条文・判例・学説を体系的に整理
違法性の錯誤と故意
違法性の錯誤があっても、構成要件該当事実の認識がある以上、故意は阻却されない。
あてはめの錯誤と故意
客観的にわいせつな文書の意味内容を理解しつつも刑法上のわいせつ文書に該当しないと考えた場合、それは違法性の錯誤にすぎず、わいせつ物頒布罪の故意は否定されない。
昭和32年3月13日最高裁大法廷刑集11巻3号997頁(猥褻文書販売)
法律の錯誤
法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできず、情状によりその刑を減軽することができるにとどまり、その刑を免除することはできない。
法律の錯誤
法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないが、情状によりその刑を減軽することができ(刑法38条3項ただし書による法律上の減軽)、法律上刑を減軽する場合であっても、さらに酌量減軽(66条・67条)をすることができる。
誤想防衛と故意阻却に関する学説
正当防衛に該当する事実があると誤信した場合(誤想防衛)には、故意を否定し過失犯の成否のみを問題とする見解(制限責任説、厳格故意説)と、故意は否定せずやむを得ない事情があれば責任を阻却する見解(厳格責任説)とがあり、前者によれば、誤信が不注意によるときは過失犯が成立し得るにとどまり、誤信にやむを得ない理由があって過失もないときは犯罪は成立しない。
厳格故意説と違法性の意識の欠如
違法性の意識を故意の要件とする見解(厳格故意説)によれば、違法性の意識が認められない場合には故意が否定され、故意犯は成立せず、過失処罰規定があれば過失犯が成立する余地がある。
責任説による違法性の意識と故意の区別
違法性の意識の可能性を、故意・過失に共通の独立した責任要素とする見解(責任説)は、違法性の意識の有無は故意の成立と無関係とし、違法性の意識の可能性がなければ責任を肯定できないとする。
防衛要件の誤解と厳格故意説
事実の誤信はなく、正当防衛の成立要件を誤解して成立すると誤信した(違法性の錯誤)場合、違法性の意識を故意の要件とする見解(厳格故意説)によれば、違法性の意識がなければ誤信にやむを得ない理由がなくても故意が否定されて故意犯は成立しないが、違法性の意識の有無を故意と無関係とし、その可能性がなければ責任を否定する見解(責任説)によれば、誤信にやむを得ない理由がない限り故意犯が成立する。