司法試験論文式過去問演習

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2020年 司法試験 論文式 倒産法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の【事例】について,以下の設問に答えなさい。

なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されている法令に基づいて答えなさい。

【事 例】

A株式会社(以下「A社」という。)は,精密機械の製造を業とする会社であり,その所有する土地上に精密機械を製造する工場(以下「本件工場」という。)を建築し所有している。A社は,令和2年4月頃,それまでの過剰な設備投資に起因する借入金の増加が原因となって苦境に陥っていた。A社の令和2年4月30日時点での資産の総額は10億円,債務の総額は13億円である。

A社の代表取締役であるBは,自社の資金繰りが悪化し,新規の借入れも困難になったことから,自力での再建を断念し,法的倒産手続により精密機械の製造に係る事業(以下「本件事業」という。)を譲渡するための方法について相談するため,令和2年5月1日,C弁護士を訪ねた。A社と親密な関係にあり,財務状態が良好な同業のD株式会社(以下「D社」という。)は,A社が法的倒産手続に入った場合には,本件事業を譲り受ける意向を表明しており,債権者(後述のE銀行を除く。)は,D社がA社から本件事業を譲り受けることにつき,その譲渡代金額を含め賛成している。

〔設 問〕

【事例】に加え,下記〔A社に関する事情〕が令和2年4月30日時点で存するとき,A社の相談を受けたC弁護士は,本件事業を維持継続した上でⅮ社に譲渡するためには,破産手続開始又は再生手続開始のいずれを申し立てるのが相当であるとBに助言すべきか。

解答に当たっては,①法的倒産手続の申立て後手続開始前に資金援助をするD社に対して優先的に弁済をするための方策,②本件工場及び敷地に設定されたE銀行の抵当権について,その実行を阻止し又はこれを消滅させるための方策,③F社との取引関係を維持するための方策について,【事例】及び〔A社に関する事情〕を踏まえ,破産手続による場合と再生手続による場合とを比較して論じなさい。

〔A社に関する事情〕

A社は,資金繰りが悪化し,本件事業を維持継続することが困難になっている。そこで,D社は,A社が法的倒産手続の申立てをすれば,A社の資金繰りを支えるため,法的倒産手続の開始前に最大で3000万円の資金援助を直ちに行う旨の意向を有しているが,そのような資金援助を行った場合に優先的に弁済を受けることができるのか心配している。

A社は,E銀行から本件工場の建築資金3億円を借り入れる(以下「本件借入れ」という。)際,本件借入れに係る債務を被担保債務として本件工場及び敷地に抵当権を設定していた。本件借入れの残高は,令和2年4月30日時点で2億円であったところ,同時点での本件工場及び敷地の価額については,A社が1億円であると主張する一方で,E銀行は,1億8000万円であると主張し,早期の債権回収を図るため担保権実行の方針を明らかにしている。

A社は,本件事業に欠かせない部品の調達先であるF株式会社(以下「F社」という。)から,代金につき毎月末日締め翌月15日払いとの約定で部品を仕入れており,F社以外に当該部品の調達先を確保するのが極めて困難な状況にある。F社は,A社に対し,その代金が期限までに支払われなければ直ちにA社との取引を打ち切る旨を明らかにしている。A社は,F社に対し,部品の代金としておおむね500万円前後を毎月支払っており,令和2年5月15日支払予定の代金額は480万円である。

出典:法務省「2020年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。