2026年 司法試験 論文式 知的財産法 第1問
問題
配点 50点[知的財産法]
〔第1問〕(配点:50)
光学フィルム用合成樹脂の開発、生産、販売等を業とする中小企業X1社の従業員Zは、X1社の社長の指示で新たな合成樹脂の研究開発業務に従事し、従来技術にない画期的な発明(以下「本件発明」という。)を完成させた。X1社の職務発明規程には、従業員が職務発明を完成させた場合にはその内容をX1社に報告すること、X1社がその職務発明について特許を受ける権利を承継するか否かを検討し、これを承継すると決定した場合には、その旨を従業員に通知した時点で X1社が特許を受ける権利を承継することが定められていた。この職務発明規程は従業員に開示されており、Zもその内容を知っていたものの、その策定に対する事前関与はなかった。X1社による一方的な定めに不満を持っていたZは、X1社が本件発明に係る特許を受ける権利の承継について検討している最中に、この権利をX2社に譲り渡した。その後、X1社はこの権利を承継する旨を決定し、これをZに通知した。
X1社は、Zからの報告内容に従って、本件発明について特許出願を行った。特許請求の範囲には、「A、B、C及びDの中から選ばれる少なくとも1種のアクリル樹脂と、分子量600以上の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物」と記載されている。しかし、明細書の発明の詳細な説明欄には、紫外線吸収剤の分子量について、これを558としたものでは本件発明の作用効果が得られないものの、これを656としたものではその作用効果が得られた旨の実験結果のみが記載され、それ以外の分子量については実験を行った旨の記載がなく、600という数値はZが任意に定めたものであった。一方、X2社も、X1社の出願日より後に、特許請求の範囲を同じくする特許出願を行ったところ、X1社による出願を先願として特許法第39条第1項によりその出願は拒絶された。そして、X1社には、本件発明について特許権(以下「本件特許権」という。)が付与された。本件特許権の設定登録日は令和5年8月25日、特許公報の発行日は同年11月10日である。
他方、同じく合成樹脂の開発、生産、販売等を業とするY社は、令和5年10月23日以降、「アクリル樹脂A及びCと、分子量599の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物」(以下「Y製品」という。)の製造販売を行っている。これを知ったX1社がY製品を分析したところ、本件発明と同一の作用効果を発揮していることが確認された。
以上の事実関係を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。
〔設問1〕
X2社は、X1社に対し、いかなる請求をすることが考えられるか。その請求が認められるかについても、考えられるX1社の反論を踏まえて論じなさい。ただし、無効審判請求について論じる必要はない。
〔設問2〕
X1社は、本件特許権に基づき、Y社に対し、Y製品について製造販売の停止及び廃棄の請求並びに損害賠償請求を行った。これらの請求は認められるか、考えられるY社の反論を踏まえて論じなさい。ただし、損害額について論じる必要はない。
出典:法務省「2026年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。