2023年 司法試験 論文式 倒産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事 例】
A株式会社(以下「A社」という。)は、衣服の製造及び販売を業とする株式会社である。A社は、その所有する工場において衣服を縫製しているほか、1棟のオフィスビルを所有し、その1階から3階までの部分を自社の店舗及び事務所として使用し、4階部分(以下「物件甲」という。)をB株式会社(以下「B社」という。)に賃貸している。
A社は、業界全体の売上げが減少傾向にあったことに加え、インターネットを用いた商品の販売に乗り遅れたことも相まって急激に売上げを落としたことにより、令和4年9月頃には資金繰りに窮するに至った。そこで、A社は、同年10月27日、弁護士Cを代理人として再生手続開始の申立てをしたところ、同年11月4日、再生手続開始の決定を受けた。なお、同決定において、債権届出期間が同年12月2日までと定められた。
〔設問1〕
A社の申立代理人Cは、令和4年11月7日、電力会社であるD株式会社(以下「D社」という。)から、A社の縫製工場における以下の各時期の供給分に係る電気料金に関し、括弧内に示した約定どおりの支払期限までに支払がされるかどうかについて照会を受けた。A社として当該電気の供給契約を継続する意向である場合に、Cはどのように回答すべきか、説明しなさい。
① 令和4年9月分(1日~30日分)(支払期限:令和4年11月10日)
② 令和4年10月分(1日~31日分)(支払期限:令和4年12月10日)
③ 令和4年11月分(1日~30日分)(支払期限:令和5年1月10日)
【事 例(続き)】
A社は、B社との間で、令和3年7月1日、物件甲につき、賃貸期間を同日から2年、月額賃料を60万円(毎月末日までに翌月分の賃料を支払う。)とする賃貸借契約を締結した。同契約において、原状回復費用は賃借人であるB社が負担する旨の合意がされた。B社は、敷金として賃料の10か月分(600万円)を交付し、上記賃貸借契約に基づき、物件甲の引渡しを受けた。B社は、A社についての再生手続開始の決定前において、賃料を支払期限までに支払っていた。
B社は、令和4年8月頃、備付けの空調設備が故障したため、修理費用として60万円を支出していたところ、同年11月30日、A社に対する修理費用の返還請求権を自働債権とし、同年12月分の賃料の支払債務を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。
B社は、令和4年12月1日、A社に交付した敷金の返還請求権につき、その交付額が600万円であること及び賃貸目的物の明渡し前であるので再生債権の額は未定であることを示して、再生債権の届出をした。A社は、債権調査手続において、B社が届け出た再生債権の内容を認め、また、届出をした他の再生債権者からも異議は述べられなかった。
その後、令和5年4月3日、A社から、再生債権に関する権利の変更及び弁済方法につき、再生債権者の権利の60%を免除し、その残額を再生計画認可の決定の確定後に弁済することを内容とする再生計画案が提出された。同計画案は、債権者集会において可決された後、同年5月29日、再生計画を認可する旨の決定がされ、同年6月26日、この認可決定が確定した。
B社は、令和5年1月分から同年4月分の賃料をそれぞれ支払期限までに支払ったが、同年5月分及び6月分の賃料を支払うことなく、同月30日、賃貸期間の満了により、A社に対して物件甲を明け渡した。その際、A社は、物件甲につき、原状回復費用として80万円を支出した。
〔設問2〕
⑴ A社についての再生手続において、B社のA社に対する敷金返還請求権はどのように取り扱われるか、A社について破産手続が開始した場合との違いに触れつつ、説明しなさい。
⑵ 【事例】において、B社のA社に対する敷金返還請求権に係る債務の弁済額は幾らになるか、説明しなさい。なお、敷金返還請求権については、明渡し時において、敷金から賃貸借契約に基づいて生じた賃借人の債務の額を控除した残額のうち、再生債権となるべき部分に対して、再生計画に従った権利変更を行うとの考え方に立つこととする。
出典:法務省「2023年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。