2023年 司法試験 論文式 環境法 第1問
問題
配点 50点[環 境 法]
〔第1問〕(配点:50)
道路騒音訴訟及び空港・基地騒音訴訟に関する以下の問いに答えなさい。
〔設問1〕
Aらは、B市とC市を結ぶ一般国道の沿道の道路端に近接した範囲内に居住している。Aらは、この道路を走行する自動車による騒音によって被害を被っており、国に対して訴訟を提起したいと考えている。
なお、大阪国際空港訴訟最高裁大法廷判決(最高裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁)は、空港騒音訴訟において、国に対する民事差止訴訟を不適法として却下している。
⑴ 本件設例と同様の道路騒音の事例について、裁判所は、Aらの民事差止訴訟の提起は適法であるとしてきた。その理由としてはどのようなことが考えられるか。【資料】を参照しつつ、解答しなさい。
⑵ ①Aらが民事差止訴訟を提起する場合、違法性の判断枠組みはどのようになるか、②損害賠償を請求する場合の違法性の判断枠組みとどのように異なるか。参考となる最高裁判所の判決や学説の立場を指摘しつつ、解答しなさい。
〔設問2〕
Dらは、自衛隊基地の周辺に居住しており、夜間における自衛隊機の離発着に起因する騒音による不眠等に悩んでおり、差止めを請求する訴訟を提起したいと考えている。
⑴ Dらは、どのような訴訟を提起することができるか。複数の可能性を挙げて、訴訟要件に言及しつつ比較・検討しなさい。
⑵ ⑴において解答した訴えについて、自衛隊機の離発着の違法性の判断枠組みはどのようになるか。参考となる最高裁判所の判決の立場を指摘しつつ、解答しなさい。
⑶ 〔設問1〕の⑵①と〔設問2〕の⑵の違法性の判断枠組みの関係について、どのように考えるか、解答しなさい。
【資 料】
以下の文章は、道路騒音に関する最高裁判所の判決の後に、関係省庁が連名で発出した通知の抜粋である。
警察庁丙都交発102号
警察庁交通局長・環境庁大気保全局長・通商産業省環境立地局長・運輸省運輸政策局長・建設省道路局長から各都道府県知事・政令指定都市市長あて
(略)
道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について
平成7年12月1日
道路交通公害対策関係省庁連絡会議
1 (略)
2 (略)
3 道路交通騒音の深刻な地域における対策の基本的考え方
道路交通騒音が深刻である地域においては、可能な限り道路構造対策を実施すべきであるが、これに加えて、交通流対策、沿道対策を含めた総合的対策が必要であり、関係省庁の連携をさらに強化して対策を推進する必要がある。この場合、交通や沿道の状況が地域により様々であることから、自治体等地域レベルの施策実施主体が各々の地域に応じた取組を行うことが重要である。(以下、略)
4 道路交通騒音が深刻な地域における具体的な道路交通騒音対策
⑴ 道路構造対策の推進
① 平面構造の道路における対策
騒音の状況が深刻な地域においては、騒音の低減のためには、平面構造の道路においても遮音壁を設置することが望ましい。ただし、遮音壁の設置が沿道からのアクセスを低下させる場合や、景観上望ましくない場合等も考えられるため、騒音の観点に加えて沿道利用等総合的な観点から地域の意向を踏まえつつ、遮音壁の設置を推進する必要がある。
また、通常の遮音壁が設置できない地域においても低層の遮音壁や低騒音舗装の敷設等可能な限りの対策を行っていくべきである。このため、関係省庁においては、低層遮音壁や、美観に優れた遮音壁等の技術開発を推進し、地域の状況に応じた技術の選択の幅を広げていく。
② 高架の道路における対策
(略)
⑵ 発生交通量の低減の推進
① 物流対策の推進
(略)
② 人流対策の推進
(略)
⑶ 交通流対策の推進
① 道路ネットワークの整備による交通流の分散
(略)
② 交通管制システムの高度化等による交通流の分散
(略)
③~⑤ (略)
⑥ 交通規制及び交通指導取締り
適正な交通流の実現のため、以下の施策について支援を行う。
a 速度違反取締り等の強化及び速度違反自動取締装置の増設
速度超過車両、過積載車両の取締り活動を強化し、車両走行時に発生する騒音の低減を図る。また、速度超過車両に対する取締り効果のみならず、走行速度の抑制に効果がある速度違反自動取締装置を増設するとともに、軸重自動計測装置や走行状況を把握するためのITVカメラの設置を推進する。
b 減速を促す標識・標示の設置・改良
標識の視認性の向上(大型化、灯火化及び可変化)や運転者に減速を促す標示の設置・改良(車線境界線のワイド化、くし形減速マーク等)を行い、走行速度の抑制を図る。
c 高速走行抑止システムの増設
高速走行車両の検出、高速走行車両に対する警告及び高速走行車両の取締り機能を持つ高速走行抑止システムの設置を推進し、走行速度の抑制を図る。
d 大型自動車の通行規制等の検討
交通実態や迂回路等の整備状況等を勘案して、大型自動車の通行規制等の検討を行う。
⑷ 沿道対策等の推進
(略)
⑸ 自動車単体対策の強化
(略)
⑹ 低公害車の普及促進
(略)
⑺ 自動車公害防止計画の策定に対する支援
(略)
⑻ 自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下「自動車NOx法」という)の進行管理
(略)
⑼ 普及啓発活動の推進
(略)
⑽ その他
(略)
5 今後の取組
関係省庁は、3に示したように地域的取組を支援していくほか、今後とも本連絡会議等の場において相互に密接な連携を図りつつ、本とりまとめに盛られた道路交通騒音対策を着実に実施していくものとする。
出典:法務省「2023年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。