2026年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の【設例】を読んで、設問に答えなさい。
【設 例】
国立公園Aは、標高約1500メートルの火山の中腹にある原生林とその中心にある湿原及び山麓に広がる草原Bの風景の雄大さが評価されて、昭和初期に国立公園に指定され、多くの観光客が訪れている。この原生林と湿原のエリア(以下「原生林エリア」という。)は、自然公園法に基づいて、国立公園の第一種特別地域に指定されており、希少な動植物種も生息している。年間を通じて、多くの観光客が原生林エリアを巡るトレッキングを楽しんでいたが、木の根や下草の踏み付けなど自然環境に看過できないダメージが生じていたので、環境大臣は、原生林エリアの一部を利用調整地区(同法第23条)に指定した。
草原Bは、数百年にわたり牛や馬の放牧地として利用されており、のどかで雄大な風景を形成し、自然公園法に基づいて、国立公園の第三種特別地域に指定されている。草原Bは、牧野組合C(農地所有適格法人である農事組合法人)が所有し、毎年、春先に火入れ(野焼き)をして維持・管理されてきた。しかし、近年、牧畜業の不振と組合員である牧畜農家の高齢化とがあいまって、年々、火入れ面積が減少し、多年草や低木の侵入を招き、牧草地の面積も縮小してきていた。草原Bの草原風景を回復することは、環境大臣が定めた国立公園Aの生態系維持回復事業計画(同法第38条)にも記載されている。
原生林エリアと草原Bとの間には、以前は薪炭林として利用されていた手入れの行き届いた雑木林Dが存在し、自然公園法に基づいて、国立公園の第二種特別地域に指定されている。
〔設問1〕
自然公園法上の自然公園は、都市公園法上の都市公園とは異なり、地域制公園(ゾーニング公園)である。このことが、自然公園を通じた自然環境の保全に対して有する利点と弱点を、憲法第29条も踏まえて説明しなさい。
〔設問2〕
長年にわたる牧畜業の営みによって、人為的に形成、維持・管理されてきた草原Bが国立公園の特別地域として保護される理由について、生物多様性条約の理念を反映した自然公園法の改正も踏まえて説明しなさい。
〔設問3〕
国立公園Aで長年にわたり環境保護活動をしてきたNPO法人Eは、風景地保護協定(自然公園法第43条)を利用して草原Bの草原風景を回復・維持したいと考えている。
⑴ 風景地保護協定制度について、利用調整地区制度と対比した上で、内容を説明しなさい。
⑵ NPO法人Eは、どのような内容の風景地保護協定を結ぶと予想されるか説明しなさい。
〔設問4〕
Xは、雑木林D内に、草原Bから原生林エリアに続く道路に面する約3万平方メートルの土地を所有している。このうち約8千平方メートルについては、2年前の落雷によって発生した小規模な山火事により、樹木の全てが焼失していた。Xは、保護すべき自然が失われたと考え、樹木が焼失した土地を使って、木造平屋建て貸別荘5棟(各棟の建築面積100平方メートル)を建設して収益を上げることを計画した。Xは、周辺の雑木林の風景と調和し、建ぺい率規制等の自然公園法第20条第4項に基づいて自然公園法施行規則によって定められた全ての許可基準に適合した建物・敷地を設計するように建築士らに依頼した。Xは、環境大臣に、建築士らが上記依頼に沿って作成した図面を添付して、自然公園法第20条第3項の許可を申請した。環境大臣は、樹木が焼失した土地も周囲と同様の雑木林として再生されるべきであると判断して、これを不許可とした。そこで、Xは、環境大臣に、準備費用と逸失利益について損失補償を請求した(同法第64条)。しかし、環境大臣は、補償すべき金額を0円とする決定をした。これに対して、Xは、国を被告として、補償すべき金額の増額を求めて訴えを提起した(同法第65条)。
⑴ 国の立場から、補償すべき金額を0円とすることが相当であることについて論じなさい。
⑵ Xの立場から、国の主張に対する反論を説明しなさい。
【資 料】
〇 自然公園法施行規則(昭和32年厚生省令第41号)(抜粋)
(特別地域の区分)
第9条の12 国立公園又は国定公園に関する公園計画のうち、保護のための規則に関する計画を定めるに当たつては、特別地域(特別保護地区を除く。以下同じ。)を次の各号のいずれかに掲げる地域に区分するものとする。
一 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であつて、現在の景観を極力保護することが必要な地域をいう。)
二 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であつて、特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域をいう。)
三 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であつて、特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域をいう。)
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。