司法試験論文式過去問演習

過去問の答案を投稿・採点

2018年 司法試験 論文式 租税法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

X社は,カキ養殖業を営む資本金1000万円の株式会社で,A,B及びCの3姉弟(以下,この3人を併せて,「Aら」という。)が,それぞれ発行済株式総数の60%,20%,20%を保有している同族会社である。X社はAらの父Dが100%出資して設立した会社で,Dの死亡後,AらがX社株式をDから相続により取得したものである。しかし,B及びCはカキ養殖業に興味を持たず,別の分野の職業に就いたため,X社の取締役はA,B及びCの3名で構成されているものの,X社において定期的に取締役会が開催されることはなく,Aが代表取締役として,経理を含むX社の業務全般を掌握していた。Aらは毎年,暦年を事業年度とするX社の事業年度末を経過した2月中に「株主総会」と称して集まり,AからX社の業績等について説明を受けてこれを了承していたが,B及びCの関心はどちらかと言えばX社についての説明ではなく,その後にAらの家族を交えて,X社が養殖したカキを使った焼きガキや土手鍋を「美味しい遺産ね。」「今年の配当も美味いぞ。」などと言いつつ賞味することにあった。

X社のこのような状況を奇貨としたAは,平成27年中に,自ら,帳簿に架空の外注費を計上し,その支払を装って1000万円をX社の銀行口座から自分が管理する銀行口座に移して(以下,この1000万円の移動を,「本件資金移動」という。),遊興等で生じた借金の弁済に充てた。

平成29年中に行われたX社に対する税務調査で,本件資金移動の事実が判明したため,所轄税務署長Eは,この1000万円を平成27年にAがX社から与えられた賞与と考え,X社に対して源泉所得税の納税告知処分(以下,この納税告知処分を,「本件納税告知処分」という。)を行うとともに,平成27事業年度(平成27年12月末に終了する事業年度を指す。)の法人税につき,課税所得を1000万円増額させる修正申告を勧奨したが,X社がこれを拒否したため,勧奨した修正申告と同じ内容の増額更正処分(以下,この増額更正処分を,「本件更正処分」という。)を行った。

上記の税務調査後の平成30年2月中にX社の「株主総会」が開催され,その場でAは,①X社の代表取締役の地位を濫用し,X社の資金を引き出して私的な支払に充てたこと(以下「本件横領」という。)を認めるとともに,②その弁償を約束し,これがB及びCに了承された。その後平成30年5月に,AがX社に対して1000万円を支払うべき債務を負担していることを確認し,これを平成31年(2019年)末までに弁済する旨の債務分割弁済契約公正証書が作成された。

以上の事案について,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1.X社が本件納税告知処分に従って税額を納付することを拒否した場合,税務署長Eは当該税額をAから徴収することができるか否かを,源泉徴収の法律関係を簡潔に説明しつつ論じなさい。

2.Aらは,平成27年にX社が,本件横領により1000万円の損失を被ったとの見解で一致している。この見解の下で,本件更正処分の適法性について論じなさい。ただし,同族会社の行為計算否認規定は考慮しなくてよい。

3.本件納税告知処分の適法性について,結論を異にする見解にも言及しつつ,自説を述べなさい。なお,本件納税告知処分に,手続法上の瑕疵はないものとする。

出典:法務省「2018年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。