司法試験論文式過去問演習

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2021年 司法試験 論文式 知的財産法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

著名なタレントである甲は,各種エンターテインメント事業を行う会社Aに所属している。Aは,甲をイラスト化した主人公が迷宮を脱出する内容のコンピュータ用ゲームソフト(以下「α」という。)の制作を企画し,そのBGMに,甲が歌唱する代表的な歌曲の楽曲部分(以下「β」という。)を使用することにした。

βは,作曲家である乙がかつてAに依頼されて作曲したものであり,乙の著作の名義の下に公表されたものである。Aは,αの制作に先立ち,乙との間で,βに係る著作権を全部譲り受ける旨の契約を締結した。当該契約においては,著作権法第27条及び第28条に定める著作権も譲渡対象として特掲されている。

その後,Aの従業員がαを完成させ,αはAの著作の名義の下に公表された。Aは,αの複製物の販売を開始した。

以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1.αの制作過程においては,甲を簡略なイラストで表現する作業の参考に資するために,Aの内部で甲の写真撮影が行われた。撮影は,当時Aの従業員であった丙が担当し,丙は,デジタルカメラを用いて,写真の構図,採光,露光,シャッタースピード等を調節して,甲を撮影した。Aは,当該写真とそのデータをαの開発部署の外に持ち出すことを禁じ,また,αの完成後は,直ちにそれらを廃棄することを命じていたが,Aを退職した丙は,その所有するUSBメモリーを用いて当該データを密かに自宅に持ち帰り,不特定多数の者が閲覧できる丙のホームページ上で,当該データを保有している旨及び当該写真を印刷したものの売却に応じる旨を告知した。Aは,丙に対して,著作権に基づいて,当該写真の印刷及び譲渡の差止め並びに当該データの廃棄を請求することができるかについて論じなさい。

2.Bは,中古ゲームソフトの販売を行う会社であり,Aが販売したαの複製物を含む中古ゲームソフトを,自社の店舗内で販売している。

⑴ Aは,Bに対して,αの複製物の販売の差止めを請求することができるかについて論じなさい。

⑵ Bは,中古ゲームソフトの通常の販売に係るサービスと並行して,それとは異なるサービスを「割賦販売サービス」と称して提供しているものとする。当該サービスにおいては,Bの商品である中古ゲームソフトの販売価格の一部に相当する金銭が「頭金」と呼ばれ,客は「頭金」を支払うことで,直ちに商品の引渡しを受けることができ,残額分は引渡しから1週間後に支払えばよいとされていた。また,引渡しから6日以内であれば,客は,「頭金」の払戻しを受けることはできないが,商品を自由に返品することができ,残額分の支払を免れることもできた。Aは,Bに対して,αの複製物について当該サービスを提供することの差止めを請求することができるかについて論じなさい。

3.数年後,Aは,αの続編に当たるコンピュータ用ゲームソフトの制作を決定し,βを編曲したものを,そのBGMとして使用することにした。Aは,作曲家である丁にβの編曲を依頼し,丁は,もともと落ち着いた曲調であったβをビートの効いたテンポの速い曲調に編曲したβ’を作成した。当該編曲の事実を知った乙は,丁に対して,乙の同一性保持権の侵害を理由とする損害賠償を請求している。乙の請求に対する丁の反論として,どのような主張が考えられるかについて論じなさい。

出典:法務省「2021年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。