条文・判例・学説を体系的に整理
海外旅行の自由と国内外の区別
海外旅行の自由は海外に移住する自由に含まれるとする見解に対し、憲法22条1項は国内の関係、同条2項は国外の関係を規律すると考えることは形式的に過ぎて適切ではないとする見解は、その批判となっている。
海外旅行の自由と移住・一時渡航
海外旅行の自由は移転の自由に含まれるとする見解に対し、日本国の主権から離脱する自由と、一時的に日本国外に渡航する自由とは異なるとする見解は、批判となっていない。
海外旅行の自由と憲法13条保障説
海外旅行の自由は憲法13条により保障されるとする見解に対し、移転の自由及び海外に移住する自由は生活の本拠を決定することを保障するものであるとする見解は、批判となっていない。
職業選択の自由の制約目的
職業選択の自由は、社会生活における安全の保障及び秩序の維持等の消極的な目的や、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的な目的のほか、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のためにも制約され得る。
平成4年12月15日最高裁第三小法廷民集46巻9号2829頁(酒類販売業免許拒否処分取消)
海外旅行の自由の憲法上の根拠
海外旅行の自由は憲法22条2項の外国に移住する自由に含まれるとするのが判例の立場である。
昭和33年9月10日最高裁大法廷民集12巻13号1969頁(帆足計事件)
居住・移転の自由の複合的性格
居住・移転の自由は、経済的自由の要素のほか、身体の自由や、広く知的な接触の機会を得るために不可欠であるという意味での精神的自由の要素も併せ持つ、複合的な性格を有する人権と解されている。
自衛官の居住地制限と合憲性
自衛官につき防衛大臣が指定する場所に居住しなければならないとする法律の規定は、当該国民が自ら自衛官に志願した結果として課される制約であり、国の防衛のためいつでも職務に従事できる態勢にあることが求められるという自衛官の職務の性質に照らし合理的な制限と解される。
暴力団員への市営住宅明渡請求の合憲性
市営住宅の入居者が暴力団員であることが判明したときは当該住宅の明渡しを請求することができる旨を定める条例の規定は、居住の制限が公共の福祉による必要かつ合理的なものであるから、憲法22条1項に違反せず、暴力団員について合理的な理由のない差別をするものでもないから、憲法14条1項にも違反しない。
平成27年3月27日最高裁第二小法廷民集69巻2号419頁(建物明渡等請求事件)
住民届出義務と居住・移転の自由
住民が住所を変更したときには市町村長に届け出なければならない旨を義務付ける法律の規定は、住所・居所の決定や移転それ自体を制限するものではなく規制態様が軽微である反面住民票の整備により得られる公益が大きいことから合憲と解される。
在留外国人の一時的な外国旅行の自由
我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。
平成4年11月16日最高裁第一小法廷集民166号575頁(再入国不許可処分取消等)
破産者の居住制限と合憲性
破産手続中の破産者につき裁判所の許可なく居住地を離れることを禁止する法律の規定は、居住・移転の自由に対する制約に当たるが、破産手続という限られた期間内にのみ適用されるものであり、破産手続の適正な遂行のための合理的な制約として合憲と解される。
自衛官の居住地制限
自衛隊法55条は、自衛官は、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住しなければならないと定めている。
破産者の居住制限
破産法37条1項は、破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければその居住地を離れることができないと定めており、これは居住・移転の自由に対する制約に当たる。
住民届出義務と居住・移転の自由
住民基本台帳法は、転入をした者・転居をした者に対し、転入・転居をした日から14日以内に氏名、住所等を市町村長に届け出ることを義務付けているが(22条1項・23条)、この届出義務は住所の決定や移転それ自体を禁止・制限する規定ではない。
憲法22条と居住・移転の自由
憲法22条1項は何人も居住・移転の自由を有する旨を規定し、同条2項は何人も外国に移住し又は国籍を離脱する自由を侵されない旨を規定する。
居住・移転の自由と海外渡航の自由
憲法22条1項は何人も公共の福祉に反しない限り居住・移転の自由を有すると定め、同条2項は何人も外国に移住し又は国籍を離脱する自由を侵されないと定めており、海外渡航の自由も憲法22条の保障に含まれる。
昭和33年9月10日最高裁大法廷民集12巻13号1969頁(帆足計事件)
海外渡航の自由の性質
海外渡航の自由は出国の自由と再入国の自由を包括する概念であり、その性質は経済的自由の側面にとどまらず、精神的自由、人身の自由などと関連し、複合的かつ多元的な性質を持つ。
旅券発給拒否と合憲性
「著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」につき外務大臣が旅券の発給を拒否できる旨定めた旅券法の規定は、公共の福祉のための合理的な制限を定めたものとして合憲である。
昭和33年9月10日最高裁大法廷民集12巻13号1969頁(帆足計事件)
海外渡航の自由の憲法上の根拠
憲法22条1項の「公共の福祉」との文言によって直ちに広範な政策的制約が許されるものではないと考えれば、海外渡航の自由について憲法上の根拠を同項に求めるか他の条項に求めるかによって許される制約の程度に決定的な差異は生じない。
居住移転の自由の人身的精神的側面
居住・移転の自由は、身体の拘束を解く意義を有するため人身の自由の一環としてとらえることができ、また広く知的な接触の機会を得るためにも不可欠であるとして、精神的自由の要素を併せ持つことが説かれている。