2026年 司法試験 論文式 国際関係法(私法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
以下の設問への解答に当たっては、法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)を「通則法」と略記して差し支えない。
A男(甲国籍)とB女(甲国と日本の重国籍)は、いずれも生まれてから継続して甲国に常居所を有していたところ、甲国において知り合い、甲国法に基づき婚姻した。AとBは次第に不仲となり、婚姻挙行から3年が経過した時点でその婚姻関係は実質的に破綻したものとなった。
以上の事実を前提として以下の設問に答えなさい。なお、各設問は独立した問いであり、全ての設問において、反致及び国際裁判管轄権については検討を要しない。
〔設問1〕
甲国法には以下の規定があるものとする。
第P条
⑴ 事実上の別居とは、夫婦が2年間継続して別居していることをいう。
⑵ 合意による別居とは、婚姻挙行から2年が経過した後に夫婦が合意の上で裁判所に申し立て、判決で認められることをいう。
第Q条
⑴ 夫婦の一方は、第P条⑴の場合には、直接裁判所に対して離婚を申し立てることができる。
⑵ 夫婦は、第P条⑵の判決が確定してから6か月が経過した場合には、合意による離婚をすることができる。この場合において、夫又は妻は、その所在地の身分登録役場に離婚する旨を届け出なければならない。
A及びBは、甲国法に基づき、甲国裁判所に対して合意による別居を申し立て、その申立ては判決で認められ、確定した(この判決は日本において効力を有するものとする。)。当該別居判決が確定してから8か月後、Bは仕事の関係で日本へ転居することとなり、それを契機としてA及びBの間で離婚の意思を確認したところ、いずれも離婚することに合意した。Bは転居後の住まいを探す目的で日本に数日間滞在中に、日本において日本法に基づき協議離婚の届出を提出した。この場合に、A及びBの離婚届は受理されるかを論じなさい。
〔設問2〕
A及びBは、甲国裁判所の判決により離婚した(この判決は日本において効力を有するものとする。)。Bは、離婚前から、日本にも生活の拠点を置くようになり、C男(日本国籍、日本に常居所を有する。)と交際するようになっていたところ、離婚から150日後に日本においてCとの間の子であるDを出産した。Bは、その後、主に日本において、Cと協力しながらDの養育を行っている(BとCは婚姻をしていない。)。Aも、Bとの離婚後、日本に転居をしていたことから、Dの出生は出生直後に知っていたものの、何らの対応をしなかった。BもCも、DがBとCとの間の子であることは認識していたところ、Bは知人からこのままだとDがAの嫡出子となるのではないかと忠告された。甲国法に以下の規定があるとして、以下の小問に答えなさい。
第R条:婚姻中に出生した子は母の夫の嫡出子と推定され、婚姻解消後300日以内に出生した子は当該婚姻にかかる母と夫の嫡出子と推定される。
第S条:嫡出否認の訴えは、母又は第R条の規定により嫡出子の父と推定される者が提起するものとし、その訴えは子の出生の翌日から90日以内に提起しなければならない。
〔小問1〕
DはAとBの嫡出子と推定されるかを論じなさい。
〔小問2〕
DがAとBの嫡出子と推定されるとする。Bは、子の出生から6か月経過した時点で、Aを相手方として日本の家庭裁判所に嫡出否認の調停を申し立てたが、当該調停が不成立に終わったため、同裁判所に嫡出否認の訴えを提起した。このBの訴えは適法かを論じなさい。
〔設問3〕
AとBには婚姻から6か月後に子E(甲国と日本国の重国籍)が生まれていた。AとBは、甲国裁判所の判決により離婚をし(この判決は日本において効力を有するものとする。)、EについてはAが単独親権者として養育するものとされた。なお、離婚後、Bは甲国籍を選択して重国籍状態を解消し、その後AとEは甲国に常居所を、Bは日本に常居所を有することとなった。Eが16歳となった頃、Aは病気にかかり仕事を辞めざるを得なくなったため、BにEの扶養料を支払ってほしいと考えるに至った。甲国法の内容が以下のとおりであるとして、Aが日本の家庭裁判所に審判を申し立て、Bに対してEの扶養料を請求した場合に、この請求は認められるかを論じなさい。
第T条:親は未成年の子の扶養義務を負う。
第U条:年齢16歳をもって成年とする。
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。