司法試験論文式過去問演習

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2020年 司法試験 論文式 経済法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

A県浄化槽協会(以下「協会」という。)は,トイレから発生するし尿や台所,風呂,洗濯機等からの生活雑排水を微生物を利用して浄化した後,側溝等に放流する設備である浄化槽の普及を図ることにより,生活環境の保全と公衆衛生の向上に寄与することを目的とする一般社団法人である。協会は,A県内で浄化槽の製造,施工,保守点検又は清掃を行う事業者を主な会員(以下,協会に所属する者を「会員」といい,所属しない者を「非会員」という。)とする県内唯一の団体であり,会員数は約450名である。協会には,会員である各事業者がそれぞれ所属する製造,施工,保守点検及び清掃の各部会があり,保守点検部会の会員は140名,清掃部会の会員は70名である。

協会は,社員総会及び理事会を置き,社員総会で各部会の入会基準を決定し,各部会において,それら入会基準に基づき,入会申請者の入会の可否を決定している。各部会への入会を認められた者は,自動的に協会への入会が認められる。協会は,浄化槽に関する説明会や講習会を開催し,その際,住宅や事業所等に浄化槽の設置を希望する者に対して会員を優先して紹介し,会員に対しても公民館や学校等の浄化槽に係る大口の取引を優先的に斡旋するため,A県内で浄化槽の製造,施工,清掃を行う各事業者は,全て会員である。保守点検を行う事業者については,140名の会員のほか,非会員であるBら15名が存在する。A県の保守点検業者全体の契約件数及び売上高に占める保守点検業者である会員の契約件数及び売上高の割合は,いずれも約9割である。

住宅や事業所等に浄化槽を設置した者は,法令上,年3回以上の保守点検(機器の調整点検,水質検査,消毒剤の補充及び害虫駆除等を行うこと),年1回以上の清掃(汚泥を槽外に引き抜き,浄化槽を洗浄すること),年1回の法定検査(A県においては,A県職員が浄化後の水質検査や機器の適正作動の確認を行うこと)を受けなければならない。また,法令上,保守点検を行った者は,保守点検の度に検査結果を記録票に記載しなければならず,浄化槽設置者は,これを3年間保管し,年1回の法定検査の際,これを提示する必要がある。その結果,不良な保守点検を行う者が発見された場合,都道府県知事は,その者に対し,必要な助言,指導,勧告又は改善命令を行うことができる。

A県内で保守点検業を行うためには,法令や条例上,A県知事の登録を受けなければならず,その登録の有効期間は3年である。また,条例上,その登録(更新を含む。以下同じ。)の申請を行おうとする者は,自らが浄化槽の清掃業の許可を受けていない限り,業務を行おうとする区域において現に清掃業の許可を受けている浄化槽清掃業者と提携していることを証明する書類を提出しなければならない。浄化槽の清掃業の許可は,法令上,業務区域を管轄する市町村長により行われるところ,A県下の市町村においては,清掃によって生じる汚泥等の一般廃棄物の処理業の許可を受けていることを浄化槽の清掃業の許可基準の一つとしている。一般廃棄物の処理業については,処理業務の総量を超える業者の参入を認める必要はなく,A県内では,処理業務の総量に見合った許可が既にされているため,新規に許可がされる見込みはない。その結果,A県において浄化槽の保守点検業の登録を受けようとする場合,その者が清掃業の許可を受けておらず,かつ,一般廃棄物処理業の許可も受けていなければ,新たに清掃業の許可を受けられる見込みが乏しいため,A県内の清掃業者と提携するほかない。

ところで,数年前から,A県内の河川は,その水質が全国で最も汚濁の著しいものの一つとして報道されるようになった。A県では浄化槽の保守点検業者が相当数に上るにもかかわらず,新規に浄化槽を設置する住宅や事業所等は減少している。こうした事情から,協会は,浄化槽の保守点検をめぐる競争が激化して過度な低料金化が進むと,環境保全と公衆衛生に十分配慮した事業活動ができなくなるという理由で,保守点検業者である会員に対して,会員間で既存の取引先を尊重して奪い合わないよう,協会からの除名を示唆しながら強く指導し続けている。また,協会は,平成28年4月の社員総会において,上記と同様の理由で,A県内で浄化槽の保守点検を行う他の事業者の顧客を低料金を提示して奪おうとする者から申請があっても入会を認めないこと,清掃業の許可を受けていない非会員が保守点検業を行うためA県知事に登録を申請する際,清掃業者である会員が,有償であると無償であるとを問わず,当該登録申請者と提携してはならないこと,ただし,その者が低料金を提示して会員の既存の顧客を奪わないと確約した場合には,有償で提携してよいことをそれぞれ決定した。さらに,協会は,平成28年4月以降,上記と同様の理由で,A県内の保守点検業者が使用する水質検査薬や消毒剤のほとんど全てを供給するメーカーに対して,A県内で非会員にそれらを供給しないよう働き掛け,これに同意させている。これらのメーカーは,非会員に販売すると会員に対する販売を妨害されるおそれがあるため,それぞれ,協会の要求に同意することを余儀なくされている。非会員が別の販路や方法で浄化槽用の水質検査薬や消毒剤を入手することはできない。なお,平成28年4月以降も,A県内の浄化槽の保守点検をめぐる競争は激化しているため,その料金は一貫して下落し続けている。

A県内の浄化槽保守点検業者である非会員のBら15名は,清掃業の許可も一般廃棄物処理業の許可も受けていない者であるが,平成28年10月から平成30年10月までの間に3回ないし5回の入会申込みをそれぞれ行ったところ,他の事業者の顧客を低料金を提示して奪おうとする者であり,生活環境の保全と公衆衛生の向上に配慮した事業活動を行うことができないことを理由に,保守点検部会において,Bらの入会申込みはいずれも否決された。Bらは,協会に入会することができないため,水質検査薬や消毒剤の入手が困難となっているほか,登録期間の満了後には,保守点検業の登録の申請に必要な浄化槽清掃業者との提携を受けられなくなるため,保守点検業を継続して営むことはできなくなると見込まれる。なお,Bらが,これまでに不良な保守点検を行ったとしてA県知事から行政指導及び行政処分を受けたことはない。

〔設 問〕

問題文において,独占禁止法に違反する行為は認められるか,認められるとすれば,誰のどのような行為か,適用条文も含めて検討しなさい。

出典:法務省「2020年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。