2024年 司法試験 論文式 倒産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事 例】
A株式会社(以下「A社」という。)は、ワインの輸入・販売事業とレストラン事業を行っており、レストラン事業においては、複数のレストランを経営しているほか、料理の定期販売サービス(以下「本件定期販売サービス」という。)を提供していた。A社は、毎年12月に本件定期販売サービスの申込みを募集し、同月末日までに代金6万円を支払って本件定期販売サービスに申し込んだ顧客に対して、翌年1月から12か月にわたり、毎月1回、月替わりの料理を宅配便で送付するものとされていた。
A社は、令和3年頃からレストラン事業において赤字が続くようになり、令和4年には、ワインの輸入・販売事業において売上げが低迷するなどして、令和5年1月には資金繰りに窮する状況に陥った。そのため、A社は、同年2月1日に再生手続開始の申立てをした。同申立てを受けた裁判所は、同日、監督命令を発令し監督委員を選任して、同月10日、A社について再生手続開始の決定をした。再生手続開始後、A社は、事業再生の方針として、レストラン事業から撤退し、ワインの輸入・販売事業に集中することを決定した。
〔設 問〕 以下の1及び2については、それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社の申立代理人は、再生計画案の可決見込み等を検討することにした。以下の⑴から⑷までについて解答しなさい。なお、⑵及び⑶では、債権調査手続において、A社は届出再生債権の内容を認め、また、届出をした他の再生債権者からも異議が述べられなかったものとする。
⑴ 民事再生法において再生計画案の可決要件がどのように定められているかについて説明しなさい。
⑵ レストラン事業における取引業者Bは、売掛金500万円、再生手続開始の前日までの遅延損害金10万円及び再生手続開始後から支払済みまで年14.6%の割合による遅延損害金を再生債権として届け出た。この場合において、Bの届出再生債権の議決権額がどのように定められるかについて説明しなさい。
⑶ 海外ワイナリーCは、ユーロ建てで200万ユーロの売掛金について再生債権として届け出た。この場合において、Cの届出再生債権の議決権額がどのように定められるかについて説明しなさい。なお、再生手続開始決定時には1ユーロ140円であったが、その後、急速に円安が進んでいるものとする。
⑷ A社は、令和4年12月、本件定期販売サービスの申込みを募集したところ、1000人から申込みがされ、それぞれから6万円の入金がされた。しかし、A社は、これらの者に対して一度もサービスを提供しないまま、本件定期販売サービスを終了した。
本件定期販売サービスに申し込んだ上記1000人のうち、200人は、それぞれ6万円を再生債権として届け出たが、800人からは再生債権の届出がなかった。
A社は、本件定期販売サービスに申し込んだ者について顧客リストを作成しており、届出のなかった債権についても顧客リストに基づいて再生債権として認めることとした。そして、A社は、799人について、それぞれ6万円を再生債権として自認する旨を認否書に記載したが、顧客リストからの転記ミスがあったため、顧客Dの再生債権だけは認否書に記載されなかった。
この場合に、再生債権の届出がなかった上記800人の再生債権に関し、再生計画案の決議における取扱いや、再生計画認可の決定が確定した場合の取扱いについて説明しなさい。
2.A社は、レストラン事業を始めるに当たり、農家であるEとの間で、継続的売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結していた。本件売買契約においては、A社は、Eに対して生産方法を指定して有機野菜の生産を依頼し、これに基づいて生産された有機野菜を買い取るものとされていた。そして、A社が本件売買契約を解除するには、Eに対して1年前に解除の予告をする必要があり、予告期間が不足する場合にはその不足期間に応じて定められた額(即時解除の場合は1200万円)の違約金を支払う旨の条項(以下「本件違約金条項」という。)が定められていた。
A社は、事業再生方針に従い、監督委員の同意を得た上で、Eに対し、本件売買契約を即時解除する旨の通知をした。同解除通知を受けたEは、本件違約金条項に基づき、1200万円の違約金請求権を有すると主張し、A社の再生手続において、同違約金請求権を再生債権として届け出た。これに対し、A社は、債権調査手続において、同債権を認めない旨を認否書に記載した。
以上の事実を前提に、以下の⑴及び⑵について解答しなさい。
⑴ Eは、上記認否書の記載を争って自らの届出再生債権の存在を主張するために、民事再生法上、どのような手続を採る必要があるかについて説明しなさい。
⑵ A社の再生手続において、Eが再生債権として届け出た違約金請求権は認められるか。A社からの反論を踏まえ、本件売買契約の即時解除について本件違約金条項が適用されるかを検討しつつ論じなさい。
なお、本件違約金条項について公序良俗違反(民法第90条)は考慮しなくてよい。また、Eの生産する有機野菜は容易に他の取引先に販売することができるものであり、本件売買契約が即時解除されてもEには損害が発生しない見込みであるものとする。
出典:法務省「2024年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。