条文・判例・学説を体系的に整理
質問検査権の範囲と裁量
国税通則法第74条の2第1項に基づく質問検査は、諸般の具体的事情に鑑み、質問検査の客観的な必要性があると判断される場合に認められるものであって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等法律上特段の定めのない実施の細目については、上記のような質問検査の必要があり、かつこれと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある職員の合理的な選択に委ねられている。
昭和48年7月10日最高裁第三小法廷刑集27巻7号1205頁(所得税法違反)
犯則事件調査と令状の要否
国税通則法の犯則事件調査で犯則嫌疑者の身体を捜索するには原則として裁判官の許可状が必要であるが、間接国税の現行犯につき証拠集取の必要があり、急速を要して許可状の交付を受けられない場合には犯則現場で無許可状の捜索ができ、置き去られた物件の検査は許可状を要しない。
執行罰の意義
執行罰とは、義務の不履行に対して、一定の期限を示して過料を科すことを予告することにより、間接的に義務の履行を強制する手段である。
行政代執行
行政代執行は、法律(法律の委任に基づく命令、規則及び条例を含む)により直接に命ぜられ、又は法律に基づき行政庁により命ぜられた代替的作為義務(他人が代わってなすことのできる行為)について、義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときに、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収する制度である。
執行罰と秩序罰の区別
秩序罰は義務違反に対する制裁として科される過料であり、執行罰のように義務履行を強制する手段ではない。
行政上の直接強制と執行罰の区別
直接強制は、義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政機関が直接に義務者の身体又は財産に実力を加えて義務の内容を実現する手段である。
建築確認の法的性質
建築確認は建築計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを公権的に判断する確認的行為であり裁量を伴わない覊束行為である。
建築確認と停止条件
建築確認は羈束行為であり、建築主事は建築主と近隣住民との協議を停止条件として建築確認を行うことはできない。
建築確認と違反是正命令の関係
建築確認を受けて建築された建築物について、特定行政庁は建築確認が取り消され又は無効である場合でなくても、建築物が建築基準法令の規定に違反することを理由に違反是正命令を行うことができる。
無確認建築と罰則
建築確認を受けずに建築を行った場合、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していても、建築基準法99条1項1号の定める刑罰を科される。
公害防止協定の実力による立入検査の禁止
地方公共団体は、公害防止協定において、必要があると認めるときは職員が事業者の施設に実力で立ち入って検査を行うことができる旨を定めることはできない(実力行使は法律の根拠がなければ許されない)。
確実な水不足予測による給水契約拒否
水道事業者である市町村が正常な企業努力をしているにもかかわらず、近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見される場合には、水道法15条1項にいう「正当の理由」があり、給水契約の申込みを拒否することができる。
平成11年1月21日最高裁第一小法廷民集53巻1号13頁(給水契約上の地位確認等)
保育所廃止条例の処分性と取消訴訟
特定の市立保育所を廃止する条例の制定行為は、他の行政庁の処分を待つことなく廃止の効果を発生させ、入所中の児童及び保護者という限られた特定の者の法的地位を直接奪うので、行政庁の処分と実質的に同視し得るものとして、取消訴訟を適法に提起することができる。
平成21年11月26日最高裁第一小法廷民集63巻9号2124頁(横浜市立保育園廃止処分取消請求事件)
法律上直接生じる義務と代執行
法律から直接生じる義務であって行政庁の命令により課されるものではない義務についても、行政庁は代執行の対象にすることができる。
代執行費用の事前徴収
代執行に要した費用は、実際に要した費用の額及び納期日を定めて納付を命じた上で、国税滞納処分の例により徴収することができるが、代執行をする前に費用を徴収することができる旨の規定はない。
報告要求と直接強制
営業者等への報告の要求は、その性質上、直接的物理的強制になじまない。
川崎民商事件と無令状の質問検査
所得税法上の質問検査について、強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度に達していないこと等を考慮し、令状なしの検査を合憲とした。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
氏名公表と法律の根拠
行政庁による氏名の公表は事実行為であり、侵害留保説によれば、個人の名誉、信用等を毀損するおそれがあるとしても、法律の根拠が必ずしも必要とされるわけではない。
直接強制と条例
行政代執行法1条により、行政上の義務の履行確保の手段は法律で定めるものに限られ、現行法上、直接強制について条例を根拠規範とすることは許されない。
行政上の秩序罰と刑法総則
法律違反に対する行政上の秩序罰としての過料は、刑罰ではないので刑法総則の適用はない。