条文・判例・学説を体系的に整理
形式的意味の憲法と実質的意味の憲法
日本国憲法が権力分立や権利保障に関する諸規定を有していることは、日本国憲法が形式的意味の憲法(憲法典という形式で存在する憲法)に該当することの根拠とはならず、実質的意味の憲法に該当することの根拠となる。
立憲的意味の憲法と憲法附属法
日本国憲法の下に憲法附属法(皇室典範、国会法、内閣法、公職選挙法等)が存在していることは、日本国憲法が立憲的意味の憲法あるいは近代的意味の憲法に当たることの根拠とはならない。
硬性憲法と憲法96条1項前段
日本国憲法96条1項前段が、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し国民に提案してその承認を経なければならないと定めていることは、日本国憲法が硬性憲法に該当することの根拠となる。
イギリスの法の支配と国会主権の確立
イギリスで20世紀までに成立した法の支配は、制定法とコモン・ローを中心とした「正規の法」による支配を意味し、裁判所による法の適用の保障を要求するものであるが、17世紀の国会と国王との抗争を経て国会が主権を有するという観念が確立されたことは、この法の支配の内容を根拠付けるものではない。
形式的法治国家と法律の留保
19世紀後半のドイツで採用された法治国家概念が今日では形式的法治国家論であると批判されている根拠として、法律の留保の下、行政権が国民の権利を制限し義務を課すには法律の根拠が必要とされたが、法律がどのような内容を伴っているかは問題とされなかったことが挙げられる。
法治主義と法の支配の接近と国民主権
現在の立憲主義国家の多くは、統治原理として法治主義を掲げる場合であっても、その内実は法の支配原理とほぼ同じ意味を持つようになっているが、現在の立憲主義国家の多くが国民主権原理を採用していることは、その根拠とはならない。
フランス人権宣言と立憲主義
1789年のフランス人権宣言は「権利の保障が確保されず権力の分立が定められていないすべての社会は憲法をもたない」と規定し、近代立憲主義の立場を宣明するとともに所有は神聖不可侵の権利とした。
アメリカ合衆国の違憲審査制
アメリカ合衆国では、憲法に明示的な定めはなかったが合衆国最高裁判所の判例によって司法審査制度が確立し、同裁判所は、大恐慌後のニュー・ディール期には契約の自由などの経済的自由を重視して経済・労働規制立法を違憲とし政治部門と対立したが、今日では表現の自由(表現内容に基づく規制)について厳格な審査を行っている。
ドイツの憲法裁判所制度
ドイツでは、第一次世界大戦後に社会国家の理念(社会権)を体現する規定を有するワイマール憲法が成立したが、その後ナチスの台頭を許し、数々の人権侵害が行われ、第二次世界大戦後の1949年のドイツ連邦共和国基本法により連邦憲法裁判所が設置され、抽象的規範統制を伴う憲法保障が確立している。
イギリスの不文憲法と議会主権
イギリスは、議会主権・不文憲法(単一の成文憲法典を有さない)の国であり、議会の制定した法律を裁判所が違憲無効とすることは行われておらず、王位継承法(1701年)のような議会制定法が憲法的重要性を有するものとされている。
国際人権保障と欧州人権条約
国際的な人権保障については世界人権宣言の採択に続いて国際人権規約が発効し、その後も難民条約や女子差別撤廃条約等の個別の重要な人権条約について我が国も締約国となり、地域的な人権条約の中でも欧州人権条約については欧州人権裁判所が裁判的保障の役割を担っている。
固有の意味の憲法と立憲的意味の憲法
固有の意味の憲法とは国家の統治の基本的な在り方を定めた法を指し国家が存在する限りいかなる時代にも存在するものであって、これに対して立憲的意味の憲法とは国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づく近代以降の憲法のことをいう。
立憲主義の本質的要素
立憲的意味の憲法(立憲主義に基づく近代の憲法)は、人権の保障と権力分立による権力の制限をその本質的要素とし、フランス人権宣言16条が「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」と宣言したことにその思想的基盤がある。
立憲的意味の憲法
立憲的意味の憲法とは、国家権力を制限し国民の権利を保障するという近代立憲主義の理念に基づく憲法をいう。
立憲的意味の憲法
1789年フランス人権宣言第16条において、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は全て憲法を持つものではない旨が示されているが、この場合の「憲法」は「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と呼ばれる。
近代立憲主義の定義
立憲主義とは、政治は憲法に従ってなされなければならないという思想をいい、そこでいう憲法は人権保障と権力分立の原理に支えられたものでなければならないとされるから、近代立憲主義は、単に成文憲法に基づいて国家運営を行おうとする思想・実践を意味するものではない。
マグナカルタの性格
1215年のマグナカルタを近代的な成文憲法の確立と位置づけることはできず、近代立憲主義は、アメリカ独立宣言・合衆国憲法・フランス人権宣言など18世紀の市民革命期の流れの中で整理される。
フランス人権宣言16条の要件
1789年のフランス人権宣言16条は「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない」と規定し、近代立憲主義の要件として権利保障と権力分立の双方を要求している。
19世紀自由国家と違憲審査制
19世紀の「自由国家」の時代には自由の保障が強調されていたが、違憲立法審査権を裁判所に認める国はアメリカ合衆国など例外的であり、多くの国では議会主権の下で裁判所による違憲審査は行われなかった。
不文憲法と立憲主義の関係
イギリスは成文憲法典を持たない不文憲法の国であるが、慣習法・制定法・判例法等の蓄積により立憲主義を実現しており、立憲主義は成文憲法典の存在を不可欠の前提としない。