司法試験論文式過去問演習

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2018年 司法試験 論文式 経済法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

個人旅行や仕事上の出張のためにホテルや旅館等,国内の宿泊施設を予約する方法は,近年様変わりしている。宿泊日数ベースで見ると,インターネットを通じて予約するものが40パーセント,旅行業者を通じて予約するものが35パーセント,電話やファクシミリで直接予約するものが15パーセント,その他が10パーセントである。インターネットを通じて予約する場合には,直接,ホテルや旅館のウェブサイト(以下「サイト」という。)において行うこともできるが,インターネット上で宿泊施設を検索,比較して予約できるサービスを提供するオンライン旅行予約サービス事業者(以下「OTA」という。)を通じて予約することもできる(その割合は,OTAを通じて予約するものが9割,宿泊施設のサイトで直接予約するものが1割である。)。国内の宿泊施設の予約について前年度にOTAが仲介した取扱高のシェア(宿泊日数ベース)は,A社35パーセント,B社30パーセント,C社20パーセント,D社10パーセント,E社5パーセントである。OTA各社は,国内の主要なホテルや旅館等と契約を結び,OTAを通じてユーザーが予約できるようにしている。国内の宿泊施設は,大規模なホテルチェーンも存在するが,大部分は中小事業者である。

OTAは,ホテルや旅館等の宿泊施設から委託を受けて,当該宿泊施設の写真や動画,文字データ等をOTAのサイト上に掲示する。宿泊施設は,ユーザーがOTAを通じて当該宿泊施設に予約した場合に,宿泊料金の一定割合に当たる手数料を当該OTAに支払う。宿泊施設は,通常,複数のOTAと契約を結ぶとともに,自らのサイトでもユーザーの予約を受け付けるものが多い。他方,OTAは,ユーザーに対して,ユーザーが宿泊を予定する日に一定地域内の宿泊施設を利用できるかどうかを検索し,他の宿泊施設と比較して予約することを可能にするサービスを無料で提供している。これらのサービスを提供するため,OTAは,相当の費用を掛けて自社のサーバーやコンピュータシステムを開発・保有・運用している。ユーザーがOTAを通じて特定の宿泊施設を選択して予約した場合,契約はユーザーと宿泊施設の間に成立する。また,OTA各社は,自社のサイトを通じて予約したユーザーに対して成約額の一定割合をポイントとして付与し,次回以降,宿泊料金の全部又は一部をポイントで支払うことを可能にすることにより,自社を通じた予約を促そうとしている(ポイントは宿泊施設のサイトで直接予約した場合には使えない。)。

ところで,A社は,宿泊料金の10パーセントを手数料として受領しているところ,最近,低い手数料しか受け取らないことにより安い宿泊料金をホテルや旅館等に提示させようとする事業者がこの分野に新規参入の準備をしていること,また,ホテルや旅館等がOTA各社のサイト上で提示するものより5パーセント程度安い宿泊料金やユーザーに有利なキャンセル条件等を当該宿泊施設自身のサイト上に提示している場合があることに気付いた。これらを放置しておくと,

ア オンライン旅行予約をめぐる競争が激化する

イ OTAのサイトを利用して宿泊施設を検索,比較しておきながら,予約は当該宿泊施設のサイトにおいて行うユーザーが増え,検索・比較サービスは無料で利用されるのにOTAには手数料が入らない

ことから,その対策として,A社は次の2つの案を検討している。

第1案は,ホテルや旅館などA社と契約する宿泊施設は,A社のサイト上で提示する当該宿泊施設の宿泊料金,朝食の有無,提供される部屋の数と等級,キャンセル条件等(以下「宿泊料金等」という。)が,当該宿泊施設自身のサイト上で提示するもの,及び,新規参入事業者を含む他のOTAのサイト上で提示するものと同じか,より有利になる(例えば宿泊料金でいえば,A社のサイト上で提示される料金が他の全てのサイト上の料金と同じかそれより安くなる)ようにしなければならない旨の契約条項を導入するというものである。

第2案は,上記イの対策として,A社と契約する宿泊施設は,A社のサイト上で提示する当該宿泊施設の宿泊料金等が,当該宿泊施設自身のサイト上で提示するものと同じか,より有利になるようにしなければならない旨の契約条項を導入するというものである。

A社がいずれかを導入すると,B社及びC社も同様の契約条項を盛り込むことが予測される。D社及びE社も上記イの問題に気付いたが,通常の手数料とは別に,ユーザーが検索・比較サービスを利用する際に自社に発生する費用を,毎月,取引相手であるホテルや旅館等に「サービス利用料」として支払ってもらうことを検討している。

〔設 問〕

A社が検討している上記の両案について,独占禁止法第2条第9項第6号ニに基づく一般指定第12項に該当するかどうか,【資料】も参照しながら検討しなさい。

なお,解答に当たっては,複数のOTAの提供するサイトを横断的に検索して,これらのサイト上の情報を一覧できるサービスを提供するメタサーチサービス事業者や検索エンジンといわれる一般的な検索サービスを提供する事業者を考慮する必要はない。また,外国の宿泊施設やユーザーについても考慮する必要はない。

【資 料】

〇 公正取引委員会事務局「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(抄)

第1部

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準

⑴ 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準についての考え方

垂直的制限行為は,(略)競争に様々な影響を及ぼすものであるが,公正な競争を阻害するおそれがある場合に,不公正な取引方法として禁止されることとなる。垂直的制限行為に公正な競争を阻害するおそれがあるかどうかの判断に当たっては,具体的行為や取引の対象・地域・態様等に応じて,当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討した上で,次の事項を総合的に考慮して判断することとなる。

なお,この判断に当たっては,垂直的制限行為によって生じ得るブランド間競争やブランド内競争の減少・消滅といった競争を阻害する効果に加え,競争を促進する効果(略)も考慮する。また,競争を阻害する効果及び競争を促進する効果を考慮する際は,各取引段階における潜在的競争者への影響も踏まえる必要がある。

① ブランド間競争の状況(市場集中度,商品特性,製品差別化の程度,流通経路,新規参入の難易性等)

② ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況,当該商品を取り扱っている流通業者等の業態等)

③ 垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア,順位,ブランド力等)

④ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)

⑤ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

各事項の重要性は個別具体的な事例ごとに異なり,垂直的制限行為を行う事業者の事業内容等に応じて,各事項の内容も検討する必要がある。例えば,プラットフォーム事業者が行う垂直的制限行為による競争への影響については,プラットフォーム事業者間の競争の状況や,ネットワーク効果等を踏まえたプラットフォーム事業者の市場における地位等を考慮する必要がある。

(略)

出典:法務省「2018年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。