2024年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
甲社は、A県内の中核市であるB市において、同市の特産品である魚と野菜を原材料とするカマボコを製造する工場(以下「本件工場」という。)の設置を計画している。本件工場において発生する廃棄物の収集運搬及び中間処理は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)の関係規定を遵守して、その全量を委託処理する予定である。廃棄物としては、カマボコ製造過程において発生する魚の残渣や野菜くずがあり、また、社員食堂において発生する調理くずや残飯があるとする。
甲社は、廃掃法に基づきB市長の許可を得て処理業を営むC社に対して、本件工場において発生する上記廃棄物の処理を委託しようと考えている。C社は、同県内の他の町にある甲社のD事業場において発生する金属くずと廃プラスチック類の収集運搬及び中間処理を委託されている。C社は、この2品目の処理についてのみ、必要な許可を得ている。
以上の事実を踏まえた上で、【資料1】を参照しつつ、以下の設問に答えよ。なお、本問において問題となる廃掃法上の権限は、いずれもB市長にある。
〔設問1〕
甲社の環境担当役員Eが、本件工場における廃棄物の処理についての計画を顧問弁護士のFに説明した。説明を受けたFは、「C社が現時点において得ている許可を踏まえると、同社に対して本件工場の廃棄物の処理を委託するのは、廃掃法上、違法である。」と指摘した。Fがそのように指摘した理由を説明せよ。
〔設問2〕
Fの指摘はもっともだと考えたEは、C社に対して、少なくとも本件工場の社員食堂において発生する廃棄物を同社が適法に収集運搬できるように対応してほしいと相談した。ところが、C社は、「それについては、許可が得られるかどうかを予測することは難しい。しかし、チャレンジしてみる。」と回答した。
⑴ C社が「それについては、許可が得られるかどうかを予測することは難しい。」と回答した理由を、カマボコ製造過程において発生する魚の残渣や野菜くずの収集運搬に関する業の許可と比較しつつ、廃掃法の規定に照らして説明せよ。
⑵ 本件工場の社員食堂において発生する廃棄物の収集運搬についての許可の取得を予測することは難しいと考えていたC社であったが、同許可を得ることができた(以下「本件許可」という。)。これに対して、B市内において、本件許可と同種の許可を得て営業をしている同業者乙社は、売上の減少を懸念して、不満である。そこで、乙社は、本件許可の取消訴訟を提起しようと検討している。乙社には、当該訴訟を提起できる資格が認められるか。本件許可に係る廃棄物の処理に対する廃掃法の考え方を踏まえつつ、論ぜよ。
〔設問3〕
コンサルタントのGは、C社の取締役会にも出席して積極的に発言し、同社の意思決定にも影響力を保持している。Gは、C社の仕事がない日に居酒屋で友人たちと食事をしていた際に、隣の席にいたグループと口論になり、そのグループ内の一人を数発殴ってけがをさせ、傷害罪で現行犯逮捕された。その後、Gは、傷害罪の被疑事実で近隣の警察署に勾留されている。
この事件を知った甲社の環境担当役員Eは、C社の廃掃法上の許可が取り消されるのではないかと考え、顧問弁護士のFに相談した。ところが、Fは、「今の状況では許可が取り消されることはない。例えば、許可の取消しに際して問題となる廃掃法第14条第5項の要件に該当しないからである。」と回答した。【資料2】を参照しつつ、廃掃法第14条第5項の要件に該当しないとFが回答した理由を説明せよ。なお、【資料2】にある「同号」とは、廃掃法第7条第5項第4号を指す。
〔設問4〕
廃プラスチック類を処理するC社の中間処理施設内の機械が、突然故障した。そこで、同社は、とりあえず操業を停止した。機械を納品した業者に通報したところ、1か月後にようやく担当社員が確認に訪れた。その際、確認を済ませた同社員は、機械を入れ替えなければならないため、操業再開までには3か月を要すると言った。故障はすぐに修復できると考えていたC社は、上記訪問があるまでの間、廃棄物の搬入は継続させていた。そのため、甲社から搬入された廃棄物の量が、保管上限を超えるまでに施設内に堆積してしまった。
⑴ C社は、上記の状況になったとき、甲社に対して、廃掃法に基づき、どのような措置を講ずるべきか。その措置を受けた甲社は、産業廃棄物管理票交付者として、どのように対応すべきか。それぞれ説明せよ。
⑵ 甲社が上記の対応を怠っていたところ、C社の中間処理施設内に堆積された廃プラスチック類が人通りのある前面道路に崩落し始めている。C社による対応は困難なようである。B市長は、廃掃法の下で、甲社に対して、どのような措置を講じ得るか。環境法の基本的な考え方を踏まえつつ説明せよ。
【資料1】
〇 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)(抜粋)
(産業廃棄物)
第2条 法第2条第4項第1号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
一 紙くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが塗布され、又は染み込んだものに限る。)
二 木くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、木材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業及び物品賃貸業に係るもの、貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材を含む。)に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)
三 繊維くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの及びポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)
四 食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
四の二 と畜場法(昭和28年法律第114号)第3条第2項に規定すると畜場においてとさつし、又は解体した同条第1項に規定する獣畜及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(平成2年法律第70号)第2条第6号に規定する食鳥処理場において食鳥処理をした同条第1号に規定する食鳥に係る固形状の不要物
五 ゴムくず
六 金属くず
七 ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものを除く。)及び陶磁器くず
八 鉱さい
九 工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物
十 動物のふん尿(畜産農業に係るものに限る。)
十一 動物の死体(畜産農業に係るものに限る。)
十二 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第2条第2項に規定するばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法第2条第2項に規定する特定施設(ダイオキシン類(同条第1項に規定するダイオキシン類をいう。以下同じ。)を発生し、及び大気中に排出するものに限る。)又は次に掲げる廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであつて、集じん施設によつて集められたもの
イ 燃え殻(事業活動に伴つて生じたものに限る。第2条の4第7号及び第10号、第3条第3号ワ並びに別表第一を除き、以下同じ。)
ロ 汚泥(事業活動に伴つて生じたものに限る。第2条の4第5号ロ⑴、第8号及び第11号、第3条第2号ホ及び第3号ヘ並びに別表第一を除き、以下同じ。)
ハ 廃油(事業活動に伴つて生じたものに限る。第24条第2号ハ及び別表第五を除き、以下同じ。)
ニ 廃酸(事業活動に伴つて生じたものに限る。第24条第2号ハを除き、以下同じ。)
ホ 廃アルカリ(事業活動に伴つて生じたものに限る。第24条第2号ハを除き、以下同じ。)
ヘ 廃プラスチック類(事業活動に伴つて生じたものに限る。第2条の4第5号ロ⑸を除き、以下同じ。)
ト 前各号に掲げる廃棄物(第1号から第3号まで及び第5号から第9号までに掲げる廃棄物にあつては、事業活動に伴つて生じたものに限る。)
十三 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、前各号に掲げる廃棄物(第1号から第3号まで、第5号から第9号まで及び前号に掲げる廃棄物にあつては、事業活動に伴つて生じたものに限る。)又は法第2条第4項第2号に掲げる廃棄物を処分するために処理したものであつて、これらの廃棄物に該当しないもの
(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
第6条の2 法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第6条の4までにおいて同じ。)の運搬にあつては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
二~六 (略)
〇 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)(抜粋)
(産業廃棄物の処理を適正に行うことが困難となる事由)
第10条の6の2 法第14条第13項の環境省令で定める事由は、次のとおりとする。
一 事業の用に供する産業廃棄物の処理施設において破損その他の事故が発生し、当該処理施設を使用することができないことにより、当該処理施設において保管する産業廃棄物の数量が処分等のための保管上限に達したこと。
二~八 (略)
【資料2】
〇 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長「行政処分の指針について(通知)」(令和3年4月14日環循規発第2104141号)(抜粋)
〔(注) 本通知中、単に「法」とあるのは廃棄物の処理及び清掃に関する法律を指す。〕
第2 産業廃棄物処理業の事業の停止及び許可の取消し(法第14条の3及び第14条の3の2)
1 (略)
2 要件
⑴~⑶ (略)
⑷ (略)
① (略)
② 同号〔(注)法第7条第5項第4号〕ホの「法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」とは、法人の業務を執行する権限はないものの、法人に対する実質的な支配力を有する者をいい、例えば、相談役、顧問等の名称を有する者、法人に対し多額の貸金を有することに乗じて法人の経営に介入している者又は一定比率以上の株式を保有する株主若しくは一定比率以上の出資をしている者などが典型的には想定されること。(中略)
③ (略)
④ 同号〔(注)法第7条第5項第4号〕チの「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」とは、法第7条第5項第4号イからトまで及び第14条第5項第2号ロからへまでのいずれにも該当しないが、その者の資質及び社会的信用性等の面から、将来、その業務に関して不正又は不誠実な行為をすることが相当程度の蓋然性をもって予想される者をいうこと。具体的には、次のような者については、特段の事情がない限り、これに該当するものと考えられること。
イ、ロ (略)
ハ 暴力団対策法の規定に違反し、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律(大正15年法律第60号)の罪を犯し、公訴を提起され、又は逮捕、勾留その他の強制の処分を受けている者(当該違反又は罪が廃棄物の処理に関連してなされ又は犯された場合に限る。)
ニ (以下、略)
出典:法務省「2024年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。