司法試験論文式過去問演習

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2026年 司法試験 論文式 経済法 第1問

問題

配点 50点

[経 済 法]

〔第1問〕(配点:50点)

A社は、家庭用及びオフィス用の電子機器を製造する電子機器メーカーである。A社が製造する電子機器のうち、オフィス向けに製造され、特定の事務処理を専門に行う電子機器甲(以下「甲」という。)は、販売代理店を通じてユーザーである企業に販売され、メンテナンス等も販売代理店により行われている。甲を製造する事業者はA社のみであるが、甲と機能及び効用が類似したパソコン用ソフト(以下「甲型ソフト」という。)を製造するA社以外の者も複数存在し、甲と甲型ソフトを併せた市場におけるA社のシェアは25パーセントである。なお、甲型ソフトを利用するには周辺機器も必要になるが、それらの周辺機器は汎用機器である。甲の方が甲型ソフトよりもユーザーにとっての利便性は高いが、甲型ソフトの導入に必要な全費用は、周辺機器の購入費用を含めても、甲よりも安価であるため、新規ユーザーの大多数は甲型ソフトを選択している。他方で、甲の既存ユーザーは、甲の機能を極めて高く評価しており、甲型ソフトへの移行には新たな使用手順の習得が必要で、データ移行にも非常に手間がかかるという事情から、その価格差にもかかわらず、買換え期において甲から甲型ソフトへ移行するユーザーは少数にとどまっている。

甲の販売代理店は、甲の販売先であるユーザーを顧客登録して管理し、ユーザーの仕様に合わせたカスタマイズ作業や、操作指導、メンテナンス等のアフターフォローを行っている。また、甲を使用するとユーザーのデータが蓄積されるが、ユーザーが買換えを行う際には、甲を販売した販売代理店がデータを移行させる作業を行っている。なお、A社は甲の販売代理店に対して販売促進のため、卸価格の3パーセントを払い戻す、いわゆるリベートを提供している。

甲は、新規ユーザーが極めて少なく、買換え需要がほとんどのため、甲の需要は頭打ちの状況にある。そのため、甲の販売代理店の中には、安値売り込み等によって、ユーザーに対して他の販売代理店からの変更を働きかける者もいる。このため、甲の多くの販売代理店は長年フォローしてきた顧客が奪取されることを懸念し、A社に対して販売代理店の変更を伴う販売活動について何らかの制約を加えるよう求めている。

これに加えて、以下の設例のような事情があったとする。なお、【設例1】と【設例2】はそれぞれ独立している。

【設例1】

こうした甲の販売代理店の要望を受け、A社で検討したところ、甲の販売活動の中でも安値売り込みが販売代理店の変更の主たる原因だと考えるに至った。A社は、従来の販売価格の水準でもユーザーの需要は十分に確保できていたにもかかわらず、安値売り込みを行うことは甲の販売代理店をいたずらに疲弊させるだけだと判断した。そこで、A社は、それを防ぐため、従来の販売価格の水準で推奨価格を設定し、それを下回る価格での甲の販売を行った販売代理店には従来支払っていた3パーセントのリベートを支払わないとの方針を決定し、これを甲の販売代理店に通知した。その後、安値売り込みを行っていた甲の販売代理店の多くは、推奨価格を下回る価格での甲の販売を行わなくなった。

【設例2】

こうした甲の販売代理店の要望を受け、A社では以下の⑴ないし⑶の方針を決定し、これを甲の販売代理店に通知した。

⑴ 販売代理店が、甲の売り込みを行い、他の販売代理店の登録顧客と新たに取引することとなる場合、当該売り込みを行った販売代理店は、契約を締結する前に、当該登録顧客から、販売代理店の変更を希望する理由を記載し、署名捺印した書面を提出してもらい、これをA社に提出し、A社の販売責任者の確認の通知を待って甲を販売するものとする。なお、この確認の通知は、書面の提出から3日以内に行うものとする。

⑵ A社は、当該登録顧客がもともと取引していた甲の販売代理店に対し、当該書面に基づきユーザーが述べる変更希望理由を説明する。

⑶ 書面の提出なしに他の販売代理店の登録顧客に甲を販売した場合は、通常の場合に認められていた3パーセントのリベートを支払わない。

A社は、この方針を実施するに当たり、甲の販売代理店に対して、「ユーザーから変更を希望する理由を明示してもらえれば、当該ユーザーの登録先の販売代理店に対してその理由を説明することができ、それによってサービス内容の向上が期待できる。」と述べた。

なお、A社が方針を策定する段階での調査過程で、ユーザーの中には書面の提出を煩わしいと思う者が多数存在することが判明している。他方で、他の販売代理店との契約の締結前に変更を希望する理由の説明を受けることができれば、他の販売代理店からの売り込みに対抗するため、新たな価格提示等の対応策を迅速に打ち出せると考える甲の販売代理店が多数いる。

〔設 問〕

【設例1】と【設例2】におけるA社の行為について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点を分析して検討しなさい。

出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。