2026年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50点)
【設 例】
化学製品甲は、日用品や工業用機械などに広く用いられ、汎用性が高く、差別化されていない製品である。日本国内における甲の主要なメーカーは7社(以下「7社」という。)であり、それぞれの甲の国内市場向け販売シェアは、A社が30パーセント、B社が20パーセント、C社が20パーセント、D社が15パーセント、その他3社と輸入の合計が15パーセントとなっている。甲の輸入は従来2パーセント未満であったが、近年、安価な輸入品が増加してきている。その他3社の甲の製造設備は小規模なものであり、生産を拡大する余力はない。
原材料として甲の製造に必要である化学物質αは、国内では主要10社によって製造されている。αは、物質特性上、長時間の輸送が難しく、かつ、国産のαが高品質であるため、輸出入はほとんどない。αのほとんどは、甲の製造に用いられており、他製品の製造に転用される可能性は技術的理由から限られている。このため、主要10社は、製造したαのほぼ全量を7社に供給している。
7社のいずれにおいても、αの購入費用は、甲の製造費用の80パーセント程度を占めており、甲の製造費用は製品価格の60パーセントから70パーセント程度となっている。
甲の市況価格は堅調に推移していたが、近年、世界的に供給が増加しており、それに応じて国内価格の低下も続いている。これに対して、αの価格は上昇基調で推移している。このため、7社の間では、甲の製造費用の80パーセント程度を占めるαの価格引下げを望む声が高まっていた。
⑴ 前記事情に鑑み、令和2年5月以降、B社とC社は、B社の提案に基づいて、α購入の合理化について協議を重ね、αの購入に当たり、次の方針①及び②を採ることを合意した。
方針① αの供給者との取引交渉をB社に統合(一元化)し、B社が、B社及びC社のαの購入希望数量を集約し、集約した購入希望数量を確保しながら、複数の供給者から最も合理的な供給者を選択しαを購入する。
方針② B社及びC社の前年度の平均購入価格(以下「目標上限値」という。)以下の価格で各供給者と交渉する。
B社及びC社は、かかる方針に基づいてαの購入を試みたが、ほとんどの取引において、「目標上限値」以下の価格でαを購入することはできなかった。
⑵ そこで、令和2年9月、B社の調達責任者は、C社の調達責任者と相談の上、A社の調達責任者を訪ね、方針①及び②について説明し、これらの方針に同調するよう依頼した。A社の調達責任者は、「目標上限値」がA社にとっても有利であったことから、方針②の「目標上限値」以下の価格で各供給者と交渉することについてはその場で同調する意思を示したが、方針①の取引交渉の一元化については、社内調整が困難であることを理由に参加しない旨を伝えた。
A社は、同年10月以降、方針②に基づき各供給者との交渉を開始している。
その後、A社、B社及びC社は、大多数の取引について「目標上限値」以下の価格でαを購入するに至っている。
なお、A社、B社及びC社は、甲の製造・販売については、従来どおりそれぞれ独自に行っている。
⑶ 令和2年12月頃、C社においてたまたま前記⑴及び⑵の取組を知っていた担当外の従業員は、個人的に親しかったD社の調達責任者との私的な会食中、D社の調達責任者が、甲製品の価格が低迷しているためD社も苦労していると語ったことを受けて、A社、B社及びC社が、方針②に基づいて「目標上限値」以下の価格で各供給者とαの購入交渉を行い、成功していることを伝えた。
D社は、従来、B社及びC社が定めた「目標上限値」を上回る価格でαの購入交渉を行っていたが、前記C社の従業員の話を聞いた後、「目標上限値」以下の価格でαの購入交渉を行ったとしても供給者を失うことはないと考え、令和3年1月以降、各供給者と「目標上限値」以下の価格でαを購入する交渉を行い、そのうち相当数は成功している。
〔設 問〕
前記【設例】の⑴ないし⑶の各段階における各社の行為が独占禁止法上どのように評価されるかを論ぜよ。
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。