司法試験論文式過去問演習

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2024年 司法試験 論文式 租税法 第2問

問題

配点 60点

〔第2問〕(配点:60)

Aは、平成21年4月に、ある大学の医学部に入学し、平成27年3月に当該大学を卒業し医師免許を取得するまで、医療法人B(以下「B法人」という。)から授業料相当額の甲奨学金(貸与型)を受け、その全額を授業料に充当していた。Aは、平成27年4月から令和2年3月までの間、B法人傘下の病院で常勤の医師として勤務を継続したことにより甲奨学金の返還免除の要件を満たしたため、同月にB法人から甲奨学金の全額300万円について返還免除の決定を受けた。B法人は、この決定により、令和2年3月に、Aに対し、通常の給与に加えて免除益相当額の給与の支払があったものとして処理し、これらの全額に対し源泉徴収を行い、徴収した税額を直ちに国に納付した。なお、Aは、現在に至るまで当該病院で勤務を継続し、毎年確定申告を行っている。

Aの父Cは、製造業を営む株式会社D(以下「D社」といい、その事業年度は暦年である。)の製造部長として勤務していた。D社は、令和元年5月に、生産用機械乙(以下、単に「乙」という。)の製作と設置を、株式会社E(以下「E社」という。)に委託する内容の請負契約を、E社との間で締結した。当該契約では、D社による乙の試運転を経た性能確認(検収)をもって乙の引渡しと所有権移転が完了し、同時に対価が支払われることとされた。Cら従業員は、令和元年11月から試運転として生産工程で乙の利用を開始し、その後も使い続けていたが、乙に不具合が度々生じたため、E社による乙の修理や調整等の対応を要し、乙の正常な動作確認と検収が完了したのは令和2年1月末日であった。同日以降、乙は、特に問題なく、D社の生産工程において稼動している。

令和3年1月にCが死亡した。唯一の相続人であるAが単純承認により承継したCの相続財産には、Cが預託金を預けて取得した丙ゴルフ場の会員権(以下「丙会員権」という。)が含まれていた。丙会員権は、丙ゴルフ場施設の優先的利用権と預託金返還請求権、会費納入義務が一体となった契約上の地位であり、所定の手続を経て譲渡可能とされていた。Cは生前、年会費を納入し、月に二、三回程度、丙会員権を利用して趣味のゴルフを楽しんでいた。もっとも、Aが相続により取得した時点で、丙会員権の時価は、Cがその取得に要した金額を下回っていた。相続後Aは、名義書換料を支払って丙会員権の名義をAに変更し、丙会員権を利用して月に1回程度ゴルフをしたが、もともとゴルフにCほどは興味がなく、どちらかといえば将来の丙会員権の値上がりの可能性や、Cから聞いていた含み損を使った節税策に関心があった。丙会員権は相続後も値上がりに転じる気配がなかったため、令和5年12月に、Aは、丙会員権を第三者に売却して損失を確定させた。なお、Aは令和5年中に給与所得以外に所得を得ておらず、また、同年にAが譲渡した資産は丙会員権のみである。

以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文がある場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の年月日にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。

〔設 問〕

1 Aが令和2年3月にB法人から受けた、甲奨学金の返還免除に係る300万円の経済的利益に関し、B法人が行った源泉徴収は、所得税法に従ったものであるか。

2 仮に設問1における源泉徴収が所得税法に従ったものでないとした場合、A及びB法人は、300万円の経済的利益に係る源泉徴収税額相当額を取り戻すために、それぞれどのような法的主張が可能か。令和2年分のAの確定申告との関連を踏まえて論じなさい。

3 D社が、会社法上の利益計算において、生産用機械乙に関し令和元年事業年度に減価償却費を計上している場合、法人税法上も、同事業年度に当該減価償却費の全部又は一部を損金に算入することは可能であるか。

4 Aは、所得税法の関係条文の文言から、丙会員権の譲渡による損失の金額の計算に際し、Aが支払った名義書換料は無視されると考えた。このAの解釈に問題はないか。

5 Aは、令和5年分の総所得金額の計算上、丙会員権の譲渡による損失の金額を、同年の給与所得の金額から控除することは可能であるか。解答に当たっては、その根拠規定の趣旨にも言及しなさい。

(参照条文)所得税法施行令

(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)

第178条 法第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。

一 競走馬(中略)その他射こう的行為の手段となる動産

二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産(略)

三 (以下略)

(損益通算の対象とならない損失の控除)

第200条 法第69条第2項(損益通算の対象とならない損失)に規定する政令で定める損失の金額は、第178条第1項第1号(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)に規定する競走馬の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額とする。

2 (略)

(参照条文)法人税法施行令

(減価償却資産の範囲)

第13条 法第2条第23号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。

一 建物及びその附属設備(略)

二 構築物(略)

三 機械及び装置

四 (以下略)

出典:法務省「2024年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。