条文・判例・学説を体系的に整理
内申書と思想信条の自由
公立中学校の校長が、同校の生徒について、大学生の政治集会に参加しているなどと記載した内申書(調査書)を作成提出することは、同記載が生徒の思想、信条そのものを記載したものでなく、同記載に係る外部的行為によっては生徒の思想、信条を了知し得るものではなく、また、思想、信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとも解することができないから、憲法19条に違反しない。
昭和63年7月15日最高裁第二小法廷判時1287号65頁(麹町中学校内申書事件)
君が代ピアノ伴奏命令
公立小学校の校長が音楽専科の教諭に対し入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じる職務命令は、直ちに当該教諭の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものとは認められず、特定の思想を持つことを強制・禁止したり特定の思想の有無の告白を強要したりするものでもないから、憲法19条に違反しない。
平成19年2月27日最高裁第三小法廷民集61巻1号291頁(戒告処分取消請求事件)
国旗国歌と思想良心の自由
公立高校の教諭に対し、卒業式の国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命ずる校長の職務命令は、起立斉唱行為が、特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であるから、思想及び良心の自由を直ちに制約するものとは認められず、間接的な制約となる面はあるものの、その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
思想・良心の自由の保障
憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定めており、判例は、職務命令等が特定の思想を持つことを強制したり禁止したりするものか、特定の思想の有無について告白することを強要するものかを、同条との関係で検討している。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
憲法19条と思想・良心の自由の保障
憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定め、最高裁は、個人の歴史観ないし世界観に由来する行動が外部的行動として現れ、社会一般の規範等と抵触する場面においては制限を受けることがあり、その制限が必要かつ合理的なものである場合には、その制限を介して生ずる間接的な制約も許容され得るとしている。
政党所属調査と思想信条の自由
企業が労働者に対し特定政党に所属しない旨の書面を要求する行為が労働者の思想・信条の自由に対する直接的制約として違法となるか否かは、それが企業秩序違反行為に関する調査の一環として行われた場合、その経緯や調査方法の相当性等を考慮して判断される。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
南九州税理士会事件と政治献金
政治団体への寄付が強制加入団体である税理士会の目的の範囲内かどうかを判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、政治団体に寄付するかどうかは選挙における投票の自由と表裏をなすものとして会員各人が個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であることなどを考慮することが必要である。
平成8年3月19日最高裁第三小法廷民集50巻3号615頁(選挙権被選挙権停止処分無効確認等)
憲法19条の保障内容
憲法19条は思想及び良心の自由を保障しており、国家権力が個人の内心の自由を侵害することを禁じている。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
良心の自由の広義説
謝罪広告事件判決の多数意見は、良心の自由が是非弁別の判断に関する事項を外部に表現する自由及び表現しない自由をも広く含むとは判示しておらず、このように広く解する理解は、謝罪広告の強制が良心の自由を侵すとした藤田八郎裁判官の反対意見が示したものである。
昭和31年7月4日最高裁大法廷民集10巻7号785頁(謝罪広告請求)
せん動罪と思想の処罰
破壊活動防止法のせん動罪は、せん動として外形に現れた客観的な行為を処罰の対象とするものであり、行為の基礎となった思想、信条自体を処罰するものではない。
平成2年9月28日最高裁第二小法廷刑集44巻6号463頁(破壊活動防止法違反)
思想及び良心の自由の保障
憲法19条は、思想及び良心の自由は、これを侵してはならないと定めており、判例は、謝罪広告の強制、強制加入団体の負担金徴収、破壊活動防止法のせん動罪などについてこの自由との関係を判断している。
三菱樹脂事件と採用時の調査
企業者が特定の思想、信条を有する者をそれを理由に雇い入れることを拒んでも当然に違法となるものではなく、採否決定に当たり思想、信条を調査し関連事項の申告を求めることも違法行為とすべき理由はないが、労働基準法3条は雇入れ後の労働条件の差別を禁止しており、雇入れ後に信条を理由に解雇することは許されない。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
憲法19条の思想・良心の自由
憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定めており、判例は、職務命令が特定の思想を持つことを強制したり禁止したりするものか、特定の思想の有無について告白することを強要するものかを検討し、また、外部的行動の制限を介して思想及び良心の自由についての間接的な制約が生ずる場合には、その制限が必要かつ合理的なものであれば許容され得るとしている。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
三菱樹脂事件と私人間効力
最大判昭和48年12月12日(三菱樹脂事件)は、憲法19条・14条等の規定は国又は公共団体と個人との関係を規律するもので私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないとし、企業者は契約締結の自由を有し、いかなる者を雇い入れるかについて法律その他による特別の制限がない限り原則として自由に決定することができるとした。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
起立斉唱職務命令事件の性質論
卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は、一般的・客観的に見て、これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、校長の職務命令は当該教諭の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
起立斉唱行為と特定の思想の表明
国旗に向かって起立し国歌を斉唱する行為は、特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり、職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合にはそのように評価することは一層困難であるから、校長の職務命令は特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
起立斉唱と間接的制約
卒業式等の国歌斉唱時に起立して斉唱する行為は、一般的・客観的には国旗・国歌への敬意表明の要素を含むため、これに応じ難い歴史観・世界観を持つ者へ起立斉唱を求めることは、思想・良心の自由を間接的に制約する面がある。
平成23年5月30日最高裁第二小法廷民集65巻4号1780頁(再雇用拒否処分取消等請求事件)
三菱樹脂事件と思想調査
判例は、企業者が労働者の採否決定に当たり、労働者の思想・信条を調査し、これに関連する事項について申告を求めることも、法律上禁止された違法行為とすべき理由はないとした。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
内申書の外部的行為記載と思想信条
中学校の内申書にその学校の全共闘を名乗って機関紙を発行したなどと記載した場合、それ自体は客観的な事実であれば、その記載に係る外部的行為から一定の思想信条を了知し得るものではない。
昭和63年7月15日最高裁第二小法廷判時1287号65頁(麹町中学校内申書事件)
思想・良心の意味(広義説)
思想・良心の意味を内心一般と広範に捉えることは、その高い価値を低下させ、むしろその自由の保障を弱めるとの批判がある。