2020年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
〔第1問〕(配点:50)
A国の民間企業であるXは,B国との間で,B国政府に対してコンピュータを売り渡す旨の売買契約を締結した。XとB国との間の売買契約書には,当事者間に紛争が生じた場合には,A国の法律に基づき,A国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項が挿入されていた。Xは,契約どおりにコンピュータを引き渡し,売主としての履行を完了した。ところが,Xが支払期日に支払を求めたところ,B国は期日を過ぎてもXに対して売買代金を支払わなかったため,Xは,B国による売買代金の支払を求めて,A国の国内裁判所に訴えを提起した。これに対してB国は,応訴の意思を示さず,国家の裁判権免除を主張して訴えの却下を求めた。
A国とB国との間には,特定の事項又は特定の事件に関して相手国の裁判所による裁判権の行使について同意する旨の国際的合意は存在しない。また,B国が,本件裁判手続における宣言や書面による通知によって,A国の裁判所による裁判権の行使に同意した事実も存在しない。
原審は,絶対免除主義を適用して,B国に対して,A国の民事裁判権からの免除を認めた。この判決を不服としたXは,本件に相対(制限)免除主義の適用を求めて控訴した。これに対して控訴審は,Xの主張を認め,B国に対してA国の裁判権を行使できると判断し,B国に対してXに対する売買代金の支払を命じた。
しかし,この控訴審判決にもかかわらず,B国が当該判決の履行を拒否したため,Xは裁判所に対して判決の強制執行を求めた。なお,B国がA国内に保有する財産としては,B国の外交使節団の名義で開設されている口座の銀行預金があるのみである。
ちなみに,A国とB国は,2004年に採択された「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約」の締約国であるが,同条約は未発効である。
以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。
〔設 問〕
1.B国が主張した国家の裁判権免除について説明するとともに,絶対免除主義とはどのような考え方であるかを説明しなさい。裁判権免除を認めるべきであるとの立場から,B国はどのような主張が可能かを論じなさい。
2.相対(制限)免除主義とはどのような考え方であるかを説明しなさい。B国に対して裁判権免除を認めるべきでないとの立場から,Xはどのような主張が可能かを論じなさい。また,本件売買契約におけるA国の国内裁判所で裁判手続を行う旨の条項は,B国による国家の裁判権免除の放棄と考えられるかについて論じなさい。
3.B国が履行を拒否している控訴審判決を強制執行するために,A国内にあるB国の外交使節団名義で開設されている口座の銀行預金が差押えの対象となるかについて論じなさい。
出典:法務省「2020年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。