2025年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A国沿岸には、沿岸(基線)から20海里離れた地点に、A国が領有するX島が所在している。諸国の船舶は、A国沿岸付近を航行する際には、X島とA国本土との間の海峡(以下「X海峡」という。)を航行することもあれば、X島からA国本土と反対の海側に12海里以上離れた水路を航行することもあった。
A国は、海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)に加入しているが、同条約への加入の際、「いかなる外国の軍艦によるX海峡の航行もA国の平和と安全を脅かすものであり、A国の許可なくX海峡を航行することを認めない。」との宣言を行った。また、国連海洋法条約第287条第1項に従い、紛争解決手段として⒜国際海洋法裁判所を選択する宣言を行った。A国は国連海洋法条約への加入と同時に国内法を制定し、領海を基線から12海里とし、基線から200海里の排他的経済水域を設定した。その結果、X海峡は、A国の排他的経済水域の一部分とA国の排他的経済水域の他の部分との間に位置するA国領海内の海峡となった。
B国及びC国は、X海峡における軍艦の航行に関するA国の宣言に対し、国際法に反するものであり認められないと抗議した。B国は国連海洋法条約の締約国ではない。C国は国連海洋法条約の締約国であり、国連海洋法条約第287条第1項に従い、紛争解決手段として⒜国際海洋法裁判所を選択している。ただし、C国は、国連海洋法条約第298条第1項⒝に基づき、「軍事的活動に関する紛争」については国連海洋法条約第15部第2節に定める手続を受け入れないことを宣言している。
その後、B国及びC国は、X海峡における外国軍艦の通航権を確認するために、両国の軍艦をX海峡に派遣し航行させると発表した。実際にB国及びC国の軍艦がX海峡を航行していたところ、X海峡に設置されていた機雷に触れ、両国の軍艦に大きな損傷が生じ、両国の軍艦の乗組員に多数の死傷者が出た。A国は、A国によるX海峡への機雷の設置は否定しており、A国がそれら機雷を設置したという証拠はない。ただし、当時A国はX海峡を厳格な監視下に置いており、何者かが機雷を敷設しようとすれば、A国に知られることなく行うことはできなかった。
〔設問1〕
国連海洋法条約上、X海峡において外国船舶にいかなる通航権が認められるかについて論じなさい。
〔設問2〕
B国が、B国軍艦がX海峡に設置されていた機雷に触れたことから生じた損害に関してA国の責任を追及する根拠として、国際法上どのような主張が考えられるかについて論じなさい。
〔設問3〕
C国は、C国軍艦がX海峡に設置されていた機雷に触れたことから生じた損害に関するA国の責任を追及するため、国連海洋法条約第286条に従い、国際海洋法裁判所への付託を検討している。本件について国際海洋法裁判所が管轄権を有さないと主張するために、A国は国際法上どのような主張をすることが考えられるかについて論じなさい。
出典:法務省「2025年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。