2018年 司法試験 論文式 環境法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A県に所在するB大学(以下「B」という。)の昭和40年代後半に建設された研究棟(大学の敷地の端に立地していて,隣接地にはC保育所の園舎,運動場や他の民家がある。)の大規模改造工事(以下「本件工事」という。)がBによって計画された。DがBから本件工事を受注したが,Dは研究棟が建設された時期を考えると,吹付け石綿ないし石綿を含有する断熱材・耐火被覆材などが使用されている可能性があると考えた。ところが,Bの施設担当者は,以前に同じ建物の一部で石綿除去工事を行っていたことを前任者から申し送られていたことから建物の全部が安全であると誤認していたため,建物には石綿使用がないとDに述べた。しかし,Dは念のために研究棟の一部について目視で調査を行ったところ,やはり石綿使用の懸念があったので,Bの担当者にこの旨を伝えたが,担当者は次年度の新学科設置に備えた大学全体の建物使用計画に間に合わせるために,本件工事の着工を急ぐようDに指示した。
そこで,石綿粉じんの発生を想定した設備を設けることなく本件工事が平成30年5月頃始まったが,その段階で,作業従事者Eは作業箇所での石綿含有建材の存在を強く疑い,石綿被害防止支援活動を行っている団体Fに,自らが現場で採取した試料を持ち込んで相談した。Fが専門家に依頼して検査をした結果,Eの持ち込んだ試料には青石綿が高い濃度で含有されていると報告があったので,FからA県に対してその旨の通報がなされた。なお,青石綿は,他の種類の白石綿などに比して人の健康への有害性が極めて高いことが知られている。
この場合において,【資料】を参照しつつ,以下の設問に答えよ。
〔設問1〕
本件工事の着工に当たって,B及びDには,大気汚染防止法(以下「大防法」という。)によれば,いかなる措置を講じる必要があったか述べよ。
〔設問2〕
本件の事案で,Fから通報を受けたA県が,大防法によって採り得る措置は何か述べよ。
〔設問3〕
本件工事による粉じんが,Bの敷地を超えて隣接地に流入するおそれがあったが,A県による大防法上の適切な措置が講じられていない場合に,C保育所の園児らは,誰に対して,いかなる法的措置を求めることができるか述べよ。
〔設問4〕
大防法の平成25年改正では,特定粉じん排出作業に係る規制に関して,廃棄物の処理及び清掃に関する法律の平成12年改正により新設された第19条の5第2号などと同様に,直接に汚染を引き起こした行為者でない者にも一定の責任を負わせる考え方を導入しているが,このような考え方が大防法の平成25年改正に取り入れられた趣旨を説明せよ。
【資 料】
○ 大気汚染防止法施行令(昭和43年11月30日政令第329号)(抜粋)
(特定建築材料)
第3条の3 法第2条第11項の政令で定める建築材料は,次に掲げる建築材料とする。
一 吹付け石綿
二 石綿を含有する断熱材,保温材及び耐火被覆材(前号に掲げるものを除く。)
(特定粉じん排出等作業)
第3条の4 法第2条第11項の政令で定める作業は,次に掲げる作業とする。
一 特定建築材料が使用されている建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)を解体する作業
二 特定建築材料が使用されている建築物等を改造し,又は補修する作業
(報告及び検査)
第12条
1~6 (略)
7 環境大臣又は都道府県知事は,法第26条第1項の規定により,解体等工事の発注者に対し,法第18条の15第1項第4号から第7号までに掲げる事項,同条第3項の環境省令で定める事項及び法第18条の17第1項の規定による調査について報告を求めることができる。
8 環境大臣又は都道府県知事は,法第26条第1項の規定により,解体等工事の受注者に対し法第18条の17第1項の規定による調査について,自主施工者に対し法第18条の15第1項第4号から第7号までに掲げる事項,同条第3項の環境省令で定める事項及び法第18条の17第3項の規定による調査について,それぞれ報告を求め,又はその職員に,解体等工事に係る建築物等若しくは解体等工事の現場に立ち入り,解体等工事に係る建築物等,解体等工事により生じた廃棄物その他の物及び関係帳簿書類を検査させることができる。
9,10 (略)
○ 大気汚染防止法施行規則(昭和46年6月22日厚生省,通商産業省令第1号)(抜粋)
(特定工事に該当しないことが明らかな建設工事)
第16条の5 法第18条の17第1項の環境省令で定める建設工事は,次に掲げる建設工事とする。
一 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等を解体し,改造し,又は補修する作業を伴う建設工事であつて,当該建築物等以外の建築物等を解体し,改造し,又は補修する作業を伴わないもの
二 建築物等のうち平成18年9月1日以後に改造又は補修の工事に着手した部分を改造し,又は補修する作業を伴う建設工事であつて,当該部分以外の部分を改造し,若しくは補修し,又は当該建築物等以外の建築物等(平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等を除く。)を解体し,改造し,若しくは補修する作業を伴わないもの
(解体等工事に係る説明の時期)
第16条の6 法第18条の17第1項の規定による説明は,解体等工事の開始の日までに(当該解体等工事が特定工事に該当し,かつ,特定粉じん排出等作業を当該特定工事の開始の日から14日以内に開始する場合にあつては,当該特定粉じん排出等作業の開始の日の14日前までに)行うものとする。ただし,災害その他非常の事態の発生により解体等工事を緊急に行う必要がある場合にあつては,速やかに行うものとする。
(解体等工事に係る掲示の方法)
第16条の9 法第18条の17第4項の規定による掲示は,掲示板を設けることにより行うものとする。
出典:法務省「2018年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。