条文・判例・学説を体系的に整理
増額再更正と当初更正の訴えの利益
当初の更正処分における所得金額を増額する再更正処分がされると、再調査により判明した結果に基づき課税価格が決定し直されたものであるから、当初の更正は消滅し、その取消しを求める訴えは対象を欠き、訴えの利益を失う(増額再更正の効力が争われるべきものとなる)。
昭和32年9月19日最高裁第一小法廷民集11巻9号1608頁(不当課税取消請求)
取消訴訟の検証物提示命令と民訴の例
行政事件訴訟に関しこの法律に定めがない事項については民事訴訟の例によるから(行政事件訴訟法7条)、取消訴訟においても、裁判所は、民事訴訟法の検証に関する規定に従い、検証の目的物の所持者にその提示を命ずることができる。
国による公開決定取消訴訟と機関訴訟
地方公共団体の長が情報公開条例に基づいてした自衛隊庁舎の設計図面の公開決定に対して国が提起する取消しを求める訴えは、国が建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由とするものであれば、行政主体間の権限の行使に関する紛争(機関訴訟)ではなく、国が自己の財産上の権利利益の保護救済を求める訴えとして法律上の争訟に当たる。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
取消訴訟から国等への賠償請求への変更
裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を、処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもって訴えの変更を許すことができる。
独禁法の措置要求不問決定の処分性
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律45条1項に基づく措置要求に対し、公正取引委員会が応じない(不問に付する)旨の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
昭和47年11月16日最高裁第一小法廷民集26巻9号1573頁(不作為の違法確認等請求)
病院開設許可と付近の医療法人の適格
医療法に基づく病院の開設許可の取消訴訟につき、当該病院の開設地の付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人は、基準病床数を超過する結果となるとしても、原告適格を有しない。
平成19年10月19日最高裁第二小法廷集民226号141頁(病院開設許可処分取消請求事件)
里道の用途廃止と近隣住民の原告適格
里道の用途廃止処分について、里道が近隣住民に個別的具体的な利益をもたらしており、その用途廃止により生活に著しい支障が生ずるという特段の事情があるときは、当該住民は取消しを求める原告適格を有する。
昭和62年11月24日最高裁第三小法廷集民152号247頁(認定外道路用途廃止処分取消)
滞納者持分の差押えと他の共有者の適格
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は、その差押処分の取消訴訟の原告適格を有する。
平成25年7月12日最高裁第二小法廷集民244号43頁(差押処分取消,国家賠償等請求事件)
事情判決に対する原告及び被告の控訴
処分の取消しの訴えにおいて、裁判所が事情判決(処分が違法であることを宣言して請求を棄却する判決)をしたときは、原告及び被告のいずれも控訴することができる。
取消判決の第三者効と請求棄却判決
処分を取り消す判決は第三者に対しても効力を有するが、請求を棄却する判決が確定した場合の効力は、第三者には及ばない。
手続違法の申請処分取消判決の拘束力
申請に基づいてした処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消されたときは、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならないが、改めてする処分が申請を認容する処分とは限らない。
明文規定なき指定医師の指定の撤回
医師の指定について、法令上その撤回について直接明文の規定がなくても、指定後に指定医師としての適格性を欠くことが明らかとなり、指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じ、撤回すべき公益上の必要性が高いときは、指定の権限を付与された者は、その権限において指定を撤回することができる。
昭和63年6月17日最高裁第二小法廷集民154号201頁(優生保護法指定医の指定取消処分取消等請求事件)
開発工事完了・検査済証後の訴えの利益
都市計画法29条の開発許可に係る開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われ、予定建築物についてまだ建築確認がされていないことは、これを妨げない。
平成5年9月10日最高裁第二小法廷民集47巻7号4955頁(開発許可処分等取消)
保安林指定解除の訴えの利益と代替施設
保安林指定解除処分の取消訴訟の係属中に、代替施設の設置により洪水や渇水の危険が解消され、保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、原告適格の基礎である被侵害利益が解消されたものとして、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
昭和57年9月9日最高裁第一小法廷民集36巻9号1679頁(保安林解除処分取消)
取消訴訟の職権証拠調べと未主張の事実
取消訴訟において、裁判所は、必要があると認めるときは職権で証拠調べをすることができるが、これは、当事者が主張していない事実を職権で認定することができることまで認めるものではない。
林地開発許可の取消訴訟の原告適格
森林法の林地開発許可の基準に関する規定は、災害による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者の生命、身体の安全等を個別的利益として保護する趣旨を含むが、周辺土地の所有権等の財産権を個別的利益として保護する趣旨は含まないから、開発区域内又はその周辺の土地に財産を有するにすぎない者は、開発許可の取消しを求める原告適格を有しない。
平成13年3月13日最高裁第三小法廷民集55巻2号283頁(林地開発行為許可処分取消請求事件)
事情判決の違法宣言と既判力
事情判決(行政事件訴訟法31条1項)においては、判決の主文において処分が違法であることを宣言しなければならず、この違法宣言について既判力が生じる。
差止めの訴えと取消判決の第三者効
取消判決の第三者効を定めた行政事件訴訟法32条1項は、差止めの訴えには準用されない(38条1項は32条1項を準用していない)から、差止めの訴えに係る請求を認容する判決が確定しても、その効力は第三者には及ばない。
取消判決の拘束力
処分を取り消す判決は、その事件について、処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束し、その拘束力により、行政庁は、その事件につき判決の主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負う。
固定資産評価と関連請求
固定資産評価審査委員会の審査決定は個々の固定資産ごとにされるものであるが、同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している複数の建物の評価額に関する各審査決定の取消請求は、互いに行政事件訴訟法第13条第6号所定の関連請求に当たり得る。
平成17年3月29日最高裁第三小法廷民集59巻2号477頁(訴状一部却下命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)