2019年 司法試験 論文式 知的財産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
仏師X1は,宗教法人Y1寺からの依頼に応じて,青銅製の仏像彫刻作品A一体を作成し,Y1に納めた。Aは,高さ3メートルの仏像で,手脚を含む全身のポーズ,顔の表情,袈裟(着衣)のデザインなどについて仏教美術の仕来りに従いつつも,X1独自の世界観・宗教観を反映した外観の表現αを有している。
Y1は,恒久的に展示・管理するとの条件でX1から許諾を得て,Y1の境内の屋外にAを設置し,門徒や観光客の参拝に供した。Aの姿は公道からは見えないが,毎日午前9時から午後5時までの間は誰でもY1境内に立ち入り,Aを見ることができる。
以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各問はそれぞれ独立したものであり,相互に関係はないものとする。
〔設 問〕
1.仏像彫刻作品Aの外観の表現αの著作物性について,どのような点が問題となり,その点をいかに考えるかを説明しなさい。
また,商品として大量生産され,家庭内の仏壇に設置される,高さ20センチメートルの仏像彫刻Bの外観の表現βの著作物性について,更にどのような点が問題となり,その点をいかに考えるかを説明しなさい。ここで,βはαをそのまま縮小したものであり,両者はその大きさ以外は同一であるものとする。
2.Aが「Y1大仏」と称されて人気を博したため,Y1は,Aの正面写真をその中心に大きく配置した絵はがきPを自ら製造し,観光客に境内で販売するとともに,Y2を含む複数の土産物店にも販売した。次の⑴⑵のそれぞれにおいて,X1は,Y2に対して,著作権に基づき,絵はがきPの販売の差止めを請求することができるか。いずれもαが美術の著作物であり,Aがその原作品であることを前提に説明しなさい。
⑴ 絵はがきPの製造販売についてX1がY1に許諾しておらず,その事情をY2はY1からのPの購入時に知らなかったが,知らないことについて過失があった。その後,X1がY2に対して警告をしたために,Y2は,当該事情を知り,以後はPを購入することをやめたが,現在,それ以前に購入したPを観光客に販売している。
⑵ X1とY1は,X1がY1に絵はがきPの製造販売を許諾し,Y1がX1にPの売上げの5%を支払う旨の契約を締結していたところ,Y1はPの販売後も一切の金銭をX1に支払っていない。Y2は,この不払の事情を知りつつY1からPを購入して観光客に販売している。ここで,X1とY1の間で,Pの製造販売許諾契約は解除されていないものとする。
3.Aの顔つきは怒りを含んだ厳しい表情であるため,Y1の内部では不評であった。そこで,X1の死後すぐに,Y1は,より柔和な表情をした仏頭Cを自ら作り直し,Aの頭部を切り離してCとすげ替えた。ここで,切り離されたAの頭部は,そのまま梱包されてY1内に保管されている。X1の遺族である配偶者X2は,Y1に対して名誉回復等の措置を請求することができるか。αが美術の著作物であり,Aがその原作品であることを前提に説明しなさい。
出典:法務省「2019年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。