司法試験論文式過去問演習

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2020年 司法試験 論文式 労働法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。

【事 例】

家庭用電化製品の製造・販売等を業とするA社においては,その総従業員数の85%に当たる従業員が組合員として加入するB労働組合(以下「B組合」という。)が組織されており,A社とB組合の間には,ユニオン・ショップ協定及びチェック・オフ協定を含む労働協約が締結されていた。

Cは,大学卒業後,A社に入社し,22年の勤務を経て営業第二課長となった。その後,Cが,その部下であるDを,営業成績が一向に上がらないことについて強い口調で叱責し,これを気に病んだDがA社を辞職するという事態に至った。この事態を問題視したA社は,B組合との労働協約に基づいて設置され,A社の管理職員とB組合の執行役員によって構成される懲戒委員会に,この件を付議した。懲戒委員会は,この件について事実調査を行い,CのDに対する叱責等の行為は減給処分に相当するとの決定をした。この決定を受け,A社は,同社の就業規則の規定に基づき,Cを減給処分とした。

この処分に不満を持ったCは,入社以来加入しているB組合に相談をしたが,B組合の執行部から「この処分は,当組合の執行役員も参加した懲戒委員会の調査と決定に基づくものであり,既に解決済みである。」と返答され,全く取り合ってもらえなかった。

このようなB組合の対応に対しても不満を持ったCは,B組合を脱退せず,同組合の組合員としての地位を維持したまま,いわゆる地域合同労組であるE労働組合(以下「E組合」という。)に加入した。この際,Cと同様にA社の従業員であり,かつ,B組合の組合員であって,この件についてのA社とB組合の対応に不満を持ったF及びGの2名も,Cに共感し,Cと共にE組合に加入した。

前記の減給処分についてCから相談を受けたE組合は,A社に対し,「当組合員Cの減給処分に関する件」を交渉事項とする団体交渉申入書を送付した。この申入書には,E組合の名称,所在地及び執行役員名と共に,「貴社が雇用する組合員」として,「貴社営業第二課長Cのほか貴社従業員数名」との記載があった。また,同申入書には,E組合の組合規約も添付されていた。

これに対し,A社は,「弊社に労働組合として団体交渉を求めるのであれば,貴組合の組合員名簿をご提出ください。少なくとも,貴組合の組合員のうち弊社の従業員である者の全ての氏名を明らかにしていただかなければ,弊社としては,貴組合と責任を持って団体交渉を行うことができません。また,Cは,弊社内の労働組合であるB組合にも加入しており,二重交渉となる可能性がある以上,Cに関する貴組合からの団体交渉の申入れには応じることができません。さらに,Cは,弊社の管理職員(営業第二課長)であるため,貴組合は,適法な労働組合とは認められないものと思料します。」との書面をE組合に送付した。

これを受けて,E組合は,A社に対し,「本団体交渉を行うに当たり,組合員名簿の提出は必要ありません。確かにCはB組合にも加入していますが,B組合は本件について『既に解決済み』との対応を採っています。Cが貴社の営業第二課長であることも,本団体交渉を拒否する理由にはなりません。」との書面を送付した。しかし,A社は,その後もE組合からの団体交渉の申入れに応じていない。

なお,A社におけるCの営業第二課長としての勤務内容及び処遇は,①営業第二課の課員の人事考課を行い,人事考課表を同社の人事課に提出する,②営業第二課の課員それぞれから,人事異動についての希望を聴取し,聴取した事項を取りまとめて同社の人事課に提出する,③営業第二課の営業方針と計画についての原案を作成し,営業統括部長に提出する,④A社の経営方針の決定機関である経営会議と取締役会には,営業第二課に関わる案件がある場合にのみ出席し,必要な説明を行うが,議事に参加する権限や議決権はない,⑤月額12万円の役職(課長)手当が支給される一方,時間外・休日労働に対する割増賃金は支給されない,⑥課員と同様に出社時及び退社時にタイムカードの打刻をするが,出勤・退勤時間について拘束はなく,遅刻・早退に対する賃金カットはないというものであった。

〔設 問〕

1.E組合は,A社を相手方として,どのような機関に,どのような法的根拠で,どのような内容の救済を求めることが考えられるか。救済の内容について検討すべき法律上の論点を挙げつつ,論じなさい。

2.1で述べた救済は,認められるか。検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。

出典:法務省「2020年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。