2021年 司法試験 論文式 租税法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
株式会社A(以下「A社」という。)及び株式会社P(以下「P社」という。)は,株主及び役員の一部を同じくする関連会社である。A社は,昭和50年に甲県乙市郊外の土地(以下「本件土地」という。)を3000万円で購入し,A社の保養施設の敷地として利用していた。平成29年に本件土地上の保養施設は取り壊され,本件土地は更地となっていた。令和元年9月,A社代表取締役のQは,知り合いのRから,本件土地を時価相当額である9000万円で売却してほしいとの電話連絡を受けた。Qは,A社が直接Rに本件土地を売却するのではなく,A社からP社へ,そしてP社からRへ,順次売却することを計画した。その目的は,A社及びP社がそれぞれ譲渡益を得て,A社及びP社の繰越欠損金を消滅させることにより,2社合計の法人税額を,A社が直接Rに本件土地を売却した場合と比して低くすることであった。
Qは,課税上問題視されないようにするため,A社とP社との間に株式会社B(以下「B社」という。)を挟むことを考えた。Qの大学時代の同じサークルの後輩で今でも交流を続けているCが,乙市内で不動産販売会社たるB社を立ち上げ,B社の代表取締役を務めていることを思い出したためである。QはCに,B社がA社から本件土地を購入する取引を提案した。ただし,B社がA社から7000万円で本件土地を買い受けた後,2か月以内にこれをP社に7500万円で売却すること(以下「本件特約」という。)を条件とするものであった。Qとしては,A社及びP社とは何ら関係性のないB社を間に介在させることで,本件土地の適正な時価が7000万円であると見せ掛けることを企図していた。Cとしては,古くから世話になっている先輩からの依頼であり無下に断ることもできず,立ち上げたばかりのB社の売上げが少しでも上がるのであればと思い,承諾した。なお,本件特約は,Qの希望により本件土地の売買契約書とは別の覚書(以下「本件覚書」という。)という形でA社,B社間で締結された。また,Qは,本件土地の売却時期が令和2年2月頃になることをあらかじめRに連絡し,Rの了解を得ていた。
以上に基づき,B社は,令和元年11月15日にA社から本件土地を7000万円で買い受け(以下,この取引を「本件AB取引」という。),令和2年1月10日に本件土地をP社に7500万円で売却した(以下,この取引を「本件BP取引」という。)。同月20日,QはRに対し,本件土地は,現在,関連会社であるP社が保有しているので,P社に買付証明書を提出してほしいと連絡し,Rは,同月23日付け買付証明書をP社に郵送した。P社は,同年2月25日にRに対し,本件土地を9000万円で売却した(以下,この取引を「本件PR取引」という。また,「本件AB取引」,「本件BP取引」,「本件PR取引」をまとめて,以下「本件各取引」という。)。P社は,同月29日にCに対し,協力金として100万円(以下「本件リベート」という。)を支払った。
A社,B社及びP社は,毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
A社は,本件土地の時価が7000万円であるという前提で,令和元年12月期の法人税の申告(以下「本件A申告」という。)をした。令和2年9月,税務署によるA社に対する法人税の実地調査がなされた。本件土地が転々譲渡されていることにつき調査官から尋ねられたQは,本件土地を,交渉の末,B社に7000万円で売却したところ,その後,本件土地を9000万円で購入したいとRから連絡を受けたが,既にB社に売却してしまっており,当時,A社にて買い戻すだけの資金的余裕もなかったことから関連会社のP社が本件土地をB社から7500万円で購入した上で,Rに売却することになった旨を説明した。その際,Qは,本件各取引の売買契約書(以下「本件各売買契約書」という。)について調査官に示したものの,本件覚書については開示しなかった。なお,本件各売買契約書には架空の名義の利用はない。
調査後,QはすぐにCに連絡し,B社について調査官から事情を聴かれた際には,本件覚書の存在やQとCとの関係については一切触れずに,交渉の末に,購入価額が7000万円となったと説明するよう要請した。また,Qは,Rに対してもQが調査官に説明した内容での口裏合わせを行った。しかし,B社に反面調査がなされた際,本件覚書の存在が発覚し,本件各取引の全貌が明らかとなった。
以上の事案について,以下の設問に答えなさい。ただし,第2問において,グループ法人税制及び同族会社行為計算否認規定の適用は考えなくてよい。
〔設 問〕
1⑴ 仮にA社が令和元年11月15日に直接Rに本件土地を9000万円で譲渡していた場合,当該譲渡に関して,同年12月期のA社の法人税の計算上,益金の額及び損金の額への計上に係る根拠規定及び適用関係を説明しなさい。
⑵ 本件AB取引に関して,令和元年12月期のA社の法人税の計算上,益金の額及び損金の額への計上に係る根拠規定及び適用関係を説明しなさい。
⑶ 国税通則法第68条第1項の「隠蔽」,「仮装」につき,最高裁判所平成7年4月28日第二小法廷判決・民集49巻4号1193頁は「架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく,納税者が,当初から所得を過少に申告することを意図し,その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上,その意図に基づく過少申告をしたような場合には,重加算税の右賦課要件が満たされる」と判示した。益金を2000万円少なくした本件A申告そのものが同項の「隠蔽」,「仮装」に当たるか,説明しなさい。
⑷ 本件A申告そのもの以外に,国税通則法第68条第1項の「隠蔽」,「仮装」に当たる事実があるかについて,本件各取引の法律行為の内容が本件各売買契約書に偽りなく記載されており,架空名義の利用はないことに留意しつつ,上記最高裁判所の判決の判示を踏まえて説明しなさい。
2 本件AB取引及び本件BP取引に関して,B社の令和元年12月期及び令和2年12月期の法人税の計算上,益金の額及び損金の額への計上に係る根拠規定及び適用関係を説明しなさい。
3 本件リベートは,Cの令和2年分の所得税の計算上,事業所得,一時所得,雑所得のいずれの所得に分類されるか,説明しなさい。
出典:法務省「2021年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。