2025年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
太陽光発電事業者Aは、B県にある甲川沿いに所有する土地(以下「本件土地」という。)に、太陽光発電施設乙の設置工事の事業を計画している(以下「乙事業」という。)。本件土地は、B県甲川流域保全条例において、甲川の生態系や景観を保全することが重要な地区として指定された区域内にあり、文化財保護法上の重要文化的景観として選定された区域に隣接している。
Aは、乙事業が環境影響評価法(以下「法」という。)の第二種事業に該当するため、法第4条第1項に基づき、乙事業の概要を経済産業大臣に届け出た。
⑴ 経済産業大臣が、乙事業について環境影響評価を行う必要があると判定するのはどのような場合か述べなさい。
⑵ 法に、第一種事業のほかに、第二種事業の類型が設けられた理由を説明しなさい。
〔設問2〕
設問1の手続を経て、乙事業について法の規定による環境影響評価を行うことになったAは、環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)を作成した。Aは、法の規定による環境影響評価の場合、方法書の環境影響評価の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れる必要はないと考えたため、方法書には、これを記載しなかった。この点について住民からの批判的な指摘があることを重く見たB県知事は、臨時の公聴会を開催した。その公聴会の場において、地元の歴史研究者からも同様の指摘がなされたことを受けて、B県知事は、方法書について、環境影響評価の項目に、歴史的・文化的環境についても含めるべきであるとの意見を述べた。Aは、B県知事の意見を取り入れる形で、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法を選定した。
B県議会は、この件を教訓として、法に基づく環境影響評価手続を条例で拡充するための検討を開始した。
⑴ Aが、法の規定による環境影響評価の場合、方法書の環境影響評価の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れる必要はないと考えた理由について、環境基本法の関連規定にも触れつつ説明しなさい。その上で、条例により、法の規定による環境影響評価の方法書の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れることを、事業者に義務付けることが、法に抵触するか否か論じなさい。
⑵ 法の規定による環境影響評価の場合、環境の保全の見地からの意見を有する者の意見について事業者が負う手続的義務は、方法書の段階と環境影響評価準備書の段階ではどのように異なっているか説明しなさい。その上で、条例により、法の規定に基づきB県知事が方法書について環境の保全の見地からの意見を述べるに当たり、公聴会を開催することを、B県知事に義務付けることが、法に抵触するか否か論じなさい。
〔設問3〕
B県甲川流域保全条例は、甲川の生態系や景観を保全することが重要な地区として指定された区域内で工作物の建築等を行う者に対して、B県知事の許可を受けることを義務付けている。そして、同条例は、当該許可の基準の一つとして、工作物の建築等により当該土地及びその周辺における生態系及び景観を著しく悪化させるおそれがないことを定めている。また、同条例は、B県知事が当該許可をしようとするときは、あらかじめ、工作物の建築等が行われようとする土地が属する地域の住民の意見を聴くものと定めている。
Aは、B県知事に対して乙の設置の許可を申請し、B県知事はこれを許可した。
本件土地が属する地域の住民であり、長年にわたって甲川の良好な景観を保全する活動を続けてきたCは、乙の建設及び運営によって甲川の景観が損なわれることを憂慮している。Cが、B県を被告として乙の設置の許可の取消しを求める訴訟を提起する場合、当該訴訟において、訴訟要件に関してどのような主張をすることが考えられるか。解答に当たっては、B県の反論を踏まえつつ、論じなさい。また、問題文中に挙げたもの以外に、条例の内容は考慮しなくてよい。
出典:法務省「2025年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。