2025年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の事例を読み、以下の設問に答えなさい。
【事 例】
X農業協同組合(以下「X農協」という。)は、甲地域における農家を組合員とする農業協同組合である。甲地域における農家のほとんどは、X農協に加入している。甲地域は我が国における農産品αの生産地として有名である。甲地域産のαは消費者から高く評価されており、また同地域産のαの出荷量は多く、同地域を唯一のαの生産地域とする乙県のαの売上高は全国のαの売上高の25パーセントを占め、都道府県別出荷量でも圧倒的な一位となっている。
X農協は、組合員からαの販売委託を受け、委託されたαを農業協同組合の連合組織を通じて全国へ販売する事業を行っていた。
αを生産するためには、農業用設備βを調達して使用する必要がある。βは数年程度で更新を行う必要があるが、高価格でもあった。αを生産している組合員の多くは、定評のある甲地域産のαの生産を強化するため積極的にβへの投資を行いたいと考えていたが、そのための資金を融資に頼る必要があった。そこで、X農協にβを調達、更新(以下「調達等」という。)するための融資を強化することを要望した。X農協は、組合員のこのような要望を受けて、地域の特色ある農産品を強化するための国の補助金の制度を利用することとし、国の補助を受けて、組合員にβ調達等のための資金を低金利で貸し付ける業務を数年前から開始した。X農協としても、甲地域におけるαの生産量を増大させ、甲地域産のαの存在感を一層全国で高めることがX農協によるαの販売事業を強化するものと考えて、積極的に融資業務を行ってきた。なお、補助金の支援を受けたX農協以外に低金利で貸付けを行う者はいなかった。そのため、αを生産しているほとんどの組合員は、X農協からβ調達等のための貸付けを受けてαを生産している。
数年前までは、X農協の組合員は、その生産するαをX農協に販売委託して出荷する場合(以下「系統出荷」という。)がほとんどであった。しかし、甲地域でのαの生産が多くなるにつれて、X農協以外の専門商社(以下「商系業者」という。)がX農協の組合員からαの販売委託を受け、自己の運営する卸売市場を通じて全国に向けて販売する例が増加していた(このようにX農協の組合員が商系業者に販売委託して出荷する場合を、以下「系統外出荷」という。)。なお、販売委託は、X農協や商系業者がαを販売した金額から一定の手数料等の費用を控除した残額を組合員に引き渡すことをその内容としている。
農家からαの販売委託を受けるためには、生産地の近隣に大規模な出荷拠点を持つ必要がある。そのため、甲地域に所在するαを扱う商系業者は3社だけである。3社は、甲地域産のαが著名になったこともあり、その手数料を軽減するなどしてαの販売委託事業を積極的に拡大することに努めてきた。その結果、近時ではそれぞれ甲地域におけるαの集荷量の10パーセントから20パーセント程度を占めるまでに成長した。そのため、系統出荷における集荷量は55パーセント程度に減少している。
このように商系業者に出荷する組合員が増加してきたため、X農協が貸し付けた資金によって調達されたβで生産したαが商系業者に出荷されることが多くなった。X農協は、甲地域産のα生産の増加は、X農協によるβ調達等のための融資活動やαを販売するための様々な広報活動によるものであり、系統外出荷は全国でαを販売するためにX農協が行ってきた努力にフリーライド(ただ乗り)するものであると考えた。また、系統外出荷が拡大すれば、X農協の全国でのαの販売事業に支障が出ると考えた。そこで、X農協は、β調達等のための融資に当たり、組合員が生産するαのうち、80パーセントまではX農協に出荷することを新たに融資の条件として、融資期間中、この条件を遵守させることを計画している。X農協は、乙県のα出荷量が全国でせいぜい25パーセントを占めるにすぎないため、この計画が独占禁止法に違反することはないと考えている。
組合員においては、X農協以外には同等の低金利融資の貸手が見付からないこともあって、経営基盤の強固な少数の組合員を除いては、X農協の要請を受け入れることが想定されている。要請を受け入れる組合員の出荷量は、今後数年のうちに、甲地域産のα生産量の80パーセントを占めることが想定されている。
〔設 問〕
X農協の計画を独占禁止法上どのように評価すべきか論じなさい。
出典:法務省「2025年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。