2022年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
Aは、B県において物質Cを使用・処理する施設を設置している。Aの施設は、水質汚濁防止法上の特定施設である。以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
本件設例において、Cはトリクロロエチレンであるとする。地下水汚染防止のため、水質汚濁防止法上、Aにはどのような義務が課されているか。【資料1】を参照しつつ、答えなさい。
〔設問2〕
本件設例において、Cはトリクロロエチレンであるとする。Aの施設からCが排出され又は漏えいし、地下水等が汚染され、さらに周辺のD及びEの所有地の土壌も汚染されたことが判明した。この場合において、B県知事は、Aに対してどのような措置を採ることができるか。【資料2】を参照しつつ、水質汚濁防止法と土壌汚染対策法の地下水汚染対策に対する考え方の相違を踏まえて答えなさい。
〔設問3〕
本件設例において、Cはトリクロロエチレンであるとする。Aは、令和2年(2020年)に、自己の施設のある土地のCによる土壌汚染に対してB県知事の指示に基づく汚染除去等の措置を完了していたところ、令和3年(2021年)に、トリクロロエチレンに関する土壌の汚染に係る環境基準(以下「土壌環境基準」という。)が(検液1Lにつき)0.03mg以下から0.01mg以下に強化された。そのため、令和2年(2020年)にAが採った措置では、強化された土壌環境基準に基づく「環境省令で定める基準」に適合しない状況になった。B県知事は、Aに対して土壌汚染に関して上記環境基準の強化を理由として汚染除去等の追加的措置を求めることができるか。【資料3】を参照しつつ、簡潔な理由を付して答えなさい。
〔設問4〕
本件設例において、Cは水溶性が高く、塩素に反応する有機化合物であるとする。Aの施設からCが河川に排出され、下流に流下し、浄水場における浄水過程で注入された塩素と反応し、消毒副生成物としてホルムアルデヒドが生成されてしまった。浄水場では取水が停止され、浄水場が設置されていたF市では断水・減水が発生し、水道事業者としてのF市は拠点給水所の設置、給水車の出動等による応急給水を余儀なくされた。Cに関してはその当時、排水基準は設定されていなかったとする。この場合において、F市は、Aに対してどのような法的請求ができるか。
【資料1】
○ 水質汚濁防止法施行令第2条(昭和46年政令第188号)(抜粋)
(カドミウム等の物質)
第2条 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。
一~八 (略)
九 トリクロロエチレン(以下、略)
【資料2】
○ 「水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について」(平成8年環水管第275号)(抜粋)
地下水汚染から人の健康を保護するという観点から、措置命令は、水質汚濁防止法施行規則(昭和46年総理府・通商産業省令第2号。以下「規則」という。)第9条の3第2項に定められる浄化基準を超えて汚染された地下水に関し、次に掲げる地下水の利用等の状態に応じて、同項各号に定められる地点において浄化基準(汚染原因者が二以上ある場合には、削減目標)を達成することを限度として発することができることとされている。(中略)
⑴ 人の飲用に供せられ、又は供せられることが確実である場合(規則第9条の3第2項第1号)
(中略)
⑵ 水道法(昭和32年法律第177号)第3条第2項に規定する水道事業(同条第5項に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。)、同条第4項に規定する水道用水供給事業又は同条第6項に規定する専用水道のための原水として取水施設より取り入れられ、又は取り入れられることが確実である場合(規則第9条の3第2項第2号)(中略)
⑶ 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項に規定する都道府県地域防災計画等に基づき災害時において人の飲用に供せられる水の水源とされている場合(規則第9条の3第2項第3号)(中略)
⑷ 水質環境基準(有害物質に該当する物質に係るものに限る。)が確保されない公共用水域の水質の汚濁の主たる原因となり、又は原因となることが確実である場合(規則第9条の3第2項第4号)(以下、略)
○ 土壌汚染対策法施行令第3条(平成14年政令第336号)(抜粋)
(土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準)
第3条 法第5条第1項の政令で定める基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 当該土地の土壌の特定有害物質(法第2条第1項に規定する特定有害物質をいう。以下同じ。)による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであり、当該土壌の特定有害物質による汚染に起因して現に環境省令で定める限度を超える地下水の水質の汚濁が生じ、又は生ずることが確実であると認められ、かつ、当該土地又はその周辺の土地にある地下水の利用状況その他の状況が環境省令で定める要件に該当すること。
ロ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態がイの環境省令で定める基準に適合しないおそれがあり、当該土壌の特定有害物質による汚染に起因して現にイの環境省令で定める限度を超える地下水の水質の汚濁が生じていると認められ、かつ、当該土地又はその周辺の土地にある地下水の利用状況その他の状況がイの環境省令で定める要件に該当すること。
ハ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合せず、又は適合しないおそれがあると認められ、かつ、当該土地が人が立ち入ることができる土地(中略)であること。
二 次のいずれにも該当しないこと。
イ、ロ(略)
○ 土壌汚染対策法施行規則第30条(平成14年環境省令第29号)
(地下水の利用状況等に係る要件)
第30条 令第3条第1号イの環境省令で定める要件は、地下水の流動の状況等からみて、地下水汚染(地下水から検出された特定有害物質が地下水基準に適合しないものであることをいう。以下同じ。)が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に、次の各号のいずれかの地点があることとする。
一 地下水を人の飲用に供するために用い、又は用いることが確実である井戸のストレーナー、揚水機の取水口その他の地下水の取水口
二 地下水を水道法(昭和32年法律第177号)第3条第2項に規定する水道事業(同条第5項に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。)、同条第4項に規定する水道用水供給事業若しくは同条第6項に規定する専用水道のための原水として取り入れるために用い、又は用いることが確実である取水施設の取水口
三 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条第1項の都道府県地域防災計画等に基づき、災害時において地下水を人の飲用に供するために用いるものとされている井戸のストレーナー、揚水機の取水口その他の地下水の取水口
四 地下水基準に適合しない地下水のゆう出を主たる原因として、水質の汚濁に係る環境上の条件についての環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の基準が確保されない水質の汚濁が生じ、又は生ずることが確実である公共用水域の地点
【資料3】
○ 中央環境審議会「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直しその他法の運用に関し必要な事項について(第4次答申)-カドミウム及びその化合物、トリクロロエチレン」(令和2年1月)(抜粋)
Ⅳ 特定有害物質の基準の見直しに伴う法の制度運用について
1.基本的考え方
特定有害物質の見直しに伴う法(注:ここにいう「法」とは、土壌汚染対策法をいう。以下同じ。)の制度運用については、「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直しその他法の運用に関して必要な事項について(第2次答申)」(平成27年12月中央環境審議会)で基本的考えを整理しており、カドミウム等(注:ここにいう「カドミウム等」とは、カドミウム及びその化合物並びにトリクロロエチレンをいう。以下同じ。)の基準の見直しにおいても第2次答申の考え方を踏まえ、土地の所有者等に過剰な負担をかけないものとする必要がある。
カドミウム等の基準が見直された後に、法第3条第1項の有害物質使用特定施設の廃止、法第3条第8項の調査の命令、法第4条第2項の報告、法第4条第3項の調査の命令、法第5条第1項の調査の命令、又は法第14条第1項の申請(以下「有害物質使用特定施設の廃止等」という。)を行う場合の土壌汚染状況調査(法第14条第3項において土壌汚染状況調査とみなされるものを含む。以下同じ。)においてカドミウム等を測定の対象とする場合には、見直し後の基準で評価を行うことが適当である。
また、カドミウム等の基準が見直された後に行う、法第7条第1項の指示を受ける場合の汚染の除去等の措置に伴う土壌の分析及び地下水の測定並びに認定調査については、見直された後の基準で評価を行うことが適当である。また、汚染土壌処理業に関する省令(平成21年環境省令第10号)第5条第22号イに基づく調査(以下「浄化確認調査」という。)におけるカドミウム等の測定においても、見直された後の基準で評価を行うことが適当である。
カドミウム等の基準が見直される以前に、既に有害物質使用特定施設の廃止等が行われている場合にあっては、基準が見直されたことのみを理由に当該有害物質使用特定施設の廃止等に係る土壌汚染状況調査の再実施を求めないことが適当である。同様に、カドミウム等の基準が見直される以前に、カドミウム等により要措置区域に指定されている土地において都道府県知事の指示に基づく汚染の除去等の措置を講じている場合にあっては、見直される前の基準により評価を行っていることのみを理由に、当該措置の再実施を求めないことが適当である。
ただし、見直し後の基準に適合せず、又は適合しないおそれがあると認められる土壌がある場合にあっては、土壌溶出量基準に適合しない場合は地下水の水質の汚濁の状況及び地下水の飲用利用の有無によって、土壌含有量基準に適合しない場合は人が立ち入ることができる土地であるか否かによって、それぞれ人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合がある。このため、基準見直し前に実施した土壌汚染状況調査その他の調査の結果において土壌溶出量又は土壌含有量が見直し後の基準に適合しておらず、特段の措置が講じられていない土壌が現に存在することが明らかな場合にあっては、都道府県知事は、地下水の水質の汚濁の状況若しくは地下水の飲用利用の有無又は人が立ち入ることができる土地であるか否かについて確認を行うことが適当である。その上で、法第5条第1項に基づく土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準(令(注:ここにいう「令」とは、土壌汚染対策法施行令をいう。)第3条)を満たす場合にあっては、都道府県知事は、指導により汚染の摂取経路を遮断するための措置を講じさせることや、同項の調査命令を発出することが適当である。(以下、略)
出典:法務省「2022年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。