条文・判例・学説を体系的に整理
即時強制の意義と具体例
即時強制とは、行政上の目的を達成するために国民の身体又は財産に対して加えられる行政主体による実力行使であり、消火活動のための土地の使用、感染症の病原体に汚染された場所の交通制限・遮断、警察官が現行犯逮捕をする際の武器の使用等がその例として挙げられる。
即時強制と直接強制の区別
直接強制は相手方への義務の賦課が先行しその不履行を前提として実力行使されるのに対し、即時強制は相手方への義務の賦課を前置することなく直接に身体又は財産に実力を加えて行政目的を達成する手段であり、義務の賦課が先行することのない点に特徴がある。
鉄道施設からの退去強制と即時強制
公務員である鉄道公安職員が鉄道施設に立ち入り座り込むなどした労働組合員を実力で退去させた事案において、最高裁大法廷判決の多数意見は、鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客等を退去させるに当たっては、自発的な退去に応じない場合又は危険が切迫する等やむを得ない事情が認められる場合には、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとして、退去強制行為の適法性を肯定した。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻3号418頁(住居侵入、公務執行妨害)
条例による即時強制
行政代執行法は、地方公共団体が条例に基づき即時強制を行うことを禁止する明文の規定を置いていない。
即時強制と法律の根拠
行政庁が行政処分により私人に義務を課すことができる旨が法律に定められていても、即時強制を行うことができる旨が法律に定められていなければ、行政庁が行政処分を経ずに当該義務の内容を実現する即時強制を行うことは認められない。
即時強制と比例原則
行政上の即時強制は、義務を命ずる暇のない緊急事態において行われるものであっても、いわゆる警察比例の原則(比例原則)の適用を受ける。
行政代執行法と即時強制
行政代執行法は行政上の義務の履行確保に関する規定であり別に法律で定めるものを除いては同法の定めるところによるとしているが条例に即時強制の手法を定めることは許される。
代執行における抵抗排除規定
代執行に現場で抵抗する場合に行政庁が抵抗を排除するために執り得る措置を定める規定は行政代執行法に置かれていない。
直接強制の法律の根拠
行政上の直接強制は、義務者の身体又は財産に直接実力を加えるものであるから、個別の法律の根拠を必要とする。
継続的性質を有する即時強制と審査請求
即時強制として行われた継続的性質を有する公権力の行使に当たる事実行為は、行政不服審査法上の「処分」に含まれ、その違法を争うために、行政不服審査法による救済手続によることができる。
即時強制の定義
行政上の即時強制は、義務の不履行を前提とせず、目前急迫の障害を除く必要上、直接、国民の身体又は財産に実力を加える作用である。
公衆浴場の立入検査と令状の要否
公衆浴場法6条1項の立入検査は、裁判官の発する令状なしに行うことができ、営業者は令状の提示がないことを理由に立入りを拒否することはできない。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
公衆浴場の立入検査と実力行使の限界
公衆浴場法6条1項の立入検査は、9条の罰則により間接的に受忍が強制されるにとどまり、相手方が立入りを拒否した場合に、職員が実力を行使して排除し立入りを実現することはできない(実力行使を認める規定がない)。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
行政上の強制執行と即時強制の区別
行政上の強制執行は義務の不履行を前提とするものである点において、義務の不履行を前提とせずに行政上必要な状態を直接に実現するための強制手段である即時強制と区別される。