の管理人の権限)の規定が準用され、管理人の権限(103条)を超える行為である相続財産に属する財産の売却をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
相続人判明後の相続財産清算人の代理権
相続財産の清算人が選任された後に相続人のあることが明らかになったときは、相続財産法人は成立しなかったものとみなされるが、清算人がその権限内でした行為の効力は妨げられず、清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
相続財産法人への抵当権登記請求
被相続人から抵当権設定を受けた相続債権者は、死亡までに対抗要件を備えていなければ原則として相続人不存在の相続財産法人に設定登記手続を請求できないが、死亡前の設定仮登記に基づく本登記請求は除かれる。
平成11年1月21日最高裁第一小法廷民集53巻1号128頁(根抵当権設定仮登記本登記手続)
特別縁故者への相続財産分与の請求
家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部をこれらの者に与えることができ、職権で分与することはできない。
強迫による相続放棄の取消し
共同相続人に強迫されて相続の放棄をした者は、その旨を家庭裁判所に申述して放棄の取消しをすることができる。
共同相続人の一人の放棄と限定承認
共同相続人のうち一人が相続の放棄をした場合、他の共同相続人は限定承認をすることができる。
限定承認と相続債権者への弁済拒否
限定承認者は、相続債権者及び受遺者に対する公告の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
相続財産法人の成立要件
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされるが、相続財産全部の包括受遺者があることが明らかである場合には相続財産法人は成立しない。
平成9年9月12日最高裁第二小法廷民集51巻8号3887頁(貸付信託金請求及び同当事者参加)
相続人判明後の相続財産清算人の代理権
相続財産法人が成立し相続財産の清算人が選任された後、相続人のあることが明らかになった場合であっても、清算人の代理権は当然には消滅せず、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
公告期間内に権利を主張しない相続人の失権
相続人は、民法952条2項の公告で定められた期間内に相続人としての権利を主張しなかった場合には、特別縁故者に対する相続財産の分与後、残余財産があったとしても、相続権を主張することができない。
特別縁故者への分与の範囲
家庭裁判所は、特別縁故者に対して相続財産の分与をする場合、清算後残存すべき相続財産の全部を与えることもできる。
祭祀財産の承継
被相続人が所有していた墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
相続放棄者の保存義務
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
相続放棄受理後の錯誤取消しの申述
家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した後であっても、相続放棄が民法95条の錯誤に基づくときは、その旨を家庭裁判所に申述して相続放棄を取り消すことができる(民法919条2項・4項)。
昭和40年5月27日最高裁第一小法廷集民79号201頁(土地所有権確認等請求)
相続放棄の絶対効と登記の不要
相続の放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされ(民法939条)、この効力は絶対的で、登記なくして何人に対しても生ずるため、放棄者の債権者が代位による登記をして仮差押えをしても、放棄の効力はその債権者に対しても生ずる。
昭和42年1月20日最高裁第二小法廷民集21巻1号16頁(第三者異議)
熟慮期間中の相続財産管理の注意義務
相続人は相続の承認又は放棄をするまでの間、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。
強迫による相続放棄の取消期間と申述
強迫によってした相続放棄は取り消すことができ、その取消しは、追認をすることができる時から6か月以内に家庭裁判所に申述してしなければならない(民法919条2項〜4項)。