条文・判例・学説を体系的に整理
公訴時効の起算点
住居侵入罪は、侵入した時に成立し退去するまで継続する犯罪であるから、その公訴時効は、侵入した時からではなく、退去して犯罪行為が終わった時から進行する。
牽連犯と公訴時効の停止
共犯者に対する傷害の起訴が公訴事実の同一性のある牽連犯としての住居侵入を含む場合、その公訴提起による時効停止の効力は当該住居侵入及び他の共犯者にも及ぶ。
昭和56年7月14日最高裁第三小法廷刑集35巻5号497頁(公正証書原本不実記載、同行使)
公訴棄却と時効停止
検察官が被告人らを起訴したが、いずれに対しても所定の期間内に起訴状の謄本が送達されず、公訴が棄却された場合であっても、公訴提起の効力が遡って失われるものではなく、公訴時効は停止していたことになる。
昭和55年5月12日最高裁第二小法廷刑集34巻3号185頁(道路交通法違反、業務上過失傷害)
共犯者への公訴時効停止の効力
検察官が共犯者との共謀による住居侵入、傷害の事実により被告人を起訴した場合、当該共犯者についても、公訴時効が停止する。
海外渡航と公訴時効停止
被告人らが犯行後に海外に渡航していた場合、一時的な渡航であっても、その間、公訴時効は停止する。
平成21年10月20日最高裁第一小法廷刑集63巻8号1052頁(詐欺被告事件)
公訴棄却と時効停止の終了時点
公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、公訴棄却の裁判が確定した時から再びその進行を始める。
死刑に当たる罪と公訴時効
人を死亡させた罪であって拘禁刑以上の刑に当たるもののうち、死刑に当たる罪については、公訴時効は適用されない。
殺人罪と公訴時効
殺人罪は死刑に当たる罪であり、人を死亡させた罪であるため、公訴時効が適用されない。
強盗致死罪と公訴時効
強盗致死罪は死刑に当たる罪であり、人を死亡させた罪であるため、公訴時効が適用されない。
保護責任者遺棄致死と公訴時効
保護責任者遺棄致死罪は人を死亡させた罪であるが、死刑に当たる罪ではないため、一定の期間を経過することによって公訴時効が完成する。
傷害致死罪と公訴時効
傷害致死罪は人を死亡させた罪であるが、死刑に当たる罪ではないため、一定の期間を経過することによって公訴時効が完成する。
殺人未遂罪と公訴時効
殺人未遂罪は死刑に当たる罪であるが、人を死亡させた罪ではないため、一定の期間を経過することによって公訴時効が完成する。
訴因変更と公訴時効
起訴済み事実と一罪関係にあるとして追加された事実は、後に併合罪関係と判明して訴因変更許可が取り消されても、訴因変更請求時に公訴時効の進行が停止する。
平成18年11月20日最高裁第三小法廷刑集60巻9号696頁
公訴時効と休日の算入
公訴時効期間の満了日が休日に当たる場合でも、これを期間に算入する。
公訴時効の起算点(結果犯)
結果犯で実行行為の終了後に結果が発生した場合、公訴時効は結果が発生して犯罪が終了した時から進行する。
昭和63年2月29日最高裁第三小法廷刑集42巻2号314頁(業務上過失致死、同傷害)
公訴棄却後の時効再進行
起訴状謄本が2か月以内に送達されなかったため公訴が棄却された場合、時効は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
共犯と時効の停止
共犯の1人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。
公訴時効の実体法説
公訴時効の根拠を時間の経過による可罰性の消滅に求める見解(実体法説)に対して、刑の軽重により公訴時効期間が異なることを説明できないとの批判は当たらない。
公訴時効の訴訟法説
公訴時効の根拠を時間の経過による証拠の散逸に求める見解(訴訟法説)に対しては、犯人が国外にいる場合に公訴時効がその進行を停止すること(255条1項)を説明しにくいとの批判がある。
公訴時効の新訴訟法説
公訴時効の根拠について、時間の経過により長期間訴追されなかった被告人の法的地位の安定を図る必要があるとする見解があり、この見解に対しては、被告人の法的地位の安定は正当な利益ではなく公訴時効制度の反射的利益にすぎないとの批判がある。