2026年 司法試験 論文式 倒産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕 (配点:50)
次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和8年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事 例】
A社は、リゾートホテルとレジャー施設を運営する株式会社である。A社はもともと温泉旅館を営んでいたが、A社の代表取締役Bの方針で温泉旅館をリゾートホテルに建て替えてリゾートホテル事業を運営し(以下「ホテル事業」という。)、また、近隣の土地を取得してレジャー用の建物を建設し、レジャー施設の運営もしてきた(以下「レジャー施設事業」という。)。
レジャー施設事業は、老朽化したレジャー施設の人気低迷、維持管理費用の増加等の原因から赤字が続いていた。さらに、ホテル事業も、令和2年頃から、新型の感染症の影響によりホテル利用者が減少し、業績が悪化していた。A社は、令和6年に赤字であったレジャー施設事業を廃止し、レジャー施設を閉鎖して(以下、閉鎖後のレジャー施設を構成する土地建物を「本件不動産」という。)、ホテル事業に集中した。しかし、ホテル利用者数の回復には至らず、資金繰りが悪化したことから、A社は、令和7年3月15日に再生手続開始の申立てを行い、同月31日に再生手続開始の決定を受けた。
A社は、スポンサーの支援によりホテル事業の再生を図るため、スポンサー選定の手続を進め、ホテル運営のコンサルティング業を行うC社をスポンサー候補とした。A社及びC社は、協議の結果、C社には旅館業の許可がないことから、ホテル事業の運営は、引き続きA社が行う方針を決定した。これを受け、C社から1億円の出資による支援を行う旨の意向が表明され、その際、C社は、本件不動産の維持管理には、月額約300万円の費用が必要となることから、本件不動産の売却を支援の条件とした。A社は、本件不動産の売却を進め、買受希望額1億円を提示してきたD社との間で、本件不動産に設定された抵当権の抹消を条件とする不動産売買契約を締結した(以下「本件売買契約」という。)。
A社は既に債務超過の状況にあり、C社のスポンサー支援を前提に再生計画案の作成を検討しているが、C社の1億円の支援額では債務超過を解消することはできず、再生債権者に対して債務免除を要請せざるを得ない状況にある。
【事 例(続き・1)】
本件不動産には、甲銀行の第1順位の抵当権及び乙信用金庫の第2順位の抵当権が設定されており、再生手続開始時点で甲銀行の被担保債権額は7500万円、乙信用金庫の被担保債権額は5000万円であった。A社は、本件売買契約の売買代金1億円は妥当な金額であると考え、甲銀行に7500万円全額、乙信用金庫に2500万円を弁済するのと引換えに抵当権の抹消を要請していた。
これに対し、甲銀行は抵当権の抹消に同意したが、乙信用金庫は、本件不動産は建物解体撤去費用を考慮しても住宅地に転用が可能な物件であり、市況を見ながら時間をかけて売却を進めれば、1億2500万円以上の値段で売却することも可能であると考え、抵当権の抹消に同意せず、双方協議が進展しなかった。そこで、A社は、本件不動産について裁判所に担保権消滅許可の申立てを行った。
〔設問1〕
A社の担保権消滅許可の申立てが認められるかについて、A社の主張及びこれに対する乙信用金庫からの反論も踏まえて論じなさい。
【事 例(続き・2)】
A社の資本金は5000万円である。A社の発行済株式総数は2000株であるが、このうち、Bが1200株、Bの姉が600株、近隣の温泉旅館10社が各20株の株式を保有している。Bの姉はBの従来の経営方針に反発があり、近隣の温泉旅館10社はA社の経営にはあまり関心を示していない。
A社は、発行済株式総数2000株全てを既存の株主から取得し、株式全部の消却を行い、資本金5000万円の減少を行うとともに、新たに普通株式1株につき金5万円で普通株式2000株の募集を行い、C社に全ての普通株式を引き受けさせて1億円の払込みを受けることにより、株主の交代と減増資を図る方法を検討している。
〔設問2〕
A社は、【事例(続き・2)】記載の株主の交代と減増資を行うため、民事再生法上どのような手続を採ることができるか。また、その手続が民事再生法に設けられた趣旨について、再生手続における株主の地位を踏まえて説明しなさい。なお、定款変更は必要がないものとする。
【事 例(続き・3)】
E社は、創業40周年記念パーティーを令和7年4月7日に開催するため、同年3月1日付けでA社との間でホテルの宴会場を利用する旨の契約を締結し(以下「本件利用契約」という。)、契約時に料金500万円の一部200万円を支払っていた。ところが、A社は、再生手続開始直後の混乱からパーティーを催行するのに必要な食材や人材等を確保できなかったため、同年4月3日付けで本件利用契約を解除した。その後、E社は、裁判所から再生債権届出書が送付されてきたことから、A社に対する本件利用契約の解除による既払料金200万円の返還請求権を再生債権として、債権届出を行った。A社は、E社の債権届出額全額を認め、再生手続においてE社の再生債権額が200万円に確定し、このことを前提に再生計画案を作成した。再生計画案によれば、再生債権の5パーセント相当額を弁済するものとされていた。A社の再生計画案は、裁判所により決議に付する旨の決定がされ、可決された。裁判所は、再生計画認可の決定をし、同決定が確定したが、その後、E社は、既払料金200万円の全額の支払をA社に対して求めてきた。
〔設問3〕
E社のA社に対する既払料金200万円全額の返還請求が認められるかについて、E社の主張と、これに対するA社からの反論にも言及しつつ論じなさい。
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。