2026年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
〔第1問〕(配点:50)
A国内で出生したXは、出生時にはA国国民であったが、B国国民であるYと結婚した後、B国の国籍法に従ってB国の国籍を取得し、それに伴い、A国の国籍法上、A国の国籍を喪失した。Xは、国籍を変更した後、B国内に居住していたが、別荘等の財産を所有しているC国に短期間滞在することもあった。XがC国に滞在していた時に、C国の大統領が核開発を進める政策を発表し、C国内で大規模な抗議運動が発生した。核開発に反対する団体に所属していたXが、この抗議運動に参加したところ、C国政府は、実力を行使して抗議運動を鎮圧するとともに、抗議運動に参加したXの財産を没収する措置を執った。C国の法制度では、C国政府の措置によって損害が生じた場合に、被害者がC国国民であれば、救済を求めて利用できる手段がいくつかあるが、いずれの手段についても、外国人は利用できないと規定されている。
C国の当局は、この抗議運動のリーダーの一人であったA国国民のPを逮捕するために捜査を行ったが、PはD国に逃亡していることが判明した。C国の当局は、C国の刑法上の内乱の罪について訴追するためにPの引渡しをD国に請求することを決定した。
E国に派遣されているC国の外交官Qは、核開発の推進政策の発表やそれに対する抗議運動への対処により世界的な注目を集めるようになったC国の国内事情について、講演をする用意があるとE国の新聞社甲に申し出た。Qからの申出を受けて、甲はQに講演を依頼することにしたが、Qは、「この講演は個人的な利得を目的とするものである。」と言い、講演料を事前にQ個人の銀行口座に振り込ませた。ところが、講演会の当日、Qは会場に現れず、甲主催の講演会は中止になった。講演料の返金にQが応じなかったため、甲はQを被告として民事訴訟を提起した。Qは、「国際法上、私は民事裁判権からの免除を享有する。」と主張したが、E国の国内裁判所は、「Qは本件訴訟についてE国の民事裁判権からの免除を享有しない。」と判示した。C国とE国は、いずれも外交関係に関するウィーン条約の当事国である。
以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
C国によるXの財産の没収に関し、B国がC国に対して外交的保護を行使することができるかについて、国が外交的保護を行使するための国際法上の要件を踏まえて論じなさい。ただし、C国によるXの財産の没収は国際違法行為であるものとする。
〔設問2〕
D国は、国際法上、C国に対してPを引き渡す義務を負うかについて、C国とD国との間で犯罪人引渡条約が締結されていない場合と締結されている場合に分けて論じなさい。
〔設問3〕
甲がQを被告として提起した民事訴訟において、Qが、「国際法上、私は民事裁判権からの免除を享有する。」と主張したのに対し、E国の国内裁判所が、「Qは本件訴訟についてE国の民事裁判権からの免除を享有しない。」と判示したのは、どのような理由に基づいていると考えられるかについて論じなさい。
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。