条文・判例・学説を体系的に整理
遺族補償年金の男女差と平等原則
地方公務員災害補償法の遺族補償年金について、死亡した職員の夫には職員の死亡当時一定の年齢に達していることを受給の要件とし、妻にはこれを要件としないことは、妻の置かれている社会的状況に鑑み合理的な理由を欠くものではなく、憲法14条1項に違反しない。
平成29年3月21日最高裁第三小法廷集民255号55頁(遺族補償年金等不支給決定処分取消請求事件)
条例による規制の地域差と法の下の平等
憲法が地方公共団体の条例制定権を認める以上、各地方公共団体が各別に条例を制定する結果その取扱いに差別を生ずることがあっても、地域差の故をもって違憲ということはできず、売春の取締りのように法律による全国一律の規律もあり得る事項でも、条例で規律することは憲法14条1項に違反しない。
昭和33年10月15日最高裁大法廷刑集12巻14号3305頁(売春等取締条例違反)
投票価値の平等と二対一基準の否定
選挙権に関する法の下の平等は、投票価値の平等を要求するが、最大の選挙区と最小の選挙区との間で一票の重みの較差がおおむね2対1以上に開いた場合に直ちに違憲となるわけではなく、投票価値の平等は唯一絶対の基準ではない。
平成23年3月23日最高裁大法廷民集65巻2号755頁(選挙無効請求事件)
衆議院の投票価値の較差と違憲基準
最高裁は、衆議院議員選挙において各選挙区間の議員1人当たりの有権者数の比率が1対1を超えることが直ちに憲法上正当化されないわけではなく、投票価値の平等は国会が正当に考慮できる他の政策的目的との関連において調和的に実現されるべきものであるとしている。
昭和60年7月17日最高裁大法廷民集39巻5号1100頁(衆議院議員定数不均衡訴訟)
憲法14条1項と投票価値の平等
憲法14条1項に定める法の下の平等は選挙権に関しては投票価値の平等をも要求するものであり、国民が政治的価値において平等であるべきことは地方議会議員選挙における投票価値の平等の要請の根拠ともなる。
国籍取得の準正要件と平等原則
国籍法3条1項(平成20年改正前)が、日本国民である父から出生後に認知された子につき、父母の婚姻(準正)を日本国籍取得の要件としている点は、立法目的自体には合理的な根拠が認められるが、社会的状況の変化により当該区別と立法目的との間の合理的関連性が失われ、憲法14条1項に違反する。
平成20年6月4日最高裁大法廷民集62巻6号1367頁(国籍法違憲判決)
外国人の管理職選考受験資格と平等原則
普通地方公共団体が、公権力行使等地方公務員への昇任を前提とする一体的な管理職任用制度を設け、日本国籍を有しない職員に管理職選考の受験を認めないとしても、合理的な理由に基づく区別であって、労働基準法3条にも憲法14条1項にも違反しない。
平成17年1月26日最高裁大法廷民集59巻1号128頁(管理職選考受験資格確認等請求事件)
非嫡出子相続分区別の合理的根拠の喪失
最大決平成25年9月4日は、家族形態の多様化等の社会の動向に加え、父母が婚姻関係になかったという子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重しその権利を保障すべきであるという考えが確立されてきていることを総合して、遅くとも平成13年7月当時には嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたと判断した。
平成25年9月4日最高裁大法廷民集67巻6号1320頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)
尊属殺重罰規定の違憲判決
尊属に対する尊重報恩は社会生活上の基本的道義であり刑法上の保護に値するが、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のため必要な限度を超え、憲法14条1項に違反する。
昭和48年4月4日最高裁大法廷刑集27巻3号265頁(尊属殺人)
国籍差別と人種差別の区別
憲法14条1項の「人種」は人類学上の種類を指し、国籍による区別は人種による区別とは異なる。
平等原則の信条と政治的主義・思想
憲法14条1項の「信条」は、言葉の由来からは宗教上の信念を意味するが、今日では広く世俗的な政治上の主義や思想的な主張も含むと解されている。
平等原則の社会的身分と広義説
社会的身分の意味については、狭義説・中間説・広義説と見解が分かれるが、最高裁は、憲法14条1項の社会的身分を、人が社会において占める継続的な地位をいうと解しており、広義説を採用している。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)
性別差別禁止と男性差別
憲法14条1項の性別による差別の禁止は、男性を差別する取扱いにも及ぶ。
嫡出子と非嫡出子の法定相続分差別
最高裁は、子にとって自ら選択できない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重しその権利を保障すべきであるという考えが確立されてきたという事情は、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的な根拠が失われたと判断すべき根拠となるとした。
平成25年9月4日最高裁大法廷民集67巻6号1320頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)
昭和58年参院定数判決の内容
最高裁昭和58年4月27日大法廷判決は、参議院議員選挙の特殊性として地方選出議員の地方代表的性格、半数改選制、解散がないことなどを重視して合憲としたが、地方選出議員の地方代表的性格を否定したものではない。
昭和58年4月27日最高裁大法廷民集37巻3号345頁(選挙無効)
憲法14条1項後段列挙事由の意義
憲法14条1項後段の列挙事由による区別については、人間性の尊重という民主主義の理念から原則として不合理なものとされ、合憲性の推定が排除される(立証責任が転換される)とする有力な見解(特別意味説)がある。
平成8年参院定数判決
最高裁平成8年9月11日大法廷判決は、最大較差1対6.59倍について違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態が生じているとしたが、是正のための合理的期間は徒過していないとして合憲とした。
平成8年9月11日最高裁大法廷民集50巻8号2283頁(選挙無効)
憲法14条1項の平等原則
憲法14条1項は法の下の平等を保障し、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的、経済的又は社会的関係において差別されないことを定める。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)
平成21年参院定数判決
最高裁平成21年9月30日大法廷判決は、結論として合憲としつつも、投票価値平等の観点から大きな不平等が存し較差の縮小を図ることが求められること、そのためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要であると判示した。
平成21年9月30日最高裁大法廷民集63巻7号1520頁(選挙無効請求事件)
租税法における立法裁量
国民の租税負担を定めるには国政全般からの総合的政策判断と極めて専門技術的な判断が必要となるので、租税法の分野における取扱いの区別は、立法目的が正当で区別の態様が目的との関連で著しく不合理でない限り憲法14条1項に違反しない。
昭和60年3月27日最高裁大法廷民集39巻2号247頁(所得税決定処分取消)