2019年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A国は,総人口のうち60%がX民族,30%がY民族,残りの10%がそれ以外の民族によって構成されている国である。A国と陸地の国境を接するB国は,Y民族が総人口の80%を占めている。C国は,A国及びB国と地理的に遠く離れているが,B国とは歴史的な関係が深く,現在も政治的及び経済的に緊密な友好関係にある。A国,B国及びC国は,いずれも国連加盟国である。
A国では,長い間,Y民族を中心とする政権が続き,多様な民族の融和を図る政策が採られていた。A国とB国の間では,人の交流が活発であり,多くのB国籍のY民族の人々がA国に居住し,経済活動を行っていた。Y民族であるB国籍の甲も,A国の首都に長く居住し,幅広い経済活動を行っていた著名な企業経営者であった。
しかし,近年になって,A国では,クーデターが起き,X民族主義を掲げる新政権が誕生した。A国の新政権は,その成立以降,X民族を優遇する政策を推し進めるようになり,A国に居住するB国籍のY民族の人々の経済活動にも様々な制限を課すようになった。そして,A国の当局は,A国の外国為替法に違反する外国送金を行ったとの容疑で甲を逮捕した。甲は,同法に何ら違反していないと主張したが,その主張は認められず,罰金と国外退去処分の判決を受けた。さらに,甲がB国籍であることを理由に,上訴も認められず,この判決は確定した。A国内の甲の財産は罰金の徴収のために差し押さえられ,甲は国外退去処分となった。A国によるこれらの措置によって,甲が経営していたA国内の企業は実質的に破綻した。なお,A国の法制度では,判決の確定後,これに対する救済手段は,残されていない。
他方,Y民族の旧政権を中心とする勢力は,クーデター後,A国において,「Y民族戦線」と名乗り,B国政府から戦闘の訓練,武器の供与及び大規模な財政的支援を受けた反政府活動を行うようになった。これらの支援により,「Y民族戦線」は,B国と国境を接するA国領域内の地域を支配するようになった。これに対し,A国政府は,反政府活動の鎮圧のために大規模な軍隊を同地域に派遣し,「Y民族戦線」との間の武力衝突が激化した。これを受けて,A国との国境付近のB国の複数の町の住民(B国籍者)の中には,「Y民族戦線」の構成員をかくまったり,その戦闘に参加したりする者が出てきた。これに対し,A国軍は,B国領域内のそれらの町を武力攻撃の対象とするようになり,その結果,B国の一般住民に多数の死傷者が出る事態が生じた。この事態を受けて,B国は,A国による武力攻撃に関し,C国に対し軍事介入を要請した。これに応じて,C国は,B国に対する武力攻撃の根拠地となっているA国領域内のA国軍軍事基地を空爆した。
以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。
〔設 問〕
1.甲に対するA国の措置に関して,B国がA国に対してどのような国際法上の主張を行い得るかを論じなさい。
2.「Y民族戦線」の活動について,B国が国際法上の責任を問われ得るかを論じなさい。
3.C国によるA国領域内の軍事基地に対する空爆行為を国際法上どのように正当化できるかを,C国の立場から論じなさい。
出典:法務省「2019年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。