条文・判例・学説を体系的に整理
在外国民の選挙権と立法不作為の確認
最高裁判所は、立法不作為により在外国民が選挙権を行使できない場合に、立法不作為の違憲を理由とする国家賠償請求を認めるほか、次回の選挙において選挙権を行使する権利を有することの確認を求める訴えについても、公法上の法律関係に関する確認の訴え(公法上の当事者訴訟)として適法であるとして、これを認めている。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
公安条例の交通秩序維持の文言の明確性
最大判昭和50年9月10日は、刑罰法規が不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決定すべきであるとした上で、条例の「交通秩序を維持すること」の文言は明確性を欠かないと判断した。
昭和50年9月10日最高裁大法廷刑集29巻8号489頁(集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反)
最高裁判所裁判官の国民審査と国民主権
最高裁判所の裁判官に対する国民審査権を主権者の権能の一内容とする見解は、憲法が国民主権を規定するとともに最高裁判所に終審裁判所としての重要な地位・権限を付与していることを根拠とすることができる。
選挙無効訴訟と他者の選挙権侵害主張
公職選挙法の規定が一定の者につき選挙権を制限していることの憲法適合性については、当該者が自己の選挙権の侵害を理由にその救済を求めて提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても、同法204条の選挙無効訴訟において選挙人らが他者の選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張してこれを争うことは、法律上予定されていない。
平成26年7月9日最高裁第二小法廷集民247号39頁(選挙無効請求事件)
立法行為の国家賠償法上の違法性
国会議員の立法行為の国家賠償法上の違法の問題と立法内容の違憲の問題とは区別されるが、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合等には、立法行為が国家賠償法上の違法の評価を受けることがある。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
憲法17条と国家賠償立法の裁量
憲法17条の「法律の定めるところにより」は、公務員のどのような行為によりいかなる要件で国又は公共団体が損害賠償責任を負うかを立法府の政策判断にゆだねたものであって、立法府に無制限の裁量権を付与するものではない。
平成14年9月11日最高裁大法廷民集56巻7号1439頁(損害賠償請求事件)
堀越事件と法令違憲・適用違憲
堀越事件(最高裁平成24年12月7日第二小法廷判決)において、最高裁判所は、被告人の配布行為には公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められないとして無罪としたが、法令を違憲とはせず、適用違憲の判断でもなく、構成要件該当性を限定解釈して否定したものである。
平成24年12月7日最高裁第二小法廷刑集66巻12号1337頁(堀越事件)
空知太神社訴訟と違憲判断
空知太神社訴訟(最高裁判所平成22年1月20日大法廷判決)において、最高裁判所は、同じ市による別の神社敷地の譲与行為に対する合憲判断と異なり、当該事案における敷地利用提供行為については憲法89条及び20条1項後段に違反すると判示した。
平成22年1月20日最高裁大法廷民集64巻1号1頁(財産管理を怠る事実の違法確認請求事件)
郵便法違憲判決と法令の一部違憲
郵便法の損害賠償責任免除・制限規定が憲法17条に違反するかが問われた訴訟(最高裁判所平成14年9月11日大法廷判決)において、最高裁判所は、郵便業務従事者の重過失により損害が生じたような場合にまで賠償責任の免除・制限を認めることは17条に違反するとし、法令の一部違憲の判断を行った。
平成14年9月11日最高裁大法廷民集56巻7号1439頁(損害賠償請求事件)
適用違憲と法令違憲の区別
適用違憲は法令自体は合憲であるが、その法令を当該事案に適用する限りにおいて違憲となる場合をいい、法令違憲は法令の規定そのものが違憲である場合をいう。
平成14年9月11日最高裁大法廷民集56巻7号1439頁(損害賠償請求事件)
合憲限定解釈の手法
合憲限定解釈とは法令の適用範囲を限定的に解釈して合憲性を維持する手法であるが、堀越事件の千葉勝美裁判官の補足意見は、多数意見の解釈をいわゆる合憲限定解釈ではなく、文理・法の構造や理念・罰則の趣旨目的等を総合考慮する通常の法令解釈と位置付けた。
国籍法違憲判決の合理的解釈
最高裁は国籍法3条1項のうち過剰な要件を設けて区別を生じさせている部分のみを除いて合理的に解釈して届出による国籍取得を認めることは、新たな国籍取得の要件を創設する立法作用に当たらないとした。
平成20年6月4日最高裁大法廷(国籍法違憲判決)
事情判決の法理と選挙訴訟
議員定数配分規定が違憲とされた場合について、最高裁は、行政事件訴訟法31条(事情判決)の規定は公職選挙法219条により選挙の効力に関する訴訟への準用が排除されているが、同条には一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含まれているとして、その法理により選挙を無効とせず、選挙が違法である旨を主文で宣言した。
昭和51年4月14日最高裁大法廷(衆議院議員定数不均衡訴訟)
非嫡出子相続分違憲決定の射程
最高裁は嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定を違憲とした際、当該規定が違憲とされた事案の相続開始時以降に開始された他の相続でも、関係者間の法律関係が確定的な段階に至っていない事案については違憲無効とされた規定の適用を排除して法律関係を確定するのが相当であるとした。
平成25年9月4日最高裁大法廷(非嫡出子相続分違憲決定)
違憲判断の遡及効の限界
違憲判断がなされた場合でも、既に確定的なものとなった法律関係にまで遡及して効力を及ぼすことは法的安定性の観点から相当でないとされる。
違憲審査権の対象
憲法81条は最高裁判所に一切の法律・命令・規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を与えているが、条約は明文で列挙されていない。
違憲審査制の類型と最高法規性
抽象的違憲審査制と付随的違憲審査制のいずれを採用するかは、憲法の最高法規性から当然に導かれるものではなく、各国の制度設計に委ねられる。
合憲限定解釈の意義
合憲限定解釈は、合憲性が争われている法令について法令違憲との判決を下すことを回避する手段の一つである。
合憲限定解釈の意義
合憲限定解釈は、法令の合憲性が争われた場合に法令の適用範囲を限定することにより法令違憲の判決を回避する解釈手法の一つである。
合憲的適用と法令違憲の関係
当該事案への適用が合憲的であることが明らかな場合でも、法令に合憲的に適用できる部分と違憲的に適用される可能性のある部分とが不可分の関係で含まれているときは、法令自体の違憲性が審査され、法令違憲と判断される余地がある。