2020年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
Aは,B市郊外の道路沿いに所有する土地にホテルCを所有し,経営している。ホテルCの周辺一帯には広大な原野が広がっており,近隣には道路沿いの店舗等が点在する程度である。開業当時は小規模な民宿であったが,次第に原野の優れた自然の風景が注目されるようになり,内外からの観光客が急増したため,Aは資金を投じて民宿を3階建(高さ13メートル)の建物に改築し,観光客向けのホテルCを開業した。その後,周辺地域は国立公園の指定を受け,ホテルCの所在地は第一種特別地域に含まれるに至った。ホテルCは屋根や壁面の色彩や形態が自然景観に調和していると評価され,大いに繁盛した。
ところが,B市周辺を震源とする大規模な地震が発生し,ホテルCにも内壁や外壁にひび割れなどの被害が生じた。検査の結果,損壊は甚だしいものの,大規模な修繕をすれば元どおりの使用は可能であるとされたが,Aとしては,建物の老朽化も進んでおり,建物の価値を超える修繕費用を要することもあって,経営,安全の両面から,将来地域の復興が進んだ時点での営業再開を目指すこととし,ホテルCを解体した。
それから3年を経過し,地域の復興も進んだことから,AはホテルCの元の所在地と同一の位置に,従前と全く同一の高さ,面積とデザインによる建物を建築する計画を立案した。
〔設問1〕
自然公園法は,国立公園の区域の陸域内における行為につき,特別地域と普通地域を区分した上で,それぞれに応じた規制を定めている。その規制手法・内容の違い及びそのような違いを設けている趣旨を説明せよ。
〔設問2〕
Aの計画に関して自然公園法上どのような問題点があるか。問題文に現れた事情の限りで,資料を参照しつつ検討せよ。
〔設問3〕
Aは,仮にホテルCの建築が認められない場合にどのような救済を求め得るか,検討せよ。
【資 料】
〇 自然公園法施行規則(昭和32年10月11日厚生省令第41号)(抜粋)
第2章 保護及び利用
(特別地域の区分)
第9条の2 国立公園又は国定公園に関する公園計画のうち,保護のための規制に関する計画を定めるに当たつては,特別地域(特別保護地区を除く。以下同じ。)を次の各号のいずれかに掲げる地域に区分するものとする。
一 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し,特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であつて,現在の景観を極力保護することが必要な地域をいう。)
二 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であつて,特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域をいう。)
三 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であつて,特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域をいう。)
(特別地域,特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)
第11条
1~5 (略)
6 法第20条第3項第1号,第21条第3項第1号及び第22条第3項第1号に掲げる行為(前各項の規定の適用を受ける建築物の新築,改築又は増築以外の建築物の新築,改築又は増築に限る。)に係る許可基準は,第1項第2号から第5号まで並びに第4項第7号及び第9号から第11号までの規定の例によるほか,次のとおりとする。ただし,第2項ただし書に規定する行為に該当するものについては,この限りでない。
一,二 (略)
7~36 (略)
【注:Aの計画する建物は,上記の「前各項の規定の適用を受ける建築物」に該当しないものとする。】
37 法第20条第3項各号,第21条第3項各号及び第22条第3項各号に掲げる行為に係る許可基準は,前各項に規定する基準のほか,次のとおりとする。
一 申請に係る地域の自然的,社会経済的条件から判断して,当該行為による風致又は景観の維持上の支障を軽減するため必要な措置が講じられていると認められるものであること。
二 申請に係る場所又はその周辺の風致又は景観の維持に著しい支障を及ぼす特別な事由があると認められるものでないこと。
三 (略)
* 本条6項が引用する本条各項の規定のうち,本問で検討すべきものを以下のとおり抜粋した。省略された条項については検討を要しない。
・ 第1項第2号
次に掲げる地域(以下「特別保護地区等」という。)内において行われるものでないこと。
イ 特別保護地区,第一種特別地域又は海域公園地区
ロ (略)
・ 第1項第3号及び第4号 (略)
・ 第1項第5号
当該建築物の屋根及び壁面の色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和でないこと。
・ 第2項ただし書
ただし,既存建築物の改築等であつて,前項第5号に掲げる基準に適合するものについては,この限りでない。
【注:「既存建築物の改築等」の定義は以下のとおり。
既存の建築物の改築,既存の建築物の建替え若しくは災害により滅失した建築物の復旧のための新築(申請に係る建築物の規模が既存の建築物の規模を超えないもの又は既存の建築物が有していた機能を維持するためやむを得ず必要最小限の規模の拡大を行うものに限る。)又は学術研究その他公益上必要であり,かつ,申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる建築物の新築,改築若しくは増築】
・ 第4項第7号及び第9号から第11号 (略)
出典:法務省「2020年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。