条文・判例・学説を体系的に整理
裁量判断過程審査の要素選択と評価基準
判断過程審査については、いかなる判断要素を選択し、その評価をどのように行うのかという点に関し、基準が明確ではないという問題点が指摘できる。
裁量判断過程審査と比例原則・平等原則
判断過程審査によっても、従来の裁量処分の審査で用いられてきた平等原則や比例原則の観点は、裁量処分の審査にあたり考慮すべき要素となり得る。
水俣病認定と裁量の限界
公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定は、水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではなく、認定申請を棄却する処分の適否に関する裁判所の審理及び判断は、処分行政庁の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるか否かといった観点からではなく、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきものである。
平成25年4月16日最高裁第三小法廷民集67巻4号1115頁(水俣病認定申請棄却処分取消等請求事件)
一般廃棄物処理業の許可と裁量
一般廃棄物処理業の許可をするか否かの判断に当たっては、その申請者の能力だけではなく、一定の区域における一般廃棄物の処理が全体にわたって適正に行われることが確保されるか否かを審査することが求められていることから、行政庁には一定の裁量が与えられていると解される。
平成26年1月28日最高裁第三小法廷民集68巻1号49頁(一般廃棄物処理業許可事件)
教科書検定と裁量審査
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等に係る文部科学大臣の判断について、教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や検定の基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって文部科学大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、上記判断は裁量権の範囲を逸脱したものとして国家賠償法上違法となる。
平成5年3月16日最高裁第三小法廷(第一次家永教科書訴訟)
水俣病認定と裁判所の審理方法
公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟における裁判所の審理及び判断は、現在の最新の医学水準に照らした認定基準の合理性や審査会の判断過程の過誤の有無といった観点からではなく、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、申請者の水俣病り患の有無を個別具体的に判断すべきものである。
平成25年4月16日最高裁第三小法廷民集67巻4号1115頁(水俣病認定申請棄却処分取消等請求事件)
原子炉設置許可処分と裁判所の審査方法
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであり、その合理性の有無は現在の科学技術水準に照らして審理・判断されるべきである。
平成4年10月29日最高裁第一小法廷民集46巻7号1174頁(伊方発電所原子炉設置許可処分取消)
判断過程の審査
生活保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な裁量が認められる場合でも、裁判所は判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無等の観点から裁量権の逸脱濫用を審査することができる。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
学校施設使用不許可の考慮事項審査
学校施設の目的外使用許可の判断が管理者の裁量に委ねられる場合でも、重視すべきでない考慮要素を重視し、当然考慮すべき事項を十分考慮しないなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠き、その結果社会通念に照らし著しく妥当性を欠くと認められるときは、裁量権の逸脱濫用として違法となる。
平成18年2月7日最高裁第三小法廷民集60巻2号401頁(損害賠償請求事件)
呉市学校施設使用不許可の考慮事項審査
学校施設の目的外使用許可について、重視すべきでない考慮要素を重視するなど考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとした最高裁判決は、裁量処分における考慮事項に着目した司法審査の在り方を示したものである。
平成18年2月7日最高裁第三小法廷民集60巻2号401頁(損害賠償請求事件)
裁量権逸脱濫用の審査方法
管理者の裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。
平成18年2月7日最高裁第三小法廷民集60巻2号401頁(損害賠償請求事件)
行政財産使用許可と考慮事項
地方自治法第238条の4第7項は行政財産の使用を許可するために考慮すべき事項を定めていないが、裁判所は、管理者が考慮すべき事項を考慮していないことを理由に使用不許可処分を違法と判断することができる。
平成18年2月7日最高裁第三小法廷民集60巻2号401頁(損害賠償請求事件)
都市計画決定と判断過程審査
裁判所は、地方公共団体が判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないことを理由に、都市施設に関する都市計画決定の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠き違法であると判断することができる。
平成18年11月2日最高裁第一小法廷民集60巻9号3249頁(小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件)
裁量なしとした行政庁判断の過程審査
行政処分を行う行政庁に法律上裁量が認められているのに、行政庁が裁量の余地はないと判断して処分をした場合、裁判所は、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に、処分を違法と判断することができる。
原子炉設置許可の司法審査方式
伊方原発訴訟判決において、最高裁は、原子炉設置許可処分の違法性に関する司法審査の方式として、裁判所が処分要件について行政庁と同一の立場に立って判断を行い、それと行政庁の判断とを比較して、行政庁の判断の適否を審査するという方式を採用していない。
平成4年10月29日最高裁第一小法廷民集46巻7号1174頁(伊方発電所原子炉設置許可処分取消)