条文・判例・学説を体系的に整理
行政上の工事中止命令不履行と民事訴訟
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではなく、法律上の争訟に当たらず、強制的に履行させる手段が条例に定められていない場合でも、不適法である。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
不作為違法確認と国家賠償の違法の区別
不作為の違法確認訴訟における違法(行政手続上の作為義務の違反)と、応答処分の遅延による損害につき賠償を求める国家賠償請求訴訟における違法(私的利益の侵害という意味での違法)は同じではなく、前者の認容判決の既判力は後者の訴訟には及ばない。
平成3年4月26日最高裁第二小法廷民集45巻4号653頁(水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償)
行政上の義務履行確保と民事訴訟
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもので自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらない。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
許可と民事差止訴訟の関係
産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた場合でも、周辺住民は許可の取消訴訟を提起することなく、人格権に基づき施設操業の差止めを求める民事訴訟を適法に提起することができる。
不作為の違法確認訴訟の対象
不作為の違法確認訴訟は、申請に対して相当の期間内に何らの処分もしないことが対象であり、申請を拒否する処分がされた場合には対象とならない。
公害防止協定の履行請求と法律上の争訟
市町村が処分業者に対し、公害防止協定に基づく義務の履行を求める訴えは、法律上の争訟に当たる。
平成21年7月10日最高裁第二小法廷集民231号273頁(産業廃棄物最終処分場使用差止請求事件)
反則行為の不成立主張方法
反則金の通告を受けた者が反則行為の不成立を主張しようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときに刑事手続において裁判所の審判を求めるべきである。
昭和57年7月15日最高裁第一小法廷民集36巻6号1169頁(行政処分取消)
行政事件訴訟の分類
行政事件訴訟法第2条は、行政事件訴訟とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいうと定めている。
法定外抗告訴訟の許容性
行政事件訴訟法が抗告訴訟として列挙する処分の取消しの訴え等の6類型は、抗告訴訟として許容されるものをこれに限定する趣旨ではなく、法定外抗告訴訟(無名抗告訴訟)も認められると解されている(これを認めない異説もある)。
増額再更正と当初更正の訴えの利益
当初の更正処分における所得金額を増額する再更正処分がされると、再調査により判明した結果に基づき課税価格が決定し直されたものであるから、当初の更正は消滅し、その取消しを求める訴えは対象を欠き、訴えの利益を失う(増額再更正の効力が争われるべきものとなる)。
昭和32年9月19日最高裁第一小法廷民集11巻9号1608頁(不当課税取消請求)
取消訴訟の検証物提示命令と民訴の例
行政事件訴訟に関しこの法律に定めがない事項については民事訴訟の例によるから(行政事件訴訟法7条)、取消訴訟においても、裁判所は、民事訴訟法の検証に関する規定に従い、検証の目的物の所持者にその提示を命ずることができる。
国による公開決定取消訴訟と機関訴訟
地方公共団体の長が情報公開条例に基づいてした自衛隊庁舎の設計図面の公開決定に対して国が提起する取消しを求める訴えは、国が建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由とするものであれば、行政主体間の権限の行使に関する紛争(機関訴訟)ではなく、国が自己の財産上の権利利益の保護救済を求める訴えとして法律上の争訟に当たる。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
取消訴訟から国等への賠償請求への変更
裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を、処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもって訴えの変更を許すことができる。
独禁法の措置要求不問決定の処分性
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律45条1項に基づく措置要求に対し、公正取引委員会が応じない(不問に付する)旨の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
昭和47年11月16日最高裁第一小法廷民集26巻9号1573頁(不作為の違法確認等請求)
病院開設許可と付近の医療法人の適格
医療法に基づく病院の開設許可の取消訴訟につき、当該病院の開設地の付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人は、基準病床数を超過する結果となるとしても、原告適格を有しない。
平成19年10月19日最高裁第二小法廷集民226号141頁(病院開設許可処分取消請求事件)
里道の用途廃止と近隣住民の原告適格
里道の用途廃止処分について、里道が近隣住民に個別的具体的な利益をもたらしており、その用途廃止により生活に著しい支障が生ずるという特段の事情があるときは、当該住民は取消しを求める原告適格を有する。
昭和62年11月24日最高裁第三小法廷集民152号247頁(認定外道路用途廃止処分取消)
滞納者持分の差押えと他の共有者の適格
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は、その差押処分の取消訴訟の原告適格を有する。
平成25年7月12日最高裁第二小法廷集民244号43頁(差押処分取消,国家賠償等請求事件)
事情判決に対する原告及び被告の控訴
処分の取消しの訴えにおいて、裁判所が事情判決(処分が違法であることを宣言して請求を棄却する判決)をしたときは、原告及び被告のいずれも控訴することができる。
取消判決の第三者効と請求棄却判決
処分を取り消す判決は第三者に対しても効力を有するが、請求を棄却する判決が確定した場合の効力は、第三者には及ばない。
手続違法の申請処分取消判決の拘束力
申請に基づいてした処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消されたときは、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならないが、改めてする処分が申請を認容する処分とは限らない。