司法試験論文式過去問演習

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2024年 司法試験 論文式 労働法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。

【事 例】

Y社は、食品の製造・販売を行う非上場の株式会社である。Y社のほとんどの労働者は、本社と工場が一体となった施設で勤務していた。当初、Y社に労働組合はなかったが、令和5年10月、会社の経営状況の悪化のため翌年4月から業務手当(月額3万円)を廃止する旨が通告されたことを契機に、一部の労働者がいわゆる地域合同労組であるX労働組合(以下「X組合」という。)に加入し、その支部を結成した。X組合に加入したのは、Y社の管理職を除く労働者200名のうち25名であった。X組合は、支部結成の翌日、Y社に対して、支部の結成を通知し、業務手当廃止の撤回と組合費のチェック・オフの実施を求めて、団体交渉を要求した。

令和5年10月下旬から翌年3月にかけて計5回、Y社とX組合との間で団体交渉が行われたが、交渉は進展しなかった。業務手当の廃止について、Y社は、「7年前、賃金体系を変更して業務手当を含む諸手当を整理したときに、当時、ヒット商品が出て業績が一時的に好調だったので、業務手当については従業員に利益を還元する趣旨で当面の措置として残したものであり、従業員に負担をかけるのは心苦しいが、近年の会社の業績不振に照らせば廃止はやむを得ない。」との主張を繰り返した。X組合は、「経緯はどうであれ業務手当は今も重要な労働条件であり、月3万円の手当を失うことによって労働者の生活は重大な打撃を受ける。会社の経営上どうしても必要だというのなら、きちんと資料を示して具体的に説明せよ。」と主張した。これに対して、Y社は、「正式な計算書類は外部に非公表である。」として、「当社決算の概要と過去10年の推移」という1枚紙の文書を示して経営状況の厳しさを訴えたが、他に提出資料はなく、業務手当の廃止によってどれだけの経費削減効果があるのか、他にどのような経営改善の努力を行っているのか等の説明もなされなかった。また、組合費のチェック・オフについて、Y社は、「使用者が組合に対してそのようなサービスを行う義務はそもそもなく、少数組合の場合は法律上も無理がある。」と述べて拒否し、「過半数組合でなくても適法に組合費のチェック・オフを行うことはできるはずだ。実際、少数組合に組合費のチェック・オフを認めた例は多くある。」というX組合の反論に対し、「当を得ない見解だ。」として受け入れない姿勢を明確にした。

結局、Y社は、就業規則の変更によって、令和6年4月から予定どおり業務手当を廃止した。その際、事業場で選出された過半数代表者も、同手当の廃止に反対しないという意見書を提出し、変更後の就業規則の労働基準監督署長への届出に当たってはこの意見書が添付された。X組合は、その後も上記2つの要求を掲げて団体交渉を求めたが、同月中旬に行われた6回目の団体交渉で、Y社は、「①業務手当の廃止は既に適正な手続を経て実施済みであり、X組合とは何度も交渉したが進展はなく、今更交渉しても無意味である。②組合費のチェック・オフについても、法律上困難な話であって、要求に応じる余地はない。」と述べ、物別れに終わった。この日の交渉の最後に、Y社は、これ以上の交渉には応じない旨をX組合に通告し、その後、何度か行われたX組合からの団体交渉の要求を拒否した。そこで、X組合は、同年5月中旬、始業前にY社の本社・工場の門前で抗議活動を行い、プラカードと組合旗を掲げてY社を非難する演説やビラの配布をした。

そのような中で、同月下旬、Y社の労働者150名が参加して、A労働組合(以下「A組合」という。)が結成された。A組合は、いわゆる企業別労働組合であり、上部団体には所属していない。A組合結成の翌日、A組合は、チェック・オフ協定とユニオン・ショップ協定の締結等を求めて団体交渉を申し入れ、その1週間後、Y社とA組合の間で団体交渉が行われた。その席で、A組合の委員長は、「業務手当の廃止はY社の状況に照らしてやむを得ない措置であったと理解する。今は我慢の時であり、まずは労使の協力によって会社の業績を回復させた上で、基本給の改善を図っていきたい。」と発言した。これに対してY社も賛意を表明し、「従業員の真の利益を考える組合の出現を心から歓迎する。」と述べた。この日の交渉の結果、Y社とA組合との間に、チェック・オフ協定とユニオン・ショップ協定が締結された。前者は、「Y社は、A組合に所属する従業員の月々の賃金から組合費分を控除し、各月末までにA組合の指定する銀行口座にまとめて振り込む。」と定め、後者は、「Y社に雇用された従業員は、A組合の組合員とする。A組合に加入しない者や、A組合より除名された者又はA組合から脱退した者は、従業員の資格を失い、Y社はこれを解雇する。」と定めていた。以上のような団体交渉の模様については、チェック・オフ協定とユニオン・ショップ協定の内容を含めて、A組合のニューズレターに記事が掲載された。このニューズレターは、Y社の従業員向け掲示板の脇の机の上に積み重ねて置かれ、Y社の労働者は誰でもそれを持ち帰ることができた。

X組合は、直ちにY社に抗議文を送り、「A組合との間の2つの協定の締結はX組合に対する違法な差別と弱体化工作である。」と主張した。これに対し、Y社は、「①A組合との間でチェック・オフ協定を結ぶことは法的に何の問題もない。②A組合との間にユニオン・ショップ協定があってもX組合の組合員を解雇できないことは承知しており、解雇するつもりもない。」と記した回答書を1週間後にX組合に送付した。この間、X組合に加入していた労働者のうち10名が同組合を脱退し、A組合に加入した。

〔設 問〕

X組合は、労働委員会に不当労働行為の救済申立てをすることを検討している。X組合は、どのような主張をしてどのような救済を求めるべきか。また、労働委員会は、どのような命令を発することになると考えられるか。⑴労働組合法第7条第2号、⑵同条第3号、という2つの項目に分けて、検討すべき法律上の論点を挙げながら、あなたの意見を述べなさい。なお、X組合は、同法第5条第1項が定める救済申立ての要件を満たしているものとする。

出典:法務省「2024年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。